劇場公開日 2021年2月19日

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「シロワニは一匹しか残らない」藁にもすがる獣たち フリントさんの映画レビュー(感想・評価)

シロワニは一匹しか残らない

2021年4月2日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

ロッカーからバッグを持ち出す話

日本原作で韓国映画だと、「オールドボーイ」「納屋を焼く」など名作がある
本作は名作とまではいかないが、間違いなく面白い作品でした。

欲望にまみれた者どもが群がり、織りなす群像劇は徐々にパズルのピースが揃っていきラストで一つの画になる。

時系列がごちゃごちゃなのに置いてきぼりにもされずほぼ戸惑うことなく話についていけた。

欲の皮が突っ張った奴らの最終目的、10億ウォンは何処からきて誰の手に渡るのか。
冒頭のシーンからバッグを見つけるまでで映画メランコリックのセリフ「お風呂屋さんの仕事も結構危ないんですね」を思い出した。
ほとんど映画に風呂場出てこないけれど・・・

なんでしょうね、韓国映画は本当にサスペンスが頗る上手。
後ろめたい奴、残忍な奴、欲深い奴、蟠りの有る物語がぴったりでジトっとした雰囲気がたまりませんね。

出てくるキャラが全部濃いし面白い。それぞれの出番で濃いから映画中ずっと濃い!
背油ましましのラーメンですよ。美味いんだこれが。

各キャラクターに触れてくと大変なので、中でも気に入ったのは社長と包丁男。
港湾マフィアの社長よかったですね、突然第三者を怒ったり、ニコニコしながら恐喝したり、ジョー・ペシかよ!
包丁持ったノッポも不気味で怖かったです、喋らないし、入れ墨が気味悪いし、顔が出る度に眉をひそめてしまう。いい味出てました。韓国映画史に刻まれる悪役でしたよ。
絶対的暴力装置があると物語が締まるんですよね、一般人じゃ敵わないからどう逃げるか、どう回避するかがスリリングで楽しい。

この映画の内容はいかにババを引かずに一番乗りで上がれるかだったと思う。
命がけの面白いゲームを見せてもらいました。

日本と韓国でサスペンス映画はどう頑張っても韓国映画に軍配が上がってしまうだろう。
日本原作を日本以上に面白く作れるんだからどうにもならない。
日本の映画もいい所はあるし、お互いの映画人が刺激し合って益々の発展を遂げてほしいと思いました。

物語にほぼ関係ないけれど「ミナリ」に出てるおばあちゃん役の方がこちらの作品でもおばあちゃん役で出てましたね。
しかも、ボケる、漏らす、家が焼ける。なにこの共通点って笑っちゃいまいた。

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劇中セリフより

「運命だったと思って気楽にしてな」

最悪の事態であっても運命のせいできれば少しだけ楽になる。
信仰とはもしかしたら最大の憎まれ役なのかも知れませんね。

フリント