劇場公開日 2020年12月25日

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「【伝え続けること、警鐘を鳴らし続けること】」FUNAN フナン ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0【伝え続けること、警鐘を鳴らし続けること】

2020年12月26日
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極左にしろ、極右にしろ、宗教の原理主義にしろ、人種や民族主義も、帝国主義も、ナチズムも、ファシズムも、全体主義も、行動パターンに大差はない。

歴史が証人だ。
暴力的で反知性的。

少し異なるところがあるとすれば、極左思想は反知性的と思われることを嫌うためか、映画でも何度か出てきたが、「自己批判」という言葉をよく使う。

クメール・ルージュは、カンボジアで一時支配的になった勢力だが、思想的には極左で、強烈な反植民地・反帝国主義をベースに毛沢東思想を独自に解釈したイデオロギーの集団だ。

また、カンボジアが長らくベトナムに従属的だったことから、反ベトナムの民族主義思想も混ざっており、途中、ベトナムから砲撃を受ける場面があるが、同時期にベトナム・カンボジア戦争を戦っていたことも分かる。
このベトナム・カンボジア戦争の敗走で、クメール・ルージュは最終的に解体されることになる。

そして、この後、敵討ちのように、中国がベトナムに戦争をしかけるが、中国が敗走する様は、映画「芳華」にも描かれていて、このインドシナ半島の戦禍による悲劇は、その後のカンボジア内戦とともになかなか終わることはなかった。

映画は、どちらかというと絵画的なタッチで、素朴な感じが郷愁を誘い、暴力的で凄惨な場面は抑えられているものの、クメール・ルージュ支配のカンボジアの人々の悲劇を十分示唆する内容になっている。

全てのものを取り上げられる。
自由も身につけている小物も。

言いがかりのような暴力。
虫でも殺すかのような殺害。
レイプ。

子供に対する洗脳。

ただ、こうした悲劇は、この時代のカンボジアに限った話ではあるまい。

アフリカのボコハラムなどは代表的だと思うが、先般、記録ビデオが話題になった、セルビア内戦時のイスラム系住民の虐殺、ISも、中国のウイグルやモンゴル、チベット系民族への弾圧、香港問題、台湾への恫喝、ロシアの反体制政治家やジャーナリストの暗殺や未遂だってそうだ。

民主主義を標榜している先進国にだってリスクの種は多い。

アメリカの白人至上主義や、欧州の極右、ポピュリズムは、暴力的で反知性的だ。

日本にも嘘つきの政治リーダーが多くいる。
その上、怒りをあらわにしがちで、恫喝はするが、自分の言葉で語ることも出来ないクソバカだ。
それを見て嬉々としているもっとバカも多い。

僕達には頭を抱えたくなるような不都合な事実が、そこかしこに転がっている。

この作品が、大きな賞を獲得したのは、歴史を記録し伝えるという他に、世界に向けた警鐘の意味もあるように感じる。

見て見ぬ振りをしないで、よく考え続けなくてはならない。

そう言えば、「えんとつ町のプペル」でも、よく考えることが重要なのだと感じたが、反知性主義と戦う最大の武器だ。
そもそも、反知性主義と学者やメディアは言うが、これは主義ではない。
単なるバカということだ。

ワンコ