「バディムービー@憲法制定」日本独立 おかずはるさめさんの映画レビュー(感想・評価)
バディムービー@憲法制定
憲法改正担当の国務大臣である松本丞治が懐かしい。昔、NHKのドラマで、津川雅彦が演じていたのが良かった。
タイトルは日本独立とあるが、主に描かれているのは憲法制定のプロセスだ。
占領行政からソ連を排除して日本を影響下に置きたいGHQは、天皇を取り込もうとする。新憲法制定においても外国世論に対抗できる法律構成の下で天皇の地位を維持しようとする。旧体制の象徴である天皇制を維持するためには、戦争放棄条項が必要となる。そんな思惑の下で、自ら草案を創出して日本政府に提示したGHQ。
憲法は国家の骨組みである。いかに占領下にあるとはいえ、日本人による議論を尽くさないまま、短期間で制定すべきではない。そのように考える白州次郎と松本大臣は真っ向からGHQと闘う。
他方、早期独立を果たして、安全保障を米国に委ねることで復興を期す吉田茂は、マッカーサー主導の憲法制定を全面的に支持する。憲法制定が米国との決戦の場では無いということだ。
日本の独立という同じゴールを見つつも、プロセスが異なる二人の主人公。自分の主張を曲げず激しい議論をしたとしても、GHQ相手には協力できるバディ感がいい。
憲法を作るのは言葉だ。言葉は民族をかたちづくる重要な要素でもある。言葉や文章を否定するのは、民族や人格を否定することと同様である。これが理由で、吉田満、小林秀雄、松本大臣らは言葉をめぐってGHQと戦った。
ここで戦わなければ、次は戦場に立つことすらできない。本作ではそのような思いが描かれていたと思う。
自由民主党は自主憲法制定を党是に掲げながら未だ実現していない。当座の目標だった経済成長が、唯一の目標になったためなのか。本作はその理由を、エンタテインメントによって描いてみせた。映画制作には苦労が伴う現況で、このような企画が実現したことがある意味では凄い。