劇場公開日 2020年12月11日

「終わりに臨む時」ミッドナイト・スカイ しずるさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5終わりに臨む時

2020年12月20日
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悲しい

この物語は、確定した破滅を前にして、人がどう生き、どう死ぬか、という、終末ものの一種である。
何かしらの原因で、人類の生きられない星になりつつある地球(勝手に核戦争かな?と想像した)。極地に老人が一人、人気のない基地で過ごしている。末期の死病に冒されながら、ある目的の為、必死に命を繋いでいる。他の人々は地下に避難したようだが、それでも与えられる猶予は長くはないらしい。
一方、人間の移住地候補として、木星の衛星の調査任務を終えた宇宙船が、帰還の途に着いていた。地球に戻れば死、引き返して移住地で生を全うしたとしても、僅か数名の人類に未来は無いだろう。
告知を受けた末期患者のように、命のタイムリミットを眼前に、各々の選択の拠り所となるのは、他者の存在だ。死を前にして、自らの生にせめても意味を見出だそうとする時、自己完結できず、他者との関係にそれを求めるというのは、どこか哀れで、弱々しく、健気で、愛おしい。
人は一人では生きられず、死もまた一人では受け入れ難いのかもしれない。

物語の過程で、老人と宇宙船、各々に困難が降り掛かるのだが、いまいち臨場感に欠けるというか、取って付けた感が拭いきれない。
孤独や寂寥の感覚、感情が重要な作品だと思うが、無音や間合いを上手く使うなど、もう少し表現を工夫したら更に良くなるのでは、という部分もある。
そういう意味で、人が立ち去り、明かりも落ちたコクピットと、応えのないノイズの寂しさだけが残るエンドロールは、人類が退場した後の世界の静寂を思わせて、嫌いじゃない。

しずる
しずるさんのコメント
2020年12月25日

>Yoneoさん

コメントありがとうございます!

大作SFの派手さはありませんが、空気感と情感に溢れていますね。

私は、最後に娘が名乗るまで、少女は、まだ産まれぬ娘のお腹の子の精神体的なものかな、と思っていました。
ヒヤシンスとか、花の名を候補に挙げたりしていたので…。

オーガスティンは、残った命の使い道にも、最後に傍にいて欲しい相手にも、共に暮らせなかった娘を望んだんですね。
子供を持つ親世代の胸にこそ迫る作品ですよね。

しずる
Yoneoさんのコメント
2020年12月24日

映画も実話も全ては人間ドラマだよね。
たくさんの人生、たくさんのストーリー。

クルーニーと同世代からかな、、名乗れなかった実の娘、アイリスへの愛情と信念のため家族と過ごせなかった男の後悔。

実は泣けます。

映画の中のあの子供、アイリスは幻想ですね。

美しい。
ミッドナイトスカイ、確かにお約束みたいなシーンもありましたし、酷評も多いけど、この映画は大人のもの。

ステレオタイプのミーハーさんには分かりません。

思慮深き大人の方、ぜひ味わってください。

Yoneo