「施設にカメラ入ってるじゃん」83歳のやさしいスパイ kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
施設にカメラ入ってるじゃん
スマホを使いこなせればOK。よし、俺だって80歳過ぎたらスパイに応募しよう!特に気に入ったのがカメラ付きの眼鏡。そんなグッズを持つだけでワクワクしてくる。
80代というのは微妙だ。タクシー運転手には80超えの人が何人もいるし、そんな車に当たってしまったら客も可哀想だとは思うが、本人は元気のつもりなのだろう。見知らぬ人と喋るだけでボケ予防になるのだから・・・そうして、事故頻度が高くなってからの解雇。年齢制限を設けてほしいものだ。せめて80歳を上限に。
虐待とか盗難とかって本当にあったのだろうか。とにかくターゲットの一人ソニアを見つけなければならない。といったところからセルヒオの潜入捜査は始まるが、高齢女性たちとの交流によってどんどん仲良くなっていき、ついには結婚?!というエピソードまで。
毎日のように探偵事務所のロムロと連絡。そして日記記帳。83歳とは思えないほど綺麗な字で綴っていくセルヒオ。本人はもうスパイになった気持ちで人と接していくのだ。恋するベルタ、詩人のペティタがとにかくいいおばあちゃん。
本当にドキュメンタリーなのか?という疑問はずっと考えながらの鑑賞。カメラは施設内に入っているから撮影スタッフもいるはずで、セルヒオがこっそり部屋を探る様子さえ映している。職員だって文句を言わないのだから、ターゲットに対する虐待・盗難も最初からないことがわかっていたのだろう。
そうやって様々な準備をしていて、セルヒオが気づいたのは老人の孤独。家族が面会に全く来ない人や、そのまま死を待つばかりの人。家族に会いたい!泣けるシーン、微笑ましいシーン、偶然の産物ではあるけど、製作陣はこれを撮りたかったのだろう。老人ホームの実態を映し出すというのが本来の目的であり、これがスパイの役割だったんですね。職員たちにはどんな説明・説得で撮らせてもらったんだろう・・・気になります。