息子の面影のレビュー・感想・評価
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越境
これが現実に起きている出来事なのか、メキシコの内情がわからない、あの悪魔は所謂テロリスト集団としての理解で間違いないか、治安が悪いとはいえあんな好き勝手に国としての解決策すら見当たらない、息子は不法移民としてアメリカを目指したのか、父親が後悔の念を吐いていたが貧しいにしろ未成年の息子を簡単に手放してしまったようにも、国境線を越える前に警備隊側から危険な目に遭うならロバート・ロドリゲスの『マチェーテ』で暴れマクったデ・ニーロ的な悪役が、これがメキシコの実態ならば社会問題にもならない恐ろしい国だと、ショッキングな話のオチながら物語としては出来過ぎでリアリティに欠けてしまっている感も!?
【”米墨国境の高い高い壁”今作は、メキシコ人製作陣の当時のアメリカを統べていた男への激しい怒りを抑制したトーンで描いた作品である。そして、今でも、米墨国境の問題は、何ら改善されていないのである。】
ー 米墨国境を舞台にした映画は、御存じの通り傑作”ボーダーライン”シリーズや、名作「ノー・カントリー」、近年で言えば、リーアム・ニーソン父さんの「マークスマン」が脳裏に浮かぶであろう。
この諸作品では、苛烈極まるバイオレンスシーンが描かれている。
だが、今作品ではそのようなシーンは表立っては描かれない。しかし、エンタメ要素を廃したリアリズムある戦慄するシーンがしっかりと描かれている。ー
■メキシコの貧しい村に暮らすマグダレーナの息子、ルイスは、貧困から抜け出すため仕事と夢を求めて友人のレゴとアメリカへ旅立ち、そのまま消息を絶つ。
多くの若者が国境を越えようとして命を失うことが多いなか、マグダレーナは息子を捜すためにひとり村を出発する。
◆感想<Caution! 一部、内容に触れています。>
・今作は、上記に記した通りエンタメ要素がほぼ皆無の中、米墨国境の高い高い壁の実情をドキュメンタリー作品の如く描いている。
・ルイスと、レゴが乗ったバスに同乗したメキシコ人男性が語る、虐殺シーン。
ー 字幕が出ないのは、演出であろう。過剰な演出が無い分、恐ろしさが伝わって来る。-
・マグダレーナが一人、息子を探す旅の中で出会った、母を探すミゲル青年と同行するが、彼が”悪魔”により命を奪われるシーンは観ていてキツイ。
<マグダレーナが漸く、息子に会うシーンも切ない。アメリカで新たなる生活をすべくメキシコを出た筈の息子の姿。
今作が、現代の米墨国境の問題に訴えかける問いは深い。>
■”お前は、米墨国境の問題をどれくらい知っているのか!”という声が聞こえて来そうだが、私が勤務する会社はメキシコにも関係会社があり、実情は情報としては知っている。
だが、邦人は米墨国境付近に行くことは禁じられている。
それが、2023年の実態である事は、敢えて記載する。
米墨国境の問題は、何ら改善されていないのである。
国境線の悪魔
アメリカへ出稼ぎに行くと言ったきり行方不明となった息子を探しに旅立つ母親の物語。
友人と二人で出かけた息子だが、乗っていたバスが襲撃にあった可能性があり、さらに息子の友人の遺体写真が見つかるものの、息子の死の証拠は出ないことから、今も生きていると信じる母親だが…。
終始静かで陰鬱な雰囲気の作品。
セリフというよりも、暮れかけたメキシコの荒涼とした大地、風や虫、川などが奏でる自然音が美しくも侘しく語り掛けてくるような雰囲気。
ゆったりとした流れで言葉数も少なく、普通ならウトウトとしてしまいそうな作風だが、不思議と引き込まれる展開。道中で出逢う、息子を亡くした母親、そして息子と同い年くらいの少年がまた物語をダルトーンに彩る。作中、笑顔とか一瞬も無かったんじゃないかな。
そして終盤。字幕も出ない回想シーン。言葉はわからないなりに脳内翻訳して観てみるが・・・。
メキシコ、特に国境付近は治安が悪いとは聞くけど、ホントにこんなことが珍しくないのだろうか。恐ろしすぎる。
そしてメキシコって、悪魔が広く信じられているイメージ。幻覚的に出すシルエットはストレートすぎるけど、夜道にボワっと浮かび上がる前方車両の光とか、なんか凄く上手く悪魔を表現しているように感じた。ゾワゾワ。。
ここからの展開は目が離せないですね。そしてこの結末、彼女にとってはいったいどういうものだろうか?衝撃的です。
兎に角、おもいっきりガツンと殴られたような気分になる作品。
それなりにお客さんは入っていたけど、エンドロール始まっても誰一人立ち上がらない。
それぐらいの深い後味の残る掘り出し物作品だった。
逆「母を訪ねて三千里」ではありません。
いつも通りに前情報なしで鑑賞です。息子を探す・・・なるほど「母をたずねて三千里」の逆か・・・と勝手に想像してました・・・笑っちゃうくらいに全く違う作品です。はい。
「国境には悪魔がいる」観賞後に見た作品ポスターに描かれているコピーの一文。そうなんです、主題はそこなんです。本作は、きっと今も存在する社会問題(国家問題かな?)を描いたハードな作品なんです。
オープニングから続く緊張感はなんなんだろう?緊張感の種類は見始めと終盤で変わります。それはぜひ鑑賞して味わってほしいです。そしてなかなかの絶望感まで味合わせてもらえます。こんなにも綺麗で詩的な映像や描写で紡がれているのに、ただ緊張感と絶望感を増幅させるものでした。どこにでもいる一人の母親の目線で淡々と描いているからこそドスンと伝わってくるのでしょうね。こんな気持ちを作品内舞台の地域の方が日常的に味わってると考えると本当に恐ろしくてたまりません。そしてクライマックス・・・・これ、かなり辛いです。ちょっと心が「ポカン」となりました。それほどショッキングです。心張り裂けそうってこのことかと。
医師ムクウェゲさんの映画を見た時も思いましたが、貧困がもたらす政情不安や強大な暴力が生む悲劇は止まらないです。このような作品を見るたびに思うのは、そんな日常が存在する世界があるんだと言うことを知るべきだと。なぜ生まれているのか?なぜこうなってしまうのか?知ることから始まることもあると思うんです。美しい映像で詩を語るように突きつけられる辛い現実を、僕たちは受け止めなくてはならないのだと思うのです、一人でも多くの方が。
ある意味、ハッピーエンドでは?
被写体を、ほぼ、主要な二人だけに絞り込んだ、ドキュメンタリーのような映像からは、ただならぬ臨場感と閉塞感が感じられて、息苦しくなる。その一方で、美しく撮影された自然の描写からは、寓話的な要素を感じ取ることもできる。
特に、理解のできない言葉で語られるバスの襲撃シーンと悪魔の描写は、残酷でありながらも幻想的な美しさがあり、思わず観いってしまった。
語り口は淡々としているが、それだけに、被害者と加害者が入れ替わるラストの展開は衝撃的である。ただ、観客としては後味の悪いバッドエンドに思えるが、母親としてはどうなのだろうとも考えさせられた。
どんな苦難もいとわず、真実を求め、息子の無事を信じ続けた母親にとっては、たとえ悪魔に姿を変えていようとも、息子が生きてさえいれば、「良かった」と思えるのではないだろうか?
メキシコ!
悪魔はすぐそばにいる
人間の行動 < 自然の摂理
日本に生まれて良かったと思える作品
書類を読んで、同意するならサインを。
物語はけっこう淡々と進行していく。ただ、何もないわけではなく、失踪した息子に会いたい一心の母の愛は、無言の中にも熱くたぎっている。捜索を断念することの無念を語る別の母親に出会い決意を新たにしたり、また、こちらは母を探しているという、我が子と同年配の青年に出会って行動を共にしたり、けしてその道は平坦でもない。なにより、自分の命も危険に晒しながらの息子探しの旅なのだ。
そして、行く先のみえない停滞した空気を味わいだしたところでの、衝撃のラスト。ああ、あるよこの展開は。日本の時代劇でも見かけるよ、この末路。でも、今のメキシコではこれが現実にあり得る。この母は、なんと悔やんだらいいのだろう?どこに何を訴えればいいのだろう?このまま、「動かないで」いることが最良の選択なのか?
重いなあ、気分が。でも見応えはあった。
難をいえば、登場人物が把握し難かったこと。どうしても馴染みのないメキシコ人ゆえに顔認識が追い付かず、人物が混同する。急に出てきて、誰?とか、ああこの人はメインキャストじゃないのか、とか。一度、あらすじをおさらいしてからの鑑賞をお勧めします。
火炎
アリゾナで働くと言い友人と共に国境へ向かい連絡が途絶えて2ヵ月の息子を捜す母親の話。
捜索願いを出そうと友人の母親と共に警察に出向くと、2ヶ月の間に殺された人たちの写真の中に友人の姿が有り、息子の生存を信じて旅に出るストーリー。
更なる写真を見せられるも息子の死の確証は無い中、似た境遇の母親と出会い、助言を貰い旅を続ける主人公は、必死で有り悲痛であり、そして出会ったアメリカから退去してきた青年とのやり取りは、子を思う母親そのもので、これっぽっちも似ていないのに後ろ姿が息子と似ているとか…。
何語か解らないけれど、田舎の村で話を聞かせてくれた男の悪魔の話には字幕もなく…そこからのラストは悲しくでも掬われた感じもあり、何とも言えない後味が残った。
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