ホーム >
作品情報 >
映画「エポックのアトリエ 菅谷晋一がつくるレコードジャケット」 エポックのアトリエ 菅谷晋一がつくるレコードジャケット
劇場公開日 2021年1月8日
解説
ザ・クロマニヨンズ、OKAMOTO’Sなどのレコードジャケットを手がけるデザイナー、菅谷晋一の制作風景を捉えたドキュメンタリー。大学で建築を学んだ後に家業の町工場で働いていたという、デザイナーとしては異色の経歴を持つ菅谷晋一。デザインは手探りで学び、どこにも所属せずに人脈ゼロから仕事を始め、約20年にわたりたった1人で作品をつくり続けている。そんな彼の作品や生き方に共鳴した映像作家・南部充俊が、その独特の制作過程に密着。菅谷本人の言葉や、彼に信頼を寄せるミュージシャン、関係者へのインタビューを織り交ぜながら、アートワークの作り方をひも解いていく。
2020年製作/96分/G/日本
配給:SPACE SHOWER FILMS
オフィシャルサイト スタッフ・キャスト
全てのスタッフ・キャストを見る
物づくりの過程を見つめるドキュメンタリーとして面白く観た。自分が全く預かり知らないレコードジャケット制作への興味関心が鑑賞の入り口だったものの、気がつくとむしろ、本作の居心地のよさ、柔らかな空気感に不思議なほど惹きつけられていた。世の中のあらゆる仕事は、一つの依頼に対して求められる答えを「これだ!」とバチンと返すことこそ理想だと思うが、柔らかな物腰の菅谷さんが、何よりも「最初に音源に接した時のインプレッション」を大事にしながらアイディアを徐々に詰めていく姿勢は、おそらく多くの人に「自分もそうでありたい」と思わせる何かを秘めていると思う。また、本作の構造として、人名や肩書きをはじめとする説明的なテロップを一切なくし、観る者が頭ではなく感覚としてこの物づくりの世界へ没入していけるよう配慮しているのも嬉しいところ。それは菅谷さんの手がけるアートワークの持ち味とも見事に重なり合う部分だと思うのだ。
2021年5月16日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館
大学で建築を学んだ後に家業の町工場に就職していたという、異色の経歴を持つデザイナーの菅谷晋一。デザインは独学で学び、所属無しの人脈ゼロから仕事を始め、約20年にわたり1人で作品をつくり続けている彼のドキュメンタリー。
絵画、彫刻、切り絵、などアナログを駆使した独特のCDジャケット制作過程に密着し、菅谷本人の感性や、彼に信頼を寄せるザ・クロマニヨンズ、オカモトズなどのミュージシャン、制作関係者へのインタビューなどを含め彼の作品作りに迫っている。
今どきアナログ?って思ったけど、レコードの復活も含めて現在の最先端なのかもしれない。
イマジネーションの出し方など菅谷しんいちの魅力たっぷりの作品でした。
出来れば、ザ・クロマニヨンズやオカモトズのメンバーや関係者の名前を字幕で入れて欲しかった。
2021年3月28日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館
ネタバレ! クリックして本文を読む
ザ・クロマニヨンズのレコードジャケットを毎回手がけている菅谷晋一。手間をかけ、時間をかけ、愛情をかけて作る作品は、ザ・クロマニヨンズのメンバーのみならず、たくさんの人からの信頼を得ているんですね。甲本ヒロトも「こちらからの(デザインの)注文はしない。丸投げです」とその信頼の厚さを語っていました。
この映画の中でザ・クロマニヨンズのアルバム「PUNCH」とシングル「クレーンゲーム」のジャケットを制作過程が撮影されていました「PUNCH」ではボルトのオブジェをわざわざ作り、写真に撮り、ようやくパソコンで画像処理。タイトルは紙を100円ショップで買ったというハサミでチョキチョキ。工作を楽しんでるかのようでした。
僕が印象に残ったのは、アーティストに提示するサンプルは一点であるということ。通常は何点ものパターンを作って提示する人が多いそうです。
菅谷さんはこう言ってました。「わざわざ時間を作って、僕に仕事を依頼しに来てくれる。一点に100%のチカラを注がないと、相手に失礼でしょ?」と。
「相手に失礼でしょ?」って言葉。
いま、僕たちが忘れかけている感覚かもしれないですね。自分を主張することに気持ちが傾けば、相手を想う気持ちは薄れていきます。
自分の言葉が、行動が相手にどう響くかを想像しながら動くということは言うほど簡単じゃないし、自分を抑えることにもなる。でもそこを越えること‥それが大事なような気がしました。
ものづくりから見えて来る人の心。
ザ・クロマニヨンズから入っての鑑賞でしたが、とても良いメッセージを受け取ることができました。観て良かったし、オススメです。
関係者は皆、菅谷さんのつくるアートワークに裏切り込みの信頼を寄せておりましたが、私も本作(=菅谷さんの世界観)に自分の心を全面的に預けることができました。その心地良さは映画館を出た後も私を優しく包んでくれました。
私の中でクリエイティブとは一言でまとめると「ズレ」であり、菅谷さんはそのズレをナチュラルに生んでいると思いました。PUNCHIのボルトが良い例で、一見理解できず「!?」となりますが、菅谷さんの頭の中ではストーリーが完成されていて、話を聞けば聞くほど最終的に「バカじゃねぇの(笑)」と見る者を最高な気持ちにさせてくれます。
その根幹となっているのは菅谷さんのプロダクトポリシーである「手触り感」です。現代はどの業界もテック形の人がリードする時代で、私もその方々の考え方を日々参考にしています。ところが私自身はデジタルな能力が皆無で、DXの恩恵を受けているだけの"何者にもなれない人間"です。その反動もあってアナログな感覚は大事にしており、アナログな感覚の延長線上に自分の個性があるのだと思っています。菅谷さんのプロダクト風景を見ていると背中を押してもらえたようで、アナログな感覚をより大事にしようと思いました。
また、菅谷さんは閃きを形にする技術も素晴らしく、その過程を垣間見れたのは大変貴重でした。アイデアなんて誰でも浮かぶもので、それを形にできる人は限られ、さらに菅谷さんのように"裏切れる"人は一握りです。それも外注せず自身の手で完結させているところがますます魅力的。私も撮影クルーに混じり菅谷さんがクリエイトする空気を間近で感じたかったです。
アーティストのドキュメンタリー映画には途中で苦労話が付き物ですが、本作にはそれがなく必要性もないですね。エンドロールの音楽も管谷さんの作品のようにカッコ良さと温もりの両方を感じました。
娯楽映画ではないけれど独特な娯楽風景を映し出す究極の娯楽映画でした。
個人の思い入れもあって⭐︎5つ!!
すべての映画レビューを見る(全6件)