「名演に感動、悲しいけれどありがとう」映画 太陽の子 umekkoさんの映画レビュー(感想・評価)
名演に感動、悲しいけれどありがとう
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葛藤を抱えて戦地へ戻り、その後二度と戻らない姿が春馬くん自身と重なり辛かったのですが、覚悟を決めて観に行きました。
被爆国である日本が、実は太平洋戦争末期に原子核爆弾の開発を試みていたという知られざる事実を背景に、その開発に没頭しつつも、次第に自分が生み出そうとしている物の恐ろしさに気づいていく修をはじめ、戦時中における3人の若者の信念、葛藤、家族や愛する人を思う気持ちがとても丁寧に、綺麗に、繊細に描かれていました。
肺の療養のため一時帰休した裕之が笑顔を見せつつも、戦地の話しを一切しない様子を案じる母。
防空壕に避難した際に、鋭い目つきで空襲の様子を見る裕之。その様子から戦地での壮絶な経験を察する世津。
戦地へ戻りたくない、けれども自分だけ逃げるわけにはいかないという葛藤から海に身を捧げようとする裕之。それを必死に止める修とふたりを抱きしめる世津。
生々しい戦場シーンはなくとも、戦争がもたらす惨さがしっかりと描かれていたように感じました。
裕之が戦地へ旅立つ前日、縁側で戦後(未来)を見据える世津に諭され、2人が圧倒された様子で同時に「はい!」と言ってしまうシーンは微笑ましかったな。
かつて戦争によって多くの人が命を落とし、家族や愛する人を亡くした事実があったことを、戦争を経験した人が少なくなり、テレビ番組で戦争を取り上げることが減り、SNSやYouTubeなど見たいメディアを自分で選べるようになった昨今において風化していくことがないよう、ぜひ多くの人に観てもらいたいと感じた映画でした。
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