「因果応報について深く考えさせられる高校生版『運び屋』」THE CROSSING 香港と大陸をまたぐ少女 よねさんの映画レビュー(感想・評価)
因果応報について深く考えさせられる高校生版『運び屋』
主人公は深圳から香港の高校に通う女子高生ペイ。時折香港で別の家庭を持つ父の元をフラッと訪ねるが、普段は毎夜麻雀三昧の自堕落な暮らしを送る母と2人暮らし。そんな複雑な家庭事情を抱えるペイの夢は親友のジョーと日本へ旅行に行くこと。放課後にバイトをしたり手製のスマホケースをクラスメートに売ったりしてコツコツと小遣いを貯めながら放課後のわずかな時間を楽しく過ごしていた。ある日学校をサボってジョーと一緒に参加した船上パーティでハオと彼の仲間達と出会う。ジョーがハオと付き合い始めたのを横目で見ていただけのペイだったが、ふとしたきっかけでハオ達が密かに手を染めていた深圳へのiPhone密輸の片棒を担いでしまう。バイトとは桁違いの収入を受け取って味をしめたペイはその後も密輸を手伝い、少しずつ手口が大胆になっていく・・・という女子高生版『運び屋』。
複雑な家庭環境と社会情勢の中で辛うじてバランスを保っていたキラキラした放課後が少しずつ崩れていく様子を淡々と見つめるドラマに『82年生まれ、キム・ジヨン』や『はちどり』といった今年公開された他作品と通底する深い陰影が宿っています。『運び屋』にあった突き抜けた明るさは殆ど泣く、因果応報の果てに失うものと手元に戻ってきたものが果たして等価と言えるのかを深く考えさせられる小品です。
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