ある人質 生還までの398日のレビュー・感想・評価
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デンマークにも自己責任論はあるのだろうか
何者にもなれない自分を抱えて生きるのは苦しい。そういう時に人は、蛮勇を出して大きなことをやってやろうと思ってしまう。本作の主人公の青年は怪我で体操選手の道を断たれた後に、カメラマンとしての道を歩み始めた矢先、シリアの戦場で誘拐される。まだジャーナリストと呼ぶほどの実績もなにもない「ワナビー」のような彼は、そこで地獄の体験をする。身を守る術もない彼のような駆け出しは誘拐犯にとって絶好の獲物だろう。 本作はISに人質にされた過酷な日々を赤裸々に描くと同時に、デンマークに残された家族が身代金を用意するため奔走する姿を描く。 デンマークは日本同様、テロリストに決して身代金を支払わないと決めている国だ。家族は寄付を募り、自力で身代金を用意する。デンマークの世論がその家族に対してどんな反応を示したのかははっきりとは描かれないが、苦悩に満ちた家族の表情が世論の厳しさを想像させる。やはり、デンマークにも自己責任論のようなものがあったのだろうか。
「平凡な日常」って、そんなに悪いことなのだろうか? 人生の指針を考える意味でも重要な作品。
本作は、2013年から2014年の398日もの間、 過激派組織IS(イスラム国)に拘束され捕虜となった実在のデンマーク人を描いていて、デンマークのアカデミー賞(ロバート賞)で主演男優賞、助演女優賞、 観客賞、脚色賞を受賞しています。 作風は、スウェーデン版「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」(2009)の監督作品なので、分かりやすく出来は良いです。 このIS(イスラム国)関連は、ニュースで頻繁に扱われていたので覚えている人も多いでしょう。ただ、現実には、「どこか遠くの争いだよね」と冷めた感じでいる人も少なくないと思います。 本作では最後の方で「内戦下のシリアでは100人以上の報道関係者が死亡」と出てきます。 この「最終的に死者が40万人を超えた争い」における悲劇を報道しようと、日本からも報道関係者が向かいました。 中でも2014年にISに拘束され、2015年1月30日に殺害映像がインターネット上で公開された後藤健二さんが大きなニュースになったりと、日本も決して他人事ではないのです。 私は、以前、ニュース番組のコメンテーターをしていた時に、後藤さんがディレクターで担当した回があったりと、それなりに面識がありました。紛争地域によく行っているという事は知っていましたが、まさかの出来事でした。このように世の中は思っているより狭いものなのです。 さて、本作は正直、キツいシーンもあります。ただ、その裏で家族らが追い込まれながらも必死に動いている様は、実に映画的です。そして、その厳しい出来事を映画の中で追体験する終盤に、「君は日常に戻る、退屈で平凡な毎日に」といったセリフが出てきます。 通常、このセリフから何か深い意味を見出すことはできないでしょう。ところが、本作を見ると、視界が大きく広がっていて「いかに深い意味をもつのか」が分かり、様々な事を考えさせられるのです。 そして、ラストへの展開は、実話ならではの深さがあり、感情が大きく揺れ動きます。 もちろん史実の追体験という意味でも大切ですが、私は、何気なく卑下してしまいがちな「日常」を考え直す意味で、とても大切な作品だと思います。
A Tragic Story the World Has Yet to Escape
Daniel is the story of a gymnast-cum-journalist who finds himself captured by ISIS in Syria upon a good deed photo shoot in the war zone. He's tortured along with renowned journalist James Foley while is family in Denmark scrambles to find ransom money. In the grand scheme the film's conclusion is as gut-wrenching as the protagonist's experience. A painful reminder of the mess the "West" must fix.
表現しきれない絶望感
自分ならどうしていただろうか。痛めつけられ、尊厳を奪われ、死ぬことも許されないという地獄という言葉では表現できない絶望感の中にわけも分からずに囚われてしまたら。 事実に則して作品化されている、という前提でレビューします。 体操選手として生きてきた青年(少年?)が怪我をきっかけに人生が大回転します。体操しかしてこなかった青年が目指した職業が写真家。とある写真家に弟子入りし、いきなり混乱/紛争地域での撮影活動に従事します。紛争地域での市民生活に興味関心を強くもったその青年がトルコからシリアの紛争地域に撮影旅行したことでISISの成立前のとあるイスラム過激派組織に囚われてしまいます。本来なら自由シリア軍の勢力下にあったはずの場所でです。 というところから過酷で絶望感しかない捕虜生活、青年の身代金交渉をするエージェントの動き、身代金を工面するために必死に動く家族、口先だけのデンマーク外務省(これは仕方ない)が様々に物語を織りなして一つに向かっていく作りはとてもわかり易いものでした。わかり易すぎて怖かったです。 観終わって、「あー、あの人質の方って結構優遇されていたんじゃないか?」という思いが、冗談や冷やかしではなく湧き上がったことは抑えることができませんでした。彼こそ、あの経験をこういう形なりで世に出すべきではないかとも。
本当にある事だからこそ、心に来るものがありました。
映画時間が2時間以上ということで、なかなか見る機会がなく手が出にくかったです。 ですが、見終わった今思うと、ボリュームがありすぎてこれでも削ったシーンなどあったように思います。映画では語りつくせなかったところもあったのでは思います。それでもボリュームはたっぷりで、全体的によくまとまっていて、間延びしていた所は無く、集中して見ちゃいました。 序盤の導入部分は、他映画にもよくある感じでスルスルと進んでいきます。逆にそこはダレなくて良かったです。 話が進むにつれてどんどんと引き込まれていき、息するのを忘れるシーンがありました。 見終わって最初に思ったのは、「今の生活が平和で幸せなんだな」と思いました。日本で良かったなぁ...と。 タイトルにも書きましたが、実際にあった話を元にしているので、考えさせられる部分もあるかと思います。この映画を一度は見て、こういう世界や社会があるんだと知れるのは良いことだと思います。
平凡で退屈な毎日
平凡で退屈な毎日を楽しもう。 今もこうしている間にも苦しめられている人が世界には沢山いるだろう。 ミサイルも飛んでこない、拷問されることも無い毎日がいかに幸せなことかを通説に考えさせられる。
人質を盾に身代金を要求(それを商売としている)残虐グループの話
自分達の宗教観とかあたかも正しいかのように振る舞っているが 結局は、金の為に人殺しでもなんでもしてしまうという行動。 餌食にならない為にも、お金を渡さないという決断。 人命の重さとお金。 答えの無い問題ではないだろうか?
恐ろしい実話。シリア内戦下では報道関係者100人以上が犠牲になっている
ISに2013年 現地で囚われた実在のデンマーク人カメラマンの恐怖の13ヵ月間を描くハードな作品。 飢えに暴力、地獄のような日々でしたが… 彼はある意味、幸運でした。なぜなら、デンマーク人だったから… 囚人仲間のアメリカ人ジャーナリスト、ジェームズ・フォーリーは… 極限状態においてはその人の本性・本質が剥き出しになりますが、ユーモアを忘れず人に分け隔てしない善良な心の持ち主フォーリーが主人公に遺した言葉が忘れられない。 アメリカ人がISから生きて解放されるわけがないのです。 遺書を書けないので、暗記してほしい、と家族への言葉を託すフォーリー。 これは涙無くして聞けず、画面が曇る。 報道の自由、危険地域に行くリスク云々・責任論の議論は脇に置いておいて、とにかく、広い地球の中にはまだまだこんな危険な地域があり、理不尽極まりない国事情・政治事情があり、こんな所では命なんて簡単に吹き飛んでしまう… という現実を突きつけられることで 【今の自分が暮らす平和な世界】に感謝の思いが間違いなく湧いてきます。 毎日が退屈?ドキドキしない?つまんない? 退屈結構、ドキドキしなくても心穏やかで結構。 命が守られ、インフラが整い、警察もしっかりしていて法律により人権も守られ、衣食住に困らない、これだけで素晴らしいことなんだと…
事実であるリアル
実際に人質となったデンマーク人写真家の話で、拷問の様子などはほぼ事実に近いのだろう。本当によく生きて帰ることができてよかった。 でも、体操選手を怪我で諦め、夢だった写真家になれて、いきなりシリアに行ったことは少し考えが浅かったのでは?と思ってしまった。 要求された身代金を自分たちで掻き集めた家族の苦労も大変なものだったろう。 このようなことの起きない平和な世の中になることを願うばかりです。
ノンフィクションの凄み
まずは最終的には助かるのだ、という確信を担保に鑑賞できたのは良かった。 彼は単なる無知で無謀な若者だった。そんなあまちゃんの彼が398日間で大きく成長したであろうことは皮肉だ。もちろん高すぎる授業料だ。 どんな状況にあろうとも人質同士わずかなことでも助け合い、名前で呼び合い、慰め合い、冗談を言い(多分こんな極限状況で日本人は冗談を言えない)、強がってみせる欧米の男たち。過酷な人質であっても独房ではないことのありがたさ(高みの見物的感想で申し訳ない が)を感じた。そのことで人間としての威厳をギリギリ保てたと思う。 デンマーク政府の対応は「自助、共助、公助(実質なし)」で一貫していた。とにかく金がモノを言うんですね。テロリストも金、金、金、、、。人質ビジネス。超絶卑怯だけどビジネスのルールには則っていた。 欲を言えば、主人公がどんな風にPTSDを克服し、経済的にも立ち直って行けたのかも知りたかった。
実話ゆえの凄惨さ。身につまされる、日々の尊さ。
【賛否両論チェック】 賛:凄惨な中で、なんとか日々を生き延びていた主人公の姿や、そんな彼を何としてでも助けようとする家族の姿が、観ていて胸を打つ。毎日を無事に過ごせるありがたさも、身に染みるよう。 否:拷問シーンや殺害シーンが多いので、思わず目を背けたくなってしまいそう。 何の前触れもなく突然連れ去られ、劣悪な環境下での監禁と拷問という、終わりの見えない恐怖へとさらされる主人公・ダニエル。実話を基にしているからこそ、そのあまりの凄惨さに、思わず目を背けたくなってしまいます。 また、そんな日々に何度も自暴自棄になりながらも、同じように監禁された人々との交流を通して、なんとか1日1日を生き延びていくダニエルの姿も印象的です。共に監禁されることになるアメリカ人・ジェームズが告げる、 「奴らの憎悪に負けたくないんだ・・・」 という言葉が、すごく心に残りました。 それと同時に、今自分自身が平穏無事に毎日を過ごせていることが、決して当たり前ではないということも、思わず身につまされるような気がします。 そしてダニエルを救出するために、まさに奔走していた家族の様子も、観ていて胸を打ちます。政府の協力が得られない中でも、なんとか生還させたいと願う姿に、家族であるからこその愛情を感じました。 決して軽い気持ちでは観られない内容ですが、命の尊さを痛感させてくれる、そんな作品です。是非ご覧になってみて下さい。
感動的な話にするのはどうか?って思いますよ
うん、ISひどいですよね、非人道的ですよね。ってことを再認識、再確認した作品でした。 以上・・・です。本当にそれ以外の感想を持てませんでした。残念ながら。 非戦闘員を人質にして身代金を要求。ニュースで流れてましたからね、たくさん。 日本の方も犠牲になってましたし。その事実を知っただけ・・・って感じです。 本作はダニエルさんの経験をベースで、脚色(感動ポイント・・・なのかな?)ありのストーリー。 たしかに、たーしかに、非武装の人をさらって身代金要求、さらには簡単に殺すなんか許されるものじゃないです。決して。 ただですね・・・僕自身どうしても納得できないのが・・・共感できないのが・・・ 「危険なところには近寄っちゃだめでしょ?」ってことです。 ずーーーっと、これが頭の中でちらついてしまって、この救出劇全部が 「お前がいかなきゃよかったんだよ!」って目で見てしまうのです。 どんなに準備しても何がどーなるか?はわからないのが危険地域だと思います。 多分、ダニエルさんが渡航したタイミングでもシリアは危険となってたのではないでしょうか? にもかかわらず、行ったんですから、どんなことが起きたとしてもそれ相応の覚悟があったのではないでしょうか? 僕は背景や動機をもっと濃密に描かないとならないって思いました。 も、デンマークがテロと交渉しないに至った経緯、背景や当時あったであろう渡航制限の事実を伝えてほしいと、描いて欲しいと。 どんな情勢で、もっとジャーナリズムな使命を感じ命懸けで報道した方々がいらっしゃると思います。その方々の存在こそ描かれるべきで、ダニエルさんの気軽な動機と対比させることで、危険地域への安易な渡航を制御できるのではないでしょうか! おなじく、ダニエルさんなぜはシリアを選んだのか?葛藤やら、意思めいたものなかったのかな? なんか。流れで選んだ道みたい。風景写真うまいから、、、とか。すごく軽く見える。 本作のメインテーマはなんだったのでしょうか? 救出エンタメ感が強すぎて、僕は楽しめませんでした。
チェスと人狼ゲーム
タイトルがすでに主人公ダニエルが生きて帰れることを示しているので、それほど期待はしていなかった。「テロには屈しない」といった言葉の重みや政府の決断、国によってかなり差があるのだろうけど、デンマークは日本の立場とほぼ同じで、交渉は一切せず身代金は払わないという。そして悲しみに暮れる家族はネットで募金を集めることを思いついたのだが、政府は救出名義の公募も許さない態度。秘密のうちに募金活動を進めなくてはならないのだった。 拷問や粗末な食事での監禁。挙句の果ては「ロバになれ」という。同じく捕らわれた各国の人質も徐々に帰宅を許され、中には処刑される者もいた。ただ、あまりにも残酷な描写はなく、家族愛がメインとなっていく。 獄中と本国の家族の映像、そして交渉人アートゥアと居所のわからなかった米国のジェームズ・フォーリーを交互に描き、表には出てこなかったISの監禁模様が伝えられる。ただ、中盤はかなりだれてきて、眠気も感じてしまいました。母親の同級生の夫という人物に資金援助を頼んでいるシーンから徐々にクライマックスへ・・・眠気も吹っ飛ぶほど感動的瞬間が待っていたのです。 身代金に達したときの喜びや家族との再会。そして記憶力が問われる家族への遺言など、涙ぼろぼろ・・・どうして過激派はそこまでするのかと腹が立ってきた。過激派に資金援助する国もあっただろうし、欧米の攻撃など、他にも悪者がいるんちゃう? とにかくアートゥアがかっこいい!ハードボイルドとして彼を中心に描くのもいいかもしれない。そして、眼鏡を渡されたとき、そういやずっと裸眼だったんだよね・・・と思い出した。一瞬、ビートルズが嫌いになりそうにも・・・
テロリストに屈したことになるのか・・・・
イスラム圏で起きている人質ビジネス? 捕らえられた人を開放するために身代金を支払いうのはどう言う事なのか? 助けたいのは当たり前、 しかし、これが彼らを助長させるのは事実 次の被害者を産んでしまう 実話をベースにした映画でこれだけ緊張感に包まれて観たのは初めてだと思う 映画として素晴らしかったが、時間の経過が上手く描かれていないので減点 季節感も無く、398日に関する情報が不足している・・・・
“交渉”を公にできない苦しみ
ノンフィクション系で、「観ての通り」という作品であった。 (このような“武装勢力による拉致”では全然ないのだが、)とあるアフリカの国で、車に乗せられて見知らぬ地に連れて行かれて、金銭を要求された経験のある自分としては、主人公の行動は意外なところがあった。 それは、いったん逃亡に成功した時に、地元の人間を容易に信用してしまったシーンである。 自分は逃げた後、地元の人間を見ても、誰も彼も敵に見えて信用できず、絶望的になったのを思い出す。(たまたまヨーロッパ人が通りかかったので、助かったが。) また、人質の国籍だけでこんなにも状況が変わってしまうのか、と驚いた。 総じて欧米人は、イスラム原理主義者には憎まれている印象があるが、本作ではデンマーク人とアメリカ人の間の差は、決定的だった。 その他、人質解放エージェントの実態や、“交渉”を公にできない理由と苦しみなど、ニュース報道では分からないことが盛りだくさんで、いろいろと勉強になる作品である。
テーマはいいのだろうが、、、、、、
そもそも、やることが見つからない平和な国の若者が紛争地帯の現実を伝えたいから写真を撮りにいくという入り口から怒りを覚える。 誰かがやらないといけないから 覚悟がいるのでは?? 覚悟はあったのか?? ああなるであろうことはわかっていたはずだろう。 しかし、見ていくにつれて苦しさの中に、絶対的な惨劇の中に同情とでもいうのか不思議と怒りでは無く助けたいと思えたからよかった。 救出交渉人の「無知な若者」 経営者の「会社としての立場」 苦しみ続けた家族 自己責任論あってもいいだろうと思ってしまった。
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