トゥルーノースのレビュー・感想・評価
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いま本当に起きていること
存在意義の重い映画だ
北朝鮮の強制収容所(他の国にそのような場所があるのか知らないが)に収容された兄妹の物語。監督は在日4世といことで脱北者や関係者からの綿密な取材を行い、これでもかというほどリアルなエピソードで物語を紡いでいく。アニメにすることで逆に映像の制限やリアリティを観客に委ねる作りも真摯な姿勢で良い。
私自身も北朝鮮やソ連、または全共闘など社会主義勢力については少しばかり勉強し知識を持っているつもりだった。
だが、その程度の知識や想像では全く足りぬほど、そこには筆舌を尽くし難い地獄が待っていた。理不尽にも行われる暴力と密告、脱略、賄賂、イジメ。あまりにも恐ろしく心を抉られたのは、自死することさえも選択できないということ。自分だけ助かる(自分だけ死ぬ)と一緒に収容された家族に迷惑がかかるから死ぬことも抗うことすらもできない。家族、仲間という人間らしささえも脅迫、強制、洗脳の道具に使う感覚。同じ人間とは到底思えないし、共感の余地など微塵もない。それでも無辜の民、市井の民は必死に生きようとし、地獄の中でも小さな幸せを見つけ笑顔であろうと努力する。
私たちに何ができるのか、何をしなければいけないのか。あの少年たちの笑顔や逞しさをもう一度思い出してほしい。
見るべき映画
使い古されたプロパガンダ!!
終盤で少し盛り上がるものの、使い古されたプロパガンダという感じで、目新しい情報や戦争映画の様な重みは無いです。何十年も同じ設定で続けるのは流石に苦しいと思います。日本という単語や日本製の商品、日本の唱歌が出てくるのも、わざとらしく感じます。外資系銀行が立ち並ぶ平壌の街並みの繁栄や、日本より綺麗な地下鉄を見た方が真にショックを受けると思います。
地獄と絶望の中でも希望を与えてくる“トゥルーノース”
まさか北朝鮮で作られる訳ないが、てっきりかつての同国・韓国だと思っていた。日本/インドネシアの合作とは…。
3DCGアニメで一応フィクションだが、ノンフィクションのような迫真さ。まるでドキュメンタリー。
そして戦慄した。
本当にこんな事が起きているのかと…。
1950年代から1980年代にかけての北朝鮮の帰還事業。
当時の外国の政策なんて分からない…って思った時、『焼肉ドラゴン』でも触れられていたあの事か。
日本から北朝鮮に移民した在日朝鮮人のパク一家。
が、父が反逆罪で失踪。ヨハンは妹ミヒと母ユリら家族と共に突然、いわれなき罪で悪名高き政治犯強制収容所に送還される…。
父親が何かしようとしているのは薄々感付くが、家族やヨハンらは平穏な暮らし。
一転、収容所までは何が起きたのか訳が分からず。
そこでは、人としての自由や権利が一切無情に奪われる…。
過酷過ぎる重労働。
絶対的な服従、反すれば拷問。
磨り減っていく体力、精神力。
失っていく心。
こんな所に永遠。死ぬまで。
平和な時代、平和な国、平和ボケしている何も知らない私なんぞが言う資格なんかないかもしれないが、敢えて。
“地上の楽園”ならぬ“地上の地獄”があるのなら、ここ。
拉致に核ミサイルに収容所…。
北朝鮮の“人民”一人一人は我々と変わらないが、全く北朝鮮という“国”は…。
始まった収容所暮らし。
まだ幼い子供とは言え、重労働はパスされない。
ヨハンは顔や身体中、汚れての土掘り。
少しでも力不足だったり役に立たなかったら、作業班や看守から怒鳴られる。
収容所内には、同年代の子供たちも。やっぱり居る。ド○コ・マ○フ○イみたいな子分を引き連れた嫌味な奴。
日本に住んでたヨハンに「日本の豚! 豚みたいに鳴け!」
こいつ、ぶっ○してぇ…。
絶望と悔しさの余り涙するヨハン。
そりゃそうだよ。私だったら一日も持たない。
そんな時、インスと出会う。
乞音症の少年。
来たばかりのヨハンは疎外を感じていたが、インスもまた孤独を感じていた。
意気投合。“日本豚”と“どもり豚”として“餌”を恵んで貰う。
そこまで卑しい真似までしないと、ここでは生きてはいけない。
私にそれが出来るか。
独りなら無理。
共に出来る友が居るから、地獄の生存競争を生きていける。
清水ハン栄治はディカプリオも絶賛したというドキュメンタリーのプロデュースを手掛け、本作で監督デビュー。
自身も在日コリアン。幼い頃から収容所の事は聞いて育ったという。
「悪い事すると収容所に連れて行かれるぞ」
製作に当り、実際に収容所で過ごした人々や脱北者に話を聞き、証言やリサーチを重ね、10年の歳月を掛けて完成。まさに、力作!
実写ではなく、アニメ。キャラはそんなにリアルではない。
台詞は英語。
もしこれが生々しい実写だったら…? リアルなアニメだったら…? とても見ていられなかったろう。
世界の多くの人に見て貰う為に、敢えて世界で多用されている英語を使用。
監督の執念すら感じた。
9年が経った。
ヨハンとインスは収容所生活を生き抜いていた。
しかしこの9年間で、変化があった。
ヨハンは純粋な心を失っていた。
この地獄という収容所と過酷な生存競争を生き抜く為に、他者を落とし、看守に媚を売る。
自分を偽ってまで。
彼を心配するインス、ミヒ、ユリ。
そんな時、悲劇が…。
食べ物を巡るいざこざで、母ユリが…。
自分が生きる事ばかりに執着して…。
欠けがえのない人を失った。…いや、自分が死なせたも同然。
母の言葉。「美しいものを探して」
生きるとは…? 人間の本質とは…?
ヨハンは自分らしさを取り戻す。
収容所生活の苦しさ、厳しさは変わらない。
寒々とした風景がそれを象徴。
一人、また一人と倒れていく…。
自分たちも死んでもここから逃れられない。
…いいや。日本や他の国では、死後の世界があると信じている。そこでは、永久に幸せに暮らす…。
台詞は英語だが、日本や朝鮮の民謡は原語。人民の思いを込めて、胸に染み入る。
死ななければ解放されないのか。
ある日、ミヒが看守から“乱暴”を受けた。
その看守はかつては実直だったが、9年間で歪んだ性格に。ミヒに対して一方的で邪な想いを抱く。
普段穏やかなインスはそれを知って激怒。看守に殴り掛かったが、その後勿論、拷問。
何とか命は取り留める。
ヨハンは気付く。
インスとミヒは惹かれ合っていた。
こんな絶望の中でも…。
微かな光。
それを繋ぐ。
生きて、ここを出る。
始めて計画/行動する脱獄。
思わぬ人物の激励。誰もが彼らに託していた。
決行。行く末は…?
まさかの事態が。OP登場した人物が“彼”の方だったとは…。
あの地獄を脱出し、今こうやって手に入れた平穏な暮らし。
しかし、忘れない。決して。
そして、伝える。あの人の為にも。
北朝鮮は存在を否定している政治犯強制収容所。
それを信じろと言うのか。
ここまで衝撃的なものを見せられて。
証言してくれた人は皆、嘘付きとでも言うのか。
私は“トゥルーノース(=北の真実)”なら、人民を信じる。
もう一つ信じる。
“トゥルーノース”には、“正しい方向”“生きる意味”などの意味合いもあるらしい。
地獄と絶望の中でも、必ず居る。
希望を与えてくる存在の“トゥルーノース”がーーー。
日本製作なのね
見るべき映画
世界に伝えても救われることがない北朝鮮
「誰が正しいとか間違ってるじゃないの 、誰になりたいかを自分に問いなさい」
政治犯収容所が酷い環境であるということは、薄々知ってはいたものの、その実態についてはあまりにも無知だったという事を思い知らされた。
ヨハンとその家族、協力者となって生きる囚人(さながらナチス・ドイツの強制収容所におけるゾンダーコマンドである)それぞれの生き方、どれも否定できるものでは無い。
先日BS1で放送されていたゾンダーコマンドについての番組を見たあとでは特にそう思う。
妹とインスだけを逃がし、自らは囮となりその代償として完全統制区域送りとなったヨハンのラストシーンでの晴れやかな顔は、母の遺言通りに自分のなりたいものになれたことを実感できたからなのだろう。
【“いつも美しいモノを探す気持ちを”と言い、母は息を引き取った。北朝鮮の政治犯強制収容所に家族と共に連行された少年の心の成長を通して”人は何の為に生きるのだろう”という重い命題を問いかけてくる作品。】
ー 北朝鮮の政治犯強制収容の存在について、北朝鮮は否定し続けている。だが、在日コリアン4世の清水ハン栄治監督が、執念の調査と取材をかけて10年掛けて完成させた今作を観れば、その存在を否定するのは、難しいであろう。エンドロールで流された今作の舞台になった収容所の空撮写真を見ても・・。
だが、今作は北朝鮮の蛮行を描くスタイルを取っているが、あの収容所がナチスや旧共産圏の強制収容所が舞台であっても、成り立つであろう。
監督の意図は、”そこにも”あるのではないか・・、と思った。ー
◆心に残った点<Caution! 内容に少し触れています。>
・冒頭、TEDで”家族の物語を語ります・・”と多くの人々の前に歩み出る青年が描かれる。
私は、”この青年は、今作の主人公だろう・・”と勝手に思う。
・平壌で、平穏に過ごしていたヨハン少年一家。厳格な父は翻訳家らしい。がある日、父は”出張”に出たまま帰らず、ヨハンは父に言われた”母さんと妹のミヒはお前が守るんだぞ”と言う言葉を胸に、トラックで遠路どこかに連れて行かれる。
ー ナチスでも、旧共産圏の収容所でも同様の事が行われていたのであろう。途中、小用を我慢しきれなかったお婆さんに対する、母ユリの優しき言葉と行為。ー
・収容所での、愚かしき監視官たちの姿と、人間として扱って貰えない人々の姿の対比。
ー ”連帯責任”と言う言葉が嫌いである。
更に”虎の威を借る狐”は唾棄すべき存在であると、思う。
日本でも、一部の国家権力者に”虎の威を借る、忖度狐”が居るのは、ご承知の通りである・・。
序盤は、腸が煮えくり返る思いで鑑賞。
私の嫌いな輩、総出演だからである・・。ー
・ヨハンが、家族のために隣人の盗みを密告し、更に看守グループに気に入られている赤い腕章を付けた監視グループに入る事で特権を得て行く姿。だが、そのために夫を失った老婆に恨みを買い、母ユリが、刺されてしまう一連の流れ。
ー 弱い集団の中で、形成されるヒエラルキー。密告。知識でしかないが、第二次世界大戦中の日本もそうではなかったか・・。最も恐ろしい”誰も信じられない”暗黒の社会である。ー
・ヨハンが自らの愚かしき行為の因果で母を看取った際に、母が遺した言葉。
“いつも美しいモノを探す気持ちを・・”
彼は、ミヒと共に、弱者の側に立ち、末期の人を看取る行為を続ける。傍らには、母を処刑された際に、母ユリが引き取ったインスもいる。
ー ヨハンの母ユリの高潔な生き方に、ヨハンもミヒもインスも大切な事を学んだのである。人は、生前の尊い行為により、死しても魂魄は残るのである。ー
・ヨハンとインスは看守リーにより身籠ってしまったミヒを連れて、脱走計画を練るが・・。
ー リーの描き方も、”人間の尊厳とは何か”と言う命題の一つの答えになっていると思う。ー
<TEDの満員の聴衆の前で、スピーチをしたのは、誰だったのか・・。
ヨハンの高潔な生き方を表したラストシーンも見事な作品であった。
そして、ヨハンに高潔、高邁な精神を遺したのは誰であったのか・・。
尊厳を踏みにじられても、高潔、高邁な心を忘れなかったヨハン一家の姿が印象的だった作品でもある。>
<2021年8月11日 刈谷日劇にて鑑賞>
今も尚、耐えて生きる
幼い子供達と共にある日突然連行される。
「強制労働」・「脱北者」、報道から持っていたイメージを遥かに超える過酷で厳しい生活。
そして今も尚、北朝鮮の政治犯強制収容所に12万人の「ヨハン」が居る…という事実に胸が痛む。
母を想い、父を想う。友を想い、妹を想うヨハンの生き様に胸を打たれた。
-「TRUE NORTH」〜生きる意味
映画館での鑑賞
「実写ではなくアニメ」
知るための映画。
まず、この作品を世に届けた製作陣、配給会社、上映会社の皆様に感謝と畏敬の念を伝えたいです。また、内情を伝えるために命をかけたであろう脱北者の方々に。
諸外国の内政状況については時々ニュースで知ることができます。内戦、虐殺、圧政、粛正などなど。けど、他国や国連がその問題があろう国を外からなんとかできるなんてことはないのですよね、残念ながら。自国に不利益を与えてる、または世界的な不利益を生んでるってことがないかぎり。
だからと言って、何もできないから知っても仕方ないとは思いませんし、思いたくないです。今は変わらないかもしれませんが、地球が続く限り何かが変わるきっかけが来るかもしれません。その時は変えなければならないことが「ある」ってことは、将来に遺していかなければならないと思います。そのために本作は存在してるんだと思います。
正直、楽しくないです。娯楽性無しです。でも、観るべき作品だと思います。日本人はなおさら。脱北者証言ベースですが、かなり確度は高いと思います。地図のあたりの説得力半端ないです。
北朝鮮の強制収容所から脱北してきた人の物語 とても信じがたい、見る...
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