「宇宙が舞台だからこそ…」地球外少年少女 前編「地球外からの使者」 ぷらずまさんの映画レビュー(感想・評価)
宇宙が舞台だからこそ…
Netflixでイッキ観。「電脳コイル」が大好きなので、公開を楽しみにしていました。アニメファンなら画面を眺めているだけでも満足できるくらい、作画が本当に素晴らしいです。キャラデザもめちゃくちゃ可愛いし、音楽も声優さんの演技も素敵。流石としか言いようがありません。
ただ私はあまり世界観に入り込めないまま観終わってしまいました。
冒頭のSNSフォロワー数でキャラクター性を表現する描写などは面白いと思いましたが、特に地球人のこどもたちに関しては、普段の生活環境、どんな両親に見送られて宇宙にやって来たのかという描写がなかったこともあり、バックグラウンドが見えづらく、感情移入しづらいです。
宇宙空間のみでストーリーが展開されますが、こどもたちには地球で帰りを待つ家族や友達、宇宙ステーションにも地球でサポートしているスタッフ達が居るはずです。ですが「地球で待つ側」のキャラがほとんど登場しないため、主人公たちが置かれている状況がイマイチ伝わって来ません。「ヤバい状況」なのはわかるけど「絶対生きて帰っておいで」という感情までには至らない感じです。私の場合は完全に親目線で観ていたため、感情移入する先が見当たらなかったのだと思います。
今作の場合は、宇宙が舞台だからこそ、もっと地球を描く必要があったのではと思います。意図的に描かなかったのかもしれませんが…。冒頭だけでも「地球にいる側」と「宇宙にいる側」両方の描写があれば、物理的な距離感も伝わってきたと思いますし、主人公の「月で産まれた子」という設定もより際立ったのではないでしょうか。
主任の「突発性認知症」という設定も本当に必要だったのか疑問です。
ネットで検索してみましたが、架空の病気でしょうか。少し引っかかる部分ではありました。主任の扱いがちょっと雑だったように思います。
全体的にもう少し説明して欲しかった感がありますが、思わず笑ってしまうシーンも多く、最後まで楽しめる作品でした。磯監督が描くそう遠くない未来とこどもたち、日本文化の描写、あったかい空気はいつ観ても素敵です。いつかこんな未来が訪れればいいなと思います。