「前半がもうひとつ」アイの歌声を聴かせて Masuzohさんの映画レビュー(感想・評価)
前半がもうひとつ
AI(人工知能)
人間の知的ふるまいの一部をソフトウェアを用いて人工的に再現したもの
経験から学び新たな入力に順応することで柔軟にタスクを実行する
ディープラーニングと自然言語処理による学習を応用すると
大量のデータからパターンを認識させることでビジネスや生活における
様々な難しいタスクをこなせるようトレーニングすることができる
昨今急速に一般化が進むAI
そんなテーマで描かれた映像作品等はこれまでも
枚挙にいとまがないところですが
そんな中公開された今作
コロナ禍により映画も公開時期が前後した
影響もありますが丁度同時期に公開された
ロン・僕のポンコツボットという作品と
日米のAI観が比較されている感じで面白かったです
星間エレクトロニクスの企業城下町にある景部高等学校
そこに転入してきた芦森詩音は初対面の主人公
天野悟美に突然幸せ?と尋ねてきます
悟美の母は星間のAI研究の第一人者で出かける前
それとなく詩音がAIロボットで実験のために
送り込まれてきたことをすぐ察知し
急に歌い始めたりするなどし
周囲の人間にすぐバレますが母のために
秘密にしてもらえるよう頼みます
この導入部分がすっごくモタモタしており
その割に奥行きがなくきつかった
そもそも題名「アイの歌声を~」なら
詩音じゃなくてアイでよくないでしょうか?
設定に凝りすぎてる割にあんまりストーリーに
乗ってこないからすごく見にくいんですよね
それでいて起こるエピソードはどれも浅く
AIがどうこうというより学園ものの
よくあるエピソード感がぬぐえません
主人公の悟美もなんかクラスで嫌われ
いじめを受けているような設定のようですが
徹底しておらずキャラクターがボヤけたままで
言動に重みが感じられません
なんというかシーン一個一個が1クールのアニメの
1エピソードをダイジェストでいきなり
くっつけてる感じでしょうか
それでいて
なぜ詩音は悟美をよく知っていたのかという
点については後半に向けて非常に感動的な
展開を見せます
複線的な回収もしっかり行われていくんですが
やっぱり前半のモタモタした展開を引きずって
いまいち残念な感じでした
歌って踊りながら柔道するシーンとか
部分的にはいいんですけど
前述しましたがこの作品でのAIは
具体的に人間のために何かを為させる感じではなく
ただ友達のように人を幸せにするといった感じで
非常に抽象的な存在意義を与えられています
言い換えれば特に何も決まってない感じ
それに比べるとロンのほうのAIはSNS的に
より具体的に人間の役に立つよう使役的に
働いておりずいぶん違いを感じました
もちろんアメリカのAIロボは無機質な感じ
日本のは美少女という差異もあります
お国柄が出ていると言ってもいいのでしょうか
具体的にどうさせたいかという点において
差があるのは開発競争という点においては
ちょっと心配になるところでもあります
どちらも観てみてそんな比較もしてみるのも面白いかも
しれませんね