劇場公開日 2021年6月4日

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「存在意義の重い映画だ」トゥルーノース Hiroki Abeさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0存在意義の重い映画だ

2021年12月6日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

北朝鮮の強制収容所(他の国にそのような場所があるのか知らないが)に収容された兄妹の物語。監督は在日4世といことで脱北者や関係者からの綿密な取材を行い、これでもかというほどリアルなエピソードで物語を紡いでいく。アニメにすることで逆に映像の制限やリアリティを観客に委ねる作りも真摯な姿勢で良い。

私自身も北朝鮮やソ連、または全共闘など社会主義勢力については少しばかり勉強し知識を持っているつもりだった。
だが、その程度の知識や想像では全く足りぬほど、そこには筆舌を尽くし難い地獄が待っていた。理不尽にも行われる暴力と密告、脱略、賄賂、イジメ。あまりにも恐ろしく心を抉られたのは、自死することさえも選択できないということ。自分だけ助かる(自分だけ死ぬ)と一緒に収容された家族に迷惑がかかるから死ぬことも抗うことすらもできない。家族、仲間という人間らしささえも脅迫、強制、洗脳の道具に使う感覚。同じ人間とは到底思えないし、共感の余地など微塵もない。それでも無辜の民、市井の民は必死に生きようとし、地獄の中でも小さな幸せを見つけ笑顔であろうと努力する。

私たちに何ができるのか、何をしなければいけないのか。あの少年たちの笑顔や逞しさをもう一度思い出してほしい。

Hiroki Abe