83歳のやさしいスパイのレビュー・感想・評価
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ドキュメンタリーだからこそ表現できたもの
高齢者施設に潜入して内部捜査せよ。そんな任務を負った素人スパイのご老人が、ひみつ道具や慣れないスマートフォン機能を駆使しながらその様子を探偵事務所へ報告する。この設定だけですでにドラマや映画へ応用できそうな気がするが、しかし本作の面白さ、というか”素朴さ”は、ドキュメンタリーだからこそ獲得できたものと言えそうだ。入居者たちも、83歳のスパイも、決して”演じている”わけではない。それぞれが素の人間としてここで出会い、言葉を交わし、交流を深めていく。そうやって人々の心に触れる自然な能力が、主人公にはもともと備わっているのだろう。作品として「スパイ」というキャッチーな部分が強調されているものの、その芯にあるのはここで暮らす高齢者たちの心の内側を覗き見ること。はたまた、任務を通じて生じる主人公の”心の移ろい”を感じること。全てはその瞬間をカメラに刻むための壮大な仕掛けですらあったかのように思える。
老人たちの孤独な現実を浮かび上がらせ、ある種の“喜劇”へ昇華させた感動作
冒頭はドキュメンタリーっぽくなく、まるでドラマのような感じで、アル・パチーノの写真が映ったりする。だが不意に83歳の主人公・セルヒオを捉えていたカメラの後ろにドキュメンタリーを撮っている監督やスタッフがいることが映し出される。ドキュメンタリーでありながら、フィクションとの境界線を敢えて曖昧にすることで、リアルな人間の冗談のような本当の話こそが、まるでフィクションのようなドラマとなり得ることを描こうとしているようだ。
この作品を魅力的にしているのは、なんといってもセルヒオの人柄である。雇われスパイであることを隠し、老人ホームに同じ入居者として潜入してみると、誰よりもやさしくて涙もろく男前な彼は、スパイなのにホームのおばあさんたちの人気者となってしまう。そして、いつしか入居者たちの良き相談相手となった新人スパイが見つけ出したのは、老人たちの孤独、彼らの心の叫びだった。
だが、この作品が深い感動を呼ぶのは、老人たちの孤独な現実を重く受け止めるだけでなく、同じ老人でありながら、生きがいを求めて新人スパイとして奮闘するセルヒオを通し、ある種の“喜劇”へ昇華しているからではないだろうか。
何この映画!ちょういいじゃん!
何も知らずに見始めて入居者たちのあまりの自然さに、ホンモノの入居者に協力してもらってんだな、それにしてもみんな演技うますぎじゃない?と思ったけど、全員『素』なのね。となると今度はセルヒオの演技力がバツグンだね。からんでくるのは全員女性だけどやっぱり男は社交性が低いのかしら?日本人男性特有の性質かと思ったけど男性の性質なのかしらね。エンディングの歌も泣かせる。老人が大立ち回りするほっこりムービーだと思ってたから、とても良い方向に裏切られた。
ドキュメンタリーというのが驚き
コメディなのかと思って観ていると、
老人ホームの中の人々の内情が分かってきて
だんだんと切なく、もの悲しくなってきてしまう。
はたして孤独なまま長生きするというのは幸福と言っていいんだろうか?
ホームの介護士も仲間も優しい。
右から左へ受け流す能力が高い。
年の孝なのかもしれない。
実の家族だったら「何言ってるんだ、またわかんないことばかり繰り返して」と
ぼやいてしまいそうなのだが
ここの人々は、ああ、この人にはそうなのでしょう、
彼女にはそれが見えているんだよね、そうだねえ、と
否定しない。
諦めなのかもしれない。
みな自然で飾らず、これがドキュメンタリーと聞いてかなり驚いた。
人生って残酷ね
死を待つばかりに見える老人達、それでも家族を待ち、母を望み家に帰りたいと望む。反対に優しい家族があり、仕事をしているという自覚のもと動く主人公は活き活きしており、他の老人達の癒しとなり友となる。ドキュメンタリーでないならなんと上手い老人役の方々だろうと思ったがそうかドキュメンタリーか。
ドキュメンタリー部門作品という驚き
観終わって知ったのだがこれは長編ドキュメンタリー部門作品だということ。老人ホームでの会話などからドキュメンタリー手法を混ぜていたのは感じていたが、まさかそうだったとは。そのくらい一つのストーリーがかなり完璧にできあがっていてそこに驚かされる。探偵となって老人ホームに潜入する人物も本当に公募したとのこと、え、セルヒオさんは素人さん?驚き。
甘くなりすぎず重くもなりすぎずちょうど人生のような、うきうきと悲しみ、悲喜こもごもに優しく、でもどこか毅然と寄り添うセルヒオさんがいい。とてもいい作品だったと思う。
83歳の男性が探偵に雇われ、老人ホームにスパイとして潜入し、虐待疑...
83歳の男性が探偵に雇われ、老人ホームにスパイとして潜入し、虐待疑惑を調査する。
おもしろい設定だ。
潜入前の準備段階ではスマホの使い方に四苦八苦し、大丈夫かと思わせたが、潜入後は入居者たちと円滑にコミュニケーションを図りながらうまく仕事をこなしていく。
ただ、当該老人ホームには全く問題はなかった。
緊張感は全くなく、ただ入居者たちとふれあいながら毎日を過ごすだけという感じで、この点は少し拍子抜けした部分はある。
施設にカメラ入ってるじゃん
スマホを使いこなせればOK。よし、俺だって80歳過ぎたらスパイに応募しよう!特に気に入ったのがカメラ付きの眼鏡。そんなグッズを持つだけでワクワクしてくる。
80代というのは微妙だ。タクシー運転手には80超えの人が何人もいるし、そんな車に当たってしまったら客も可哀想だとは思うが、本人は元気のつもりなのだろう。見知らぬ人と喋るだけでボケ予防になるのだから・・・そうして、事故頻度が高くなってからの解雇。年齢制限を設けてほしいものだ。せめて80歳を上限に。
虐待とか盗難とかって本当にあったのだろうか。とにかくターゲットの一人ソニアを見つけなければならない。といったところからセルヒオの潜入捜査は始まるが、高齢女性たちとの交流によってどんどん仲良くなっていき、ついには結婚?!というエピソードまで。
毎日のように探偵事務所のロムロと連絡。そして日記記帳。83歳とは思えないほど綺麗な字で綴っていくセルヒオ。本人はもうスパイになった気持ちで人と接していくのだ。恋するベルタ、詩人のペティタがとにかくいいおばあちゃん。
本当にドキュメンタリーなのか?という疑問はずっと考えながらの鑑賞。カメラは施設内に入っているから撮影スタッフもいるはずで、セルヒオがこっそり部屋を探る様子さえ映している。職員だって文句を言わないのだから、ターゲットに対する虐待・盗難も最初からないことがわかっていたのだろう。
そうやって様々な準備をしていて、セルヒオが気づいたのは老人の孤独。家族が面会に全く来ない人や、そのまま死を待つばかりの人。家族に会いたい!泣けるシーン、微笑ましいシーン、偶然の産物ではあるけど、製作陣はこれを撮りたかったのだろう。老人ホームの実態を映し出すというのが本来の目的であり、これがスパイの役割だったんですね。職員たちにはどんな説明・説得で撮らせてもらったんだろう・・・気になります。
本当、やさしいスパイ。
ドキュメンタリーってそもそも?。
舞台は高齢者施設。そこの入居している人がどう扱われているか。
それをカメラ付きメガネで動画を撮り(昔のスパイ物っぽい)報告。
で施設の許可を得て、カメラクルーが入っている。
入居者は「撮影に来てる」と言うのは、わかっている(はず)。
これをドキュメンタリーって言うのかな。
と見ていたのだけど。
「潜入する」って言うことだけ作り話(仕込み)。
あとは入居者の高齢によるいろんな体の不具合や。
漂う孤独感がとても伝わってきます。
主人公の定時報告が、最初は「こうでした」と事務的だったのが。
何ヶ月も入居者と触れ合うことで、「これでいいのか?」と問題提起する終盤。
同じ老人として、世間に訴えていた気がします。
⭐️今日のマーカーワード⭐️
「どんなことも、いつか丸くおさまる」
家族の大切さよ
日本でも昔は結婚しても家族と暮らす人が多かったのに、いつしか相手の親とは暮らしたくないという風潮が多くなった。この作品にもある意味家族に見放された方が出てくる。そのリアリティをここまで描けるなんてホントにすごいなぁと感じた。
どんな若者も生きていれば、誰しもいつしか老いる。その道は必ず用意されている。その道を歩く時、少しでも笑顔でいられたらどんなに幸せだろうか。
施設の人とのやりとりはドキュメンタリー
うーん、想像してたのと違って楽しめなかった。
老人ホームがちゃんと運営されているかスパイする老人ってのが企画。
施設の人とのやりとりはドキュメンタリー。
映画内でその説明が無く、それ抜きでも微妙だったかも。
ただ見終わったあとに親を大切にしようとは思いました。
企画賞
コレ思いついた人が偉い。
潜入ドキュメンタリーと、
施設の映画撮影が平行する、、、
初めは普通の映画に見えた。
それくらい素人(出演者)が自然。
個人への許諾は後からとったのだろうか?
そっちの作業の方が本編の撮影より大変そうだ。
昔ドキュメントやってる人からきいたが「優秀なドキュメンタリーはある程度結果を予定して作る」そうだ。
多少の軌道修正はあっただろうが、この設定はかなり美味しいですよ。
スパイといっても 身の危険は無し カメラ内蔵のメガネやペンなどの ...
スパイといっても
身の危険は無し
カメラ内蔵のメガネやペンなどの
小道具も使えてワクワクする
オーバー80じゃないけど
私もやってみたい
老人ホームでは
同年代で一緒に生活していても
家族と離れていると
寂しくなってしまうんですね
主人公のセルヒオさんは
とっても優しいので
ほどなくホームで人気者になる
おばあちゃん達の表情が
見るからに生き生きしてくるから
不思議
セルヒオさんのような
誰にでも優しくできる紳士が
ホームに時々短期泊付きで
訪問する機会があると
入居者達の刺激になってよいかも
老いと死と家族と孤独の、薄口で深い話。
死ぬ時は一人。何も持って行けないし、持って行く場所も無い。ただ生まれる前に戻るだけ。
生死感の違いはあれど、世界中の老人は同じ孤独を抱えている。家族と過ごしたい、って思うのはどうしてなんだろか。血縁者への依存なんかねぇ。家族は自分が生きた歴史そのものだからかねぇ。などなど。
微笑ましくも死の寂しさをコミカルで撹拌する、緩く刺さるドキュメンタリーは5カ国の合作。
老いと死と家族は、やはり普遍的なテーマの様で。
大阪市では公開が遅くなったけど、高評価。
今年95本目(合計159本目)。
さて、こちらの作品。マイナーな作品扱いなのか、扱っている映画館が非常に少ない状態でした。
多くの方、また、公式ツイッターアカウントで書かれている通り、ストーリー自体は架空なように見えますが、大半~ほとんどにおいてドキュメンタリーであるという点に驚きました。とはいっても、(広い意味での)スパイ活動である点は間違いはないので、肖像権の問題などから考えると、何らかの意味で事前の許可を取っているんでしょうね。
結局のところ、老人ホームというのは、息子・娘さんがいらっしゃる場合、「お金をかけてでも自分たちでみたい」と考えるか、「お金はかけるから自分はフリーにしたい」と考えるかに帰着されますが、そこに当然欠かせないのは、当該当事者の方の意思尊重です(意思尊重もできないほどの状態では無理)。これを無視して「自分の勝手で適当に突っ込んどきゃいいでしょ」というのは違うわけで(個人の決定権というものは、日本に限らずどこの国でも基本的に尊重されるべきもの)、その点では1月だったか2月だったか、同趣旨の映画(諸般の事情で老人ホームに紛れ込んで求愛するという映画。タイトル忘れた…)に似たストーリーです。ただ、こちらは完全(ほぼ?)ドキュメンタリーという点ですね。
公式アカウントでも書かれていましたが、「観たら親に会いたくなる」というのはまんざら嘘でもないと思いました。もっともこのご時世なので無理ですが…(まぁ、オンラインお盆とかよくわからないことを言われてもそれも困るけど…。うちの実家に限らず、そんなにPCをバリバリ使って設定してオンラインお盆なりオンラインクリスマスとかできる方、決して多くはないかな…と思います)。
ただ、その精神、すなわち、「親を大切に思うことの(当然当たり前な)ことを再認識させる」という点では、タイトルが一見ネタ的に見えるのですがそんなことはなく、こういう映画こそ多くの映画館で放映されれば…と思いました。
特に採点にあたって減点要素とするべき点はないので、5.0としました。
スパイ???かな
妻を亡くして新たな生きがいを探していた83歳の男性セルヒオは、80~90歳の男性が条件という探偵事務所の求人に応募し、採用された。その業務内容は、老人ホームに入居してる依頼人の母が虐待されているのではないかという疑念のため、その調査をするというもの。セルヒオはスパイとして老人ホームに入居し、ホームでの生活の様子を毎日報告することなるが、誰からも好かれる心優しい彼は、調査を行いながら入居者たちの良き相談相手となり悩みを聞いていたという話。
ドキュメンタリーらしいが、あまり面白いものではなかった。
入居者はみんな孤独、って事が言いたかったのかな?
入居施設に了解をとったドキュメンタリーなら施設に不都合な真実が有っても無い事になるよな、って下衆の勘繰りをしてしまった。
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