「ケイト・ブランシェットとナタリー・ポートマンをダシに使って、道徳的なメッセージを伝える」ソング・トゥ・ソング しろくまさんの映画レビュー(感想・評価)
ケイト・ブランシェットとナタリー・ポートマンをダシに使って、道徳的なメッセージを伝える
ジョニー・ライドン、パティ・スミス、イギー・ポップら、ロックのレジェンドがドバドバ登場し、まだまだご活躍だねえーと思ったら、実は3年も前の作品なのか。
「ザ・ギョーカイ人」の金持ち生活を送る大物プロデューサーのクック(マイケル・ファスペンダー)と、駆け出しのミュージシャンのBV(ライアン・ゴズリング)のあいだをフラフラ揺れる女子フェイ(ルーニー・マーラ)。
ということは、クックとBVを対比的に描く、というのが本作の意図である。
クックの妻(ナタリー・ポートマン、ダイナーでナンパした求職中の幼稚園教諭という設定)は、クックとの生活の空虚さへの失望のうちに死ぬ。
BVは母親から「ふさわしくない」と言われて恋人(ケイト・ブランシェット)と別れる。
そうではないかも知れないが、そう描いているように見える。フツー大の男がママに言われて彼女と別れるか?!いや、実際にはあることかも知れないけど、それを映画で描くということは、どういうことか?
そしてBVはフェイとヨリを戻し、家族と病気の父親のために故郷に戻り、音楽からは足を洗って、作業現場で働く。
つまり。
クックとBVの対比で明らかになるのは、金持ち生活の否定。そして、家族や両親を大切にし、ミュージシャンなどという浮ついたことは諦めて、額に汗して働くことの肯定だ。
ナタリー・ポートマン役の妻を死なせ、ケイト・ブランシェット役の恋人と別れさせてまで伝えているのは、実に“道徳的な”メッセージなのである。
ただ、本作はモノローグが多く、登場人物たちは決して声高には語らない。そして、全編を覆う実に美しく、詩的な映像(これはかなりすごい)。
これらが見事に道徳的メッセージを薄めている。
水面、鳥、ベッドルームなど同じイメージを繰り返す。その場に飛んでいる虫を小道具に使う(おそらくアドリブだろう)など、面白いシーンもあるが。
全体的に、ドラマの起伏はあまりなく、脚本より演出で観るタイプの作品。
それでメッセージがユニークならば惹かれるんだけど、前述の通り道徳的。
いや、もちろん家族は大事、労働も大事、愛も大事。でも、そのメッセージを伝えるという点で、ひねりも盛り上がりもなく、BVとフェイが再びパートナーになったことの説明は、脚本上も演出上も不足と見る。
(豪華キャストによる恋愛映画を勝手に期待してしまっていたこともあるだろう)僕には楽しめなかった。
ルーニー・マーラ、かわいいんだけど、いつ観ても薄幸そうなイメージだなあ。
コメントありがとうございます!
talismanさんのレビューも読ませていただきました。
ただ、メッセージを補う脚本、演出上の工夫があまりなくて、「これは道徳映画なのか?」って考えると、そこまでも到達してもいないように思います…