この世界に残されてのレビュー・感想・評価
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繊細で切ない想い
その年頃の少女特有の少し拗ねたような言葉遣いや態度、ふと見せる大人びた表情や仕草、大人へと成長していく少女を、初々しく艶やかな魅力でアビゲール・セーケが主人公クララを演じていた。
医師アルド役をカーロイ・ハイデュクが、優しさ故揺れる二人の心情を、穏やかで繊細に演じていた。
美しく透明感溢れた映像と、ラストの頬を伝う涙がいい。
映画館での鑑賞
曖昧な境界線
クララとアルドとの間にある曖昧な境界線が、丁寧に描かれており、それが切なかった。親と子のように大切に思いながらも、同時にお互い異性としての感情が入り混じってしまう。機械のようにハッキリとは区別できない、人間味がある感情の揺れ動き。
アルドに「口紅が濃いんじゃないか?」と言われた後、家を出てからこっそり唇を拭うクララがとても印象的でした。
【ハンガリー動乱前の話】
第二次世界大戦が終了し、ほんの短い間の平穏な日々だったのだろう。
ホロコーストで家族を失った悲しみを、お互いに埋め合わせようとするクララとアルド。
共産党の支配が強まって、別な監視が強まっても、信教を理由に弾圧を受け、虐殺を受けるという状況ではなかった。
そんな多くの制限があるなかでも、クララとアルドの心の揺れが大切に描かれているし、僅かずつだがクララが成長していく様もよく見つめられていると思う。
スターリンが死に、ハンガリーでは自由化を求める活動が活発化する。
クララのボーイフレンドの喜びと裏腹に、アルドは不安を隠さない。
再び、ハンガリーはハンガリー動乱と呼ばれる混乱の時代に突入し、ソ連が自由化デモを弾圧する事態となり、本当の自由化は、社会主義崩壊まで待たなくてはならない。
ブダペストは、本当にきれいな街だ。
こんなところで、多くのあなたが奪われたとは思えないほど、素敵な街だ。
是非、訪れてみてください。
嘘つきアルド
1948年、ソ連の衛星国時代のハンガリーで、ホロコーストにより両親を失った16歳の少女クララが、42歳の婦人科医アルドと疑似父娘になっていく話。
1度診療を受けただけだし、特にこれといった出来事もないのに、急に懐く描写に不安になる始まりw
両親が収容所に連れて行かれたことがどういうことかは判っているけれど、その先は受け入れられないクララ。
一見冷たく独りで生きる覚悟をしている様にみえるアルドも、独りを恐れるクララを受け入れて関係が始まって行く。
共産党の色が濃くなって行く世情の中で、成長して行くクララと、彼女の交友関係に心配するアルドはまるで本当の父娘の様で、自分から追っかけたのに疎ましく思っているかの様なクララの振る舞いとか、何とも微笑ましい。
どこかで、離れ離れになることを恐れつつも、それでも信頼し合う姿はとても温かく、優しく良い話だった。
共鳴できず…
戦争孤児となった主人公の少女クララが、通院する婦人科の医師アルドに父親の存在と重ね想いを抱き親代わりとなっている叔母を通して生活を共にしていく。
アルドは寡黙でお堅い人のように見えたが生活を共にしていくうちにアルド自身も妻子を失いクララ同様心に大きな傷を負っていく事に気づき共鳴していく。
互いに大きな傷を負い互いに慰め合おうとするが年齢差から一線は越えられない関係にどうしても壁を感じ合う。
最終的にクララはアルドに恋をするが、アルドは最後まで壁を作り発展する事はなく、クララは最後は同級生と結婚し作品は終わる。
クララとアルドの心理描写がメインとなる作品でドラマチックな作品ではないため合わないと非常に眠気を誘われる。
個人的にはあまり2人の掛け合いに心奪われる事なく、共鳴できず淡々と作品を見る事しか出来なかった為退屈ではあった。
作品の空気感
クララが少女から大人へと成長していく過程がビジュアルとしてもしっかり伝わってくる。
医師のアルドのなんとも言えない落ち着いた雰囲気が良い。
過去の出来事に似てる夢をみるのは、自分でも気づかない内にトラウマや傷になっているなあと思うので、クララの見た夢を思うと胸が痛んだ。
生き延びたからこそ孤独
ホロコーストを生き延びた対価は家族を失った孤独。あまりにも惨いけど、
このような状況に置かれた人はきっとたくさんいたのだろうな。
孤児であることを頑なに認めない主人公の少女クララの姿が切ない。孤児であること=両親の死を認めることだからだろう。
残された方が辛い、そう思ってしまっても仕方がない。
そんなときに父の姿を重ねられる医師アルドと出会い、孤独で暗いクララの世界に少しだけ色が付いたような印象だった。
明確にでは無いのだけれども、終わりの方まで書いてしまうと中にはネタバレと感じる人もいるので、続きはちょっと下げて書きます。
終わり方はちょっぴり切なかったな。幸せであるけど、解釈によっては再び残されることになってしまう。でも、そのシーンの描写があるからこそ、クララにとってアルドがかけがえのない存在だったと同時に、アルドにとってもクララがとても大切な存在だったことがより強調され、二人の関係性がより美しく見えた。
友人関係か親子関係か、もしくは…
まず単刀直入に『この世界の片隅に』をパクったような邦題がダサい。鑑賞した後だと、この邦題を付けたニュアンスはなんとなく理解できるものの、にしてもイマイチ。
ホロコーストで家族を失った、ハンガリーの42歳の婦人科医師と16歳の少女の心のつながり。出番当初は、幼さが抜けきれない雰囲気を醸し出していた少女が、医師と出会い生活を共にしていくうちに、大人の女性のそれになっていく。一方の医師も、最初こそは最低限の触れ合いしかしなかったのに、日を重ねるうちに少女に対する態度が変化していく。
両者の関係は、果たして友人なのか親子なのか、もしくは…といった、今にも一線を超えそうで超えない関係がポイント。これをピュアと感じるか、じれったくてイライラするかは人それぞれ。
正直言って物語の吸引力は薄いし、背景でチラつく戦後ハンガリーを覆うスターリン圧政を把握しておかないと、途中で付いて行けなくなる可能性が。ラストは一応のハッピーエンドを迎えるも、どこか不穏さも感じさせるあたりは、動乱に翻弄されていく同国の将来を暗示させるといえるかも。
余談だが医師役の俳優は、ハンガリーで起こったシリアルキラーの連続殺人事件を扱った映画で犯人役を、そして少女役の女優はその映画で犯人に殺される女性を演じていたとか。それを踏まえると、本作での役柄との対比が効いている。
繊細に描く、言葉のない関係
第2次世界大戦後、ホロコーストを生き延びたある男と、少女の出会い。
静かなブダペストの街に残す二人の奇跡。
恋か、愛か、それとも情か?
名前のない感情を、小説のような丁寧な描写で紡いでいく。
観終わった後、じんわり、暖かく、そして希望に満ちる名作!
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