劇場公開日 2020年12月11日

「五代友厚の努力と成し遂げたことが伝わらない」天外者(てんがらもん) 魔星さんの映画レビュー(感想・評価)

2.5五代友厚の努力と成し遂げたことが伝わらない

2021年1月20日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

難しい

映画、エンターテインメントではなかった。
五代友厚という人物をこの映画で初めて知ったのですが、この方の目的はわかるし苦労もされたのだろうということも察します。
しかし、映画からはそんなもの伝わりませんでした。

史実とは違うオリジナルパートが無駄に長いための弊害なのか、エピソード一つ一つの内容が薄く映画というよりは、歴史の授業を受けている感覚?教科書でさらっと紹介して「この人名はテストに出るからね。人名だけ覚えてね」って感じですかね。

序盤は五代友厚の人物像を知るパート、中盤は五代友厚の目的を明確化するパート、終盤は実力を付けた五代友厚が日本のために目的をもって動く姿を見せたかったのかな、と感じました。うまく見せられているかは置いといて・・・

最初にも書きましたがエピソード一つ一つが薄く説明も足りないので見ているほうには、いまいち伝わらないんですよね。起承転結の「起」または「起承」だけずっと見せられてる感じ。せめて「結」を見せてくれないとすっきりしないし、ただでさえ説明が足りてないんだから結果から目的を推察させてくださいよ。
この残念さは終盤になるほど顕著になり、一番の見どころである筈の五代友厚が日本のために動いているエピソードが本当に薄いんですよ!
いや、ここじゃん!ここを一番見せるべきじゃん!ここで五代友厚の凄さと成したことを見せつけるべきじゃん!序盤で女と乳繰り合ってるところカットしてでもしっかりやるところじゃなかったのか!
五代友厚のことは本映画で初めて知った私ですが大きく不満を覚える展開でしたね。

そんなエピソード薄味演出のために終盤の大阪商人に対しての演説でも特に感動しないし、なにより演説内容がスカスカフワッフワで何も伝わらない。
「俺を信じろ!俺についてこい!」ついていくわけねーだろ。
なんで急に精神論なのよ。序盤での具体的な数字に基づいた日本のこれからなすべきとを記した上申書はなんだったのよ。
ここじゃん!一番数字が好きで打算的な商人に数字を示せよ!感情先走らせて精神論すな!
あんな演説じゃ外野から見ている私の心も動かないんだから、当の商人たちも心動いてないですよ。もうちょっと原稿を練っていただきたかった。

五代友厚の葬式にて参列者が4500人で、嫁が「ホンマにあの人は天外者やなぁ」で終わるんですが、伝わってないのよ!感動が!作品内で五代さんメチャメチャ嫌われてましたやん。志が理解されず誤解されて、ハチャメチャに嫌われてましたやん。いつ仲直りしたん?
まあ、大阪商人を説き伏せてからなんでしょうが、じゃあ作品内でやりなよソレを!足りてないんよエピソードが!4500人も参列するに足るエピソードがないのよ!
エピソードの上澄み掬うんじゃなくて、しっかり一つのエピソードを深堀してもらえれば説得力も増したのに、本当に残念!
「ホンマにあの人は天外者やなぁ」もギャグに聞こえるわ。”天外者”て言葉は皮肉で使われてるのかと錯覚しますわ。

あまりにも映画からは人物像、成したことなど凄さが伝わらなかったので自身で調べさせてもらいましたが、知れば知るほどなんでこんな残念な作品になってしまったのかと首をかしげるばかりです。
しかし、五代友厚という人物を知れたことは大きな収穫でした。

返す返すも残念な作品。
作品テーマ、演者の演技どれをとっても一級品なだけに残念。
この場合は監督が悪いのかしら。誰だ監督は。
田中光敏か。そうかわかった。

 「ホンマに田中光敏は天外者やなぁ」

魔星