「【”米墨国境の高い高い壁”今作は、メキシコ人製作陣の当時のアメリカを統べていた男への激しい怒りを抑制したトーンで描いた作品である。そして、今でも、米墨国境の問題は、何ら改善されていないのである。】」息子の面影 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”米墨国境の高い高い壁”今作は、メキシコ人製作陣の当時のアメリカを統べていた男への激しい怒りを抑制したトーンで描いた作品である。そして、今でも、米墨国境の問題は、何ら改善されていないのである。】
ー 米墨国境を舞台にした映画は、御存じの通り傑作”ボーダーライン”シリーズや、名作「ノー・カントリー」、近年で言えば、リーアム・ニーソン父さんの「マークスマン」が脳裏に浮かぶであろう。
この諸作品では、苛烈極まるバイオレンスシーンが描かれている。
だが、今作品ではそのようなシーンは表立っては描かれない。しかし、エンタメ要素を廃したリアリズムある戦慄するシーンがしっかりと描かれている。ー
■メキシコの貧しい村に暮らすマグダレーナの息子、ルイスは、貧困から抜け出すため仕事と夢を求めて友人のレゴとアメリカへ旅立ち、そのまま消息を絶つ。
多くの若者が国境を越えようとして命を失うことが多いなか、マグダレーナは息子を捜すためにひとり村を出発する。
◆感想<Caution! 一部、内容に触れています。>
・今作は、上記に記した通りエンタメ要素がほぼ皆無の中、米墨国境の高い高い壁の実情をドキュメンタリー作品の如く描いている。
・ルイスと、レゴが乗ったバスに同乗したメキシコ人男性が語る、虐殺シーン。
ー 字幕が出ないのは、演出であろう。過剰な演出が無い分、恐ろしさが伝わって来る。-
・マグダレーナが一人、息子を探す旅の中で出会った、母を探すミゲル青年と同行するが、彼が”悪魔”により命を奪われるシーンは観ていてキツイ。
<マグダレーナが漸く、息子に会うシーンも切ない。アメリカで新たなる生活をすべくメキシコを出た筈の息子の姿。
今作が、現代の米墨国境の問題に訴えかける問いは深い。>
■”お前は、米墨国境の問題をどれくらい知っているのか!”という声が聞こえて来そうだが、私が勤務する会社はメキシコにも関係会社があり、実情は情報としては知っている。
だが、邦人は米墨国境付近に行くことは禁じられている。
それが、2023年の実態である事は、敢えて記載する。
米墨国境の問題は、何ら改善されていないのである。