「鈴木亮平も怖いけど、宮崎美子も怖いよ!!」孤狼の血 LEVEL2 バフィーさんの映画レビュー(感想・評価)
鈴木亮平も怖いけど、宮崎美子も怖いよ!!
試写で観たのは6月末ということで、かなり期間が空いてしまっているわけだが、その中でも忘れたくても忘れられないのが鈴木亮平演じる上林というキャラクターだ。
前作のゴリゴリなヤクザ映画の雰囲気を保ちつつ、原作にはなかった平成初期のタイムラインを描いていて、『ヤクザと家族』のように、実際に昭和から平成に移り変わる際のヤクザの社会的な立ち位置の変化も反映させている。
時代の流れも味方し、エリートだった日岡が警察とヤクザの絶妙なパワーバランスで地盤を築いてきたのだが、その間は、刑務所にいたことで時代に逆行するかのように、裏社会に戻ってきた上林は、時代遅れのヤクザという印象ではあるが、人間的な過去がありながら、環境が生んでしまった悲しきサイコパスでもある。
上林は、標的にした相手の目玉をえぐり出す(演出的にわざとチープにしてある)という残忍極まりない男であり、何より日岡の築いてきたものが、全く通用しない。
キャラクター構造としては、漫画のような設定ではあるものの、ここがエンターテイメントとしての色が濃く出ている部分であり、前作とはまた違ったテイストのヤクザ・エンターテイメントとして楽しむことができるのだ。
東映ヤクザ映画やVシネ感は意図的に漂わせつつも、若い世代にも向けたアクション映画としての側面もあったりで、あらゆる要素が詰め込まれている作品と言っていいだろう。
ヤクザから舐められないように、大上の真似をして、やさぐれ刑事のように振舞っている日岡も、根は1作目とあまり変わってなくて、優しい心の持ち主だけに、見せかけ上での、はったりや計算が通用しない上林の行動に恐怖を感じつつも、それを表に出してしまうと、心に隙ができてしまい、今まで築き上げてきたものも、一瞬にして崩れ去ってしまう。
日岡の自分の中の弱さや恐怖、根の優しさなどが入り混じり葛藤が繰り返される中で、心のより所になるような人物も何人か登場する。
1人は西野七瀬演じる真緒、そしてもう1人が、真緒の弟の幸田。この2人を助けて、普通の生活ができるようにすることこそが、日岡の目標であったというのに、上林の存在が全てを「無」にしてしまいそうで常に緊張感が漂う。
そんな日岡のバディになったのが、警部補の瀬島。裏社会で警察からは孤立してしまった日岡に優しく声をかける、警察内の唯一の味方なのだが、この瀬島が今作の大きなアクセントともなっている。
上林の場合は「純粋悪」といったところだが、今回は警察サイドの恐ろしさも描かれていて、詳しくい言ってしまうとネタバレになってしまうのだが、 後半から「まさか…」とは思わせぶりな感じがあるものの、「勘違いであって欲しい」と心から思わせる瀬島もなかなかのキャラクターだ。
上杉とのバトルでは、物理的な刃物が肌に刺さる痛々しさがスクリーンを通して伝わってくるが、警察サイドからは、見えない刃物が心に刺さるようになっていて、どちらからも突き刺されるようで、かなり痛い映画だ!!