「今見れてよかった作品」ドライブ・マイ・カー みちかけさんの映画レビュー(感想・評価)
今見れてよかった作品
上映時間を確認して、途中で寝てしまわないかと
頭を過ぎった少しの不安も杞憂に終わるあっという間の3時間でした。
気づいたら1番感情移入していたのは家福。
妻(音)の浮気現場を目撃しながらも、
何もなかったかのようにその場を去り、
その後も平然と夫婦生活を営む。
家福は音が複数の男と関係を持っていたであろう事を、
彼女の創る芸術と結び付け、正当化しようとしていた。
それでも本心では大切な人に裏切られたという思いを払拭できず、
その葛藤の中で生き続けていたのだろう。
そんな家福の心を少しづつ、
みさきが溶かしていく過程が見事に、丁寧に
表現されていた。
家福が涙を流しながら、
自身が本当は傷ついていたこと、
音に会ったら責めたいこと、謝りたいこと、
これまで平静を装ってきた感情を
表出させるシーンは苦しくもあり、
救いでもあるような気がした。
さまざまな失敗や後悔、悲しみを経験して大人になる過程で
人は自分が傷つかないよう防衛機構を構築するのだと思う。
自分自身、今現在そんな自分に嫌気がさしている。
子供の頃みたいに、好きと思えるものには真っ向からぶつかりたい。
傷つく自分を恐れず、後先考えず。
だから、今見ることができてすごく良かった。
長い余韻の中に、孤独、寂しさ、希望、救い
さまざまな感情が入り交じっている。
それらすべてひっくるめてぜんぶ抱きかかえて
生きていかなければいけないのが人間なのだと思う。
定期的に見返したいと思える、素晴らしい作品でした。
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