「83歳のミッション:インポッシブル」83歳のやさしいスパイ 玉川上水の亀さんの映画レビュー(感想・評価)
83歳のミッション:インポッシブル
妻を亡くしたばかりで新たな生き甲斐を探していた83歳のセルヒオが見付けた広告。
それには80~90歳の男性が条件という探偵事務所の求人が掲載されていた。
求人に応募して採用されたセルヒオに課せられた業務は老人ホームの内定調査で、そのホームに入居している依頼人の母親が虐待されているのかを探るもの。
ここからセルヒオの人生最初で最後の「ミッション:インポッシブル」が幕を開ける。
セルヒオにはちゃんとスパイグッズも支給され、仕事だから日々の報告義務もある。
何せ83歳の老人だから電子機器の扱いは不慣れで初めは手こずるものの、根が真面目なセルヒオは何とか任務を果たすべく内定調査していく。
だが心優しく、妻を亡くしたばかりで悲しみの中にいる彼は傷付いている人を放っておけず、調査の傍ら入居者たちの良き相談相手になっていく。
そして当然のことながら、彼はホームの人気者となってしまう。
本作はドキュメンタリーでありながら、まるでドラマのようで、ノンフィクションとフィクションの境が朧気になって、正に「事実は小説より奇なり」の感がある。
果たしてセルヒオはミッションをクリア出来るのか?
まるで子どもに還ったようにホームの生活を楽しく過ごしているように見える老人たちが心に抱えているものが、セルヒオを通して浮き彫りにされていく。
そして、そのことからは「人生を如何に生きて、終えるのか」ということと、「家族とは何か、そしてどう在るべきか」を我々に問い掛けているような気がする。
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