「書類を読んで、同意するならサインを。」息子の面影 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
書類を読んで、同意するならサインを。
物語はけっこう淡々と進行していく。ただ、何もないわけではなく、失踪した息子に会いたい一心の母の愛は、無言の中にも熱くたぎっている。捜索を断念することの無念を語る別の母親に出会い決意を新たにしたり、また、こちらは母を探しているという、我が子と同年配の青年に出会って行動を共にしたり、けしてその道は平坦でもない。なにより、自分の命も危険に晒しながらの息子探しの旅なのだ。
そして、行く先のみえない停滞した空気を味わいだしたところでの、衝撃のラスト。ああ、あるよこの展開は。日本の時代劇でも見かけるよ、この末路。でも、今のメキシコではこれが現実にあり得る。この母は、なんと悔やんだらいいのだろう?どこに何を訴えればいいのだろう?このまま、「動かないで」いることが最良の選択なのか?
重いなあ、気分が。でも見応えはあった。
難をいえば、登場人物が把握し難かったこと。どうしても馴染みのないメキシコ人ゆえに顔認識が追い付かず、人物が混同する。急に出てきて、誰?とか、ああこの人はメインキャストじゃないのか、とか。一度、あらすじをおさらいしてからの鑑賞をお勧めします。
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