「宇宙規模の内輪揉め。作品の魅力が一歩足りないとも思えるが……」エターナルズ s kさんの映画レビュー(感想・評価)
宇宙規模の内輪揉め。作品の魅力が一歩足りないとも思えるが……
劇場公開時はタイミングが合わず館へ足を運ばなかったが、
ディズニープラスにて視聴開始したので早速鑑賞。
映像は美しい。
自然光の中に映る古代文明での一幕は、太古の神々を想起させる。
エターナルズの面々は、どいつもこいつも人間臭い。
作中に作られた存在と言っていたが、異常なまでに個性が強いし、自身の感情に強く支配されている。
そこが神の如き力を持つ彼らを、徹底的な人間ドラマに落とし込んでいる。
良作ではある。
各所の要点はストーリー上、一応説明されるため大きな矛盾はない。
特に戦闘要員と補助要員がいる理由が、「知的生命体の繁栄と進化を促す為」と言うのも面白い。
悪や暴力と戦うだけではなく、大事なのは生物の繁栄なのが魅力だ。
また、インフィニティーウォーのサノスの選択(生命の半数化)が、結果的にとは言え間違っていなかったようにも感じられるのも面白い。(セレスティアルズへの反逆?)
しかし……なぜか満足感は低い。
私の感覚が子供じみているからだろうか?
いや、そうではない。
私目線で、この作品にハマれなかった原因が大きく3つある。
1、時間感覚
2、ディヴィアンズ
3、突然のポリコレ要素
まず、1の時間感覚について。
エイジャックから受けついだ謎の玉によってアリシェムと交信したセンシ。
そこで間もなく終わる的な事を言われ、世界を救う為に各国に散らばった家族に会いに行くのだが……タイムリミットを明言されないせいで、悠長に仲間を集めているようにも見える。
「Day1」とか「残り何日」みたいに視覚化されていれば、崩壊に対する焦りや、逆に時間稼ぎをしている描写の説得力にもなったのに……。予告で「世界の終末まで、あと7日」とか出ていたのに、作中ではあまりそこにプッシュがなかった。
また、過去と現在の話を何度も行き来するため、今何の話の時間? と感じてしまう事もある。紀元前の話から現代へ。また1000年前の話……と、少し嚙み砕くのに時間が掛かる描き方だ。まぁ、それぞれのキャラの深堀をする為には必要だったのだろうけど……。
次に、2のディヴィアンズについて。
同じ親を持ち違うデザインによって作られた異形の使途。
繊維とオーロラのような色合いが美しさと凶暴性をしっかりと表していて、センスのよいクリーチャーデザイン。
しかし、今作ではエイジャックとギルガメッシュのパワーを吸い取り、知性・記憶・能力を手に入れるのだが……エイジャックを吸収した時点で、エターナルズと争う理由が消えるのではとも思った。
セレスティアルズによって作られた悲しい化物なのに、そこに知性が加わったにも関わらずドラマが生まれ無い。ただの悪役。倒される存在である。
命の価値を問うていた作品とは思えない乱暴な裁定だとも思う。
結局デザイン以外の魅力に欠け、今作のヴィランの役割を担うには至らず、セレスティアルズやイカリスに奪われてしまう。非常に残念だ。
最後にポリコレ要素について。
セレスティアルズが制作した知的生命体の繁栄を促す存在であるはずなのに、何故かマッカリは聴覚障害者なのだ。
そこに理由はあるのだろうか? そうであるならばミロのヴィーナスよろしく、それぞれが何か一つずつ失っているくらいの理由くらいないと必然性がない。
また、スプライトが子供のような外観である理由もない。繁栄の使途に子供のような外観が必要な理由もない。設計ミスか? 拗らせてるのだから、明らかに失敗だろ。
一応、ファストスのゲイ要素は何となく不死であるが故の指向とも言えるので、個人的には問題ないかと思う。どちらかと言えば、ファストスに広島原爆について「間違っていた」と言わせたのが凄い。アメリカ映画を越えてきたなと。
結局、神の使途なのに、ポリコレに準拠するような要素を入れている正当性を感じないのだ。
ホークアイのマヤのように、義足である強みを出したり、喋れない事でのコミュニケーション不全による擦れ違いなどがあれば、まだ良かったのに……。
あと、イカリスの泣顔懺悔からの太陽突入は、何とも言えない気持ちになった。もっと綺麗な落としどころを目指してくれよと。
……まぁ色々書きましたが、非常に良い空気感の映画ではあった。
良くも悪くも、10人以上の新規キャラを、それぞれ動かし、葛藤させ、人間として生かす。
そして、今後のMCUの銀河的展開への序章としては、それなりの高水準な映画だったかと思う。
次回のソーの映画にリンクするのかな? ギャラクタスまで見越しているのかな?
まだまだMCUの世界は広がりを見せる。
その規模を銀河の果てまで広げてくれるような作品だった。