「日本の米は世界一」川っぺりムコリッタ ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
日本の米は世界一
午後から映画館が台風の影響で閉まるという緊急事態に陥ったので、急遽予定を変更してこの作品に。本来は「この子は邪悪」を観てからの流れだったんですが…。台風め許さん。
今作、程よく笑えて、程よくホロっとくる、そして心が温かくなる良作でした。
前科持ちの主人公が流れ着いたイカを捌く仕事場での交流とかではなく、住んでいる平家一帯の人々との物語だったのも朗らかな感じを演出するのに最適でした。いきなり風呂に入ったり、ご飯一緒に食べだしたりと、図々しい隣人や、墓石を子供と一緒に売る隣人、亡くなったはずなのに現れる老人、亡くなった旦那を愛し続けている大家と個性豊かな面々が揃っています。
途中で殆ど記憶のない父親の遺骨を引き取りに行ったり、島田の過去の記憶が蘇ったり、妊婦を変に憎む大家だったり、坊さんの存在だったり、遺骨を花火にして打ち上げたタクシー運転手だったりと、常に明るい雰囲気のそばに様々な死生観が潜んでいました。命の電話の利用者とか、葬式に坊さんを呼ばないとか、市役所に残っている見ず知らずの遺骨と、そうなのかという情報も詰め込まれており、上映中ずっと死ぬのって怖いなーと他人事のように思っていました。30日公開の「アイ・アム まきもと」の主人公と妙にリンクしているのも面白かったです。
今作は誰かとご飯を食べているシーンが印象的で、メインは白米、それに漬物や味噌汁、そこにビール、出てくるもののバリエーションこそ少ないですが、美味そうに食べたり、感想を言い合っているのも美味しそうな感じを引き出していました。
最後の自由な形の弔いも現代ではありなのかもなというのをひしひしと感じました。江口のりこさんの使い方は贅沢すぎるなとは思いましたが。
考えさせられることは多かったですが、劇場を出るときには不思議と笑っていられた、そんな作品でした。あ〜お腹空いたなぁ。
鑑賞日 9/19
鑑賞時間 11:40〜13:50
座席 K-17