ヒトラーに盗られたうさぎ

劇場公開日:

ヒトラーに盗られたうさぎ

解説

ドイツの絵本作家ジュディス・カーが少女時代の体験を基につづった自伝的小説「ヒトラーにぬすまれたももいろうさぎ」を、「名もなきアフリカの地で」のカロリーヌ・リンク監督が映画化。1933年2月。ベルリンで両親や兄と暮らす9歳のアンナは、ある朝突然、「家族でスイスに逃げる」と母から告げられる。新聞やラジオでヒトラーへの痛烈な批判を展開していた演劇批評家でユダヤ人でもある父は、次の選挙でのヒトラーの勝利が現実味を帯びてきたことに身の危険を感じ、密かに亡命の準備を進めていたのだ。持ち物は1つだけと言われたアンナは大好きなピンクのうさぎのぬいぐるみに別れを告げ、過酷な逃亡生活へと踏み出していく。アンナの父を「帰ってきたヒトラー」のオリバー・マスッチ、母を「ブレードランナー 2049」のカーラ・ジュリ、心優しいユリウスおじさんを「お名前はアドルフ?」のユストゥス・フォン・ドーナニーが演じた。

2019年製作/119分/G/ドイツ
原題または英題:Als Hitler das rosa Kaninchen stahl
配給:彩プロ
劇場公開日:2020年11月27日

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(C)2019SOMMERHAUS FLIMPRODAKTION GMBH/LA SIALA ENTERTAINMENT GMBH/NEXTFILM FILMPRODAKTION GMBH&CO.KG/WARNER BROS.ENTERTAINMENT GMBH

映画レビュー

4.0拍子抜けするほどのポジティブ感が、コロナの時代にちょうどいい

2020年11月30日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

楽しい

幸せ

ナチスドイツ期、ユダヤ人少女が家族と共に亡命して外国を転々…と聞けば深刻で重い話かと身構えそうだが、拍子抜けするほどポジティブな感覚が優勢だ。原作は絵本作家ジュディス・カーが少女時代の体験を基にした小説。父親がヒトラーへの痛烈な批判を展開してきたせいで弾圧される前に、家族共々スイス、仏、英国へと移り住む。

アンナ役は候補約千人から見出され映画初出演で主役を射止めたリーバ・クリマロフスキ。「キック・アス」の頃のクロエ・グレース・モレッツか、ジュリエット・ビノシュの子供の頃を思わせる利発そうな顔立ちで、兎のぬいぐるみや住み慣れた家など大好きなものに別れを告げる姿が切なくも愛らしい。外国の言葉で当然苦労するし、貧しい暮らしも変わらないが、前向きに努力して克服する。受難の日々というより家族総出の冒険生活風で、そんなポジティブさがコロナの暗い時代にちょうどいい。あと、スイスの山村からの景観が絶品。

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高森 郁哉

4.0少女のみずみずしい視点が貫かれた秀作

2020年11月24日
PCから投稿

そのしなやかな感触に心奪われた。ナチスが勢力を拡大する時代を描いた作品なのに、ここには軍服を着た兵士の姿は登場しなければ、目の前で人が殺されることもない。国を転々とする主人公にとって、祖国ドイツの状況は手紙や電話によって知らされるのみ。かくも本作をあくまで少女のみずみずしい「旅人」としての視点で貫き通したところに感服する。これは彼女が何を見つめ、何を感じ、いかなる旅路を経て少女期を送ったのかを、感性豊かに描いた作品。絵本作家ジュディス・カーの作品に親しんで育った人にとっては感慨もひとしおとなるはずだ。いかなる異世界にも意欲的に飛び込みつつ、同時にその文化を客観的に見つめようとする意識。どんなに暮らしが困窮しようとも、家族がいつも共にあろうとする姿勢。そのすべてに彼女の生きざま、そして絵本作品に通底するものを感じる。度々口にする「アウフヴィーダーゼーン(さようなら)」という言葉が胸に残った。

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牛津厚信

4.0棲かを追われた少女

2024年2月27日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD

知的

幸せ

ドイツベルリンで
裕福に育つ少女アンナ
政権がヒトラーに変わり行く時代
ユダヤ人の父
仕事がらナチスに批判する記事を執筆
したためベルリンの棲みかを
離れることになる
そしてスイス、フランス、最終的に
ロンドンに行くことになる
賢いアンナは何処の国に行っても
新しい友達を作って学校生活も
うまく順応していく…逞しさ。

アンナは自由に物事を考えることが
できるのは資質もあったけど
幾つもの国街で暮らしたことも
貴重な体験になったはず
常に弾圧を受けてきた
ユダヤ人の柔らかさの様にも感じた

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しろくろぱんだ

2.0「象徴」とするには微視的に過ぎないか。

2023年3月13日
Androidアプリから投稿

周知のとおりのナチスによる迫害を免れるために逃避行を余儀なくされたユダヤの人々は、決して少なくありません。
充分な計画や準備に基づくものではない訳ですから、持ち出すことのできる資産も限られたことでしょう。
なかには、換金する暇もなく、経営していた工場やその設備をそのままに、着の身着のままで逃げ出した人もいたことでしょう。
そんな状況では、ウサギのぬいぐるみを持ち出せなかったことが、どれほどの痛手になるのか、評論子には、にわかには理解し難いところです。
もちろん、少女にとっては、かけがえのない大切なものであったことでしょう。
しかし、生業の基盤までうち捨てて逃げなければならなかった人もいたであろうことにも考えを及ぼすと、ナチスの侵奪の象徴とするにしても、「ウサギのぬいぐるみ」は、一本の映画の素材として取り上げる…ナチスによる迫害の「象徴」とするには、あまりにも微視的に過ぎるように思われて、仕方がありません。
その根幹的な一点で、本作は、すでに残念な一本となってしまいました。評論子には。

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talkie