ウルフウォーカーのレビュー・感想・評価
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アート
『ブレンダンとケルズの秘密』『ソング・オブ・ザ・シー海のうた』と比べると背景が手描きなタッチに変わってますね。全然違うけど、ジブリのかぐや姫の物語を連想しました。めちゃくちゃ緻密で美しい。でもキャラクターは簡略化されてて衣装も単色。日本人には描けない本当に美しい絵本の世界。私は好き。私は大好き。
でも、、色彩や作画の美しさを喜ぶのは大人だけな気がするんだよね。これは子どもに聞かなきゃわからないけど。小さい子をターゲットにしているなら、本当はもっとシンプルなものが大事なんじゃないかな。
まあ見に行った映画館には30代〜50代の人しかいなかったし、アート作品としては満点なんです。
日本アニメが大好きだけど、他の国の特色のあるアニメも残っていって欲しいし、映画館で公開されて欲しいわ。
美しく印象的な映像で描かれた絵本
自然と人間との衝突。不思議な伝承と魔法の世界。
物語はジブリのもののけ姫のようでもあり、ディズニーのモアナと伝説の海のようでもあり。
親子の対立と愛情。ハラハラドキドキ楽しめました。
子供が見たら心に刻まれて夢の中に繰り返し出てきそうな印象的な映画でした。
ポストジブリと評されるカートゥーン・サルーンの最新作、「ブレンダン...
ポストジブリと評されるカートゥーン・サルーンの最新作、「ブレンダンとケルズ」「ソングオブザシー」に続くケルト三部作の完結編ですね。
もうとにかく美しい。
絵本がそのまま飛び出したような色彩と、美しいケルト音楽で織りなす世界がとにかく美しいのです。
独特なグラフィックとタッチは奥行きがあり、終始目を奪われていました。
物語は二人の女の子と、その成長を描いた作品。
女の子の目線で描かれている為複雑さは無く、とても真っ直ぐな気持ちで紡がれます。
しかしながらその物語は意外と深く、人間と森とのあり方や女性の開放といったテーマも見られ、大人は観ていて色々考えさせられる部分もあると思います。
その独特な作画もですが、物語を彩るKiLAの楽曲がどれも素晴らしく、とても作品に深みを出していました。
またAURORAの歌う挿入歌も素晴らしいんですね。
楽曲が物語に実にフィットしており、このシーンは忘れられないくらい幻想的でした。
話はテンポも良く最後まであっという間に過ぎ、何とも心温まる作品でした。
また、どうしてもテーマや狼というモチーフから「もののけ姫」を想起させる(監督自身がもののけ姫のような作品にしたいとコメントしてるからしょうがないかと…)部分はありますが、これはトム・ムーアなりのアンサーと見ることもできるのではないでしょうか。
今度は是非とも子どもらと一緒に観てみたいです。
いや、驚いた 💕
古代ケルトの伝承を基にした作品ということに、期待というか興味を持って、観賞。
絵の美しさ、音(sound & music)の美しさに魅了されました。
自分の感情に素直で やんちゃな ロビン。お父さんは、本当にハラハラ落ち着かないよね。心配でたまらない。親の立場としては、それも解るぅ~ と、一緒に ハラハラしてしまった。クレヨンしんちゃん的なヒロイン。
そして、護国卿の行動の動機が、己の私欲ではなく『主の導き』という部分。中学生以上なら、歴史や宗教などの背景を 少し学んで(軽い雑学程度で)観ると、理解が深まると思います。お父さんの心配の大きさも、現代の日本社会での心配とは こういう部分で また違うんだろうと思える。
安心安全の策が《 壁 》というのは、また いろいろ想ってしまいますね。
いや、それにしても。
“ もののけ姫 ” って、和製ウルフウォーカー だったんだ。いろいろ腑に落ちた。🤗♪
沢山の大人と子供に観て欲しい。
素晴らしい作品に出会いました。
なぜこの作品が多くの劇場で上映されていないのか?が
不思議でなりません。
まずアニメーションとして見事です。素晴らしい。
またその絵の素晴らしさ、そして表現の巧みさ、
色の鮮やかさ、(絵本のよう)、すごいすごいすごいの連続です。
そして、物語は過去の悲しい歴史(イングランドのアイルランド侵攻)を
モチーフにし、多くのテーマを扱っています。
自分自身非常に不勉強なのでそのような事実も知りませんでしたが
さまざまな方のレビューを拝見し(中でもワンコさんのレビューは勉強になりました。ありがとうございました!)背景や当時のアイルランド、イギリスの信仰の
違いを知るにつれ、なんと巧みにストーリーを組み立てているんだ!と感嘆しました。
そして親子の物語が絡んできます。
親が子になす事が果たして子が求めている事なのか?
子の自由を奪っているのは大人なのではないか?
理解している風に見せかけてただ都合よく子供をあやっってるだけでは?
多くのメタファーを含み、アクション物としても、登場人物の友情もの
としても、人間対狼)の物語としてもすごく楽しめます。
テンポも非常によくどんどん物語に引き込まれていきますし、
胸が締め付けられるほど辛くなる場面も多く、また
クラマックスも見事に盛り上がります。
エンターテイメント作品としても非常に水準が高いです。
まぁ観ている間、人間たちが憎くて憎くて仕方なかった。
この作品、1回観ただけでは足りません。
画面の隅々にわたり多くの絵が動いてるんですね。
皿の底まで舐めたくなるような作品でした。
あぁ、上手く書けないなぁ。
ハイレベルなおとぎ噺
本作でまず目に入るのは水彩画のような柔らかい背景でしょう。
その独特の柔らかさは自然や狼を描く際には丁寧に丁寧に反映され、逆にそれを蹂躙する護国卿や兵士はカチコチに四角ばった味気ない姿に描かれます。
ストーリーだけでなく、美術面のこだわりもあってこその分かりやすさでしょうね。
ウルフウォーカーの設定がやや軽いのが気になりましたが、歴史に詳しくなくても見られる(とはいえ知っておくとさらに面白い)おとぎ噺系の名作です。
全体的にはやや子ども向けかな。
あとメーヴとロビンは百合。間違いなく百合。
ケルトを堪能?
「ソング・オブ・ザ・シー 海のうた」に続けて本作品も観た。前作でも同様に感じたが、第一印象は、アニメというより、絵本が動くという印象をもった。(悪い意味ではない。個性という意味で)
また、それがケルトぽいのかは知らないが、"森" を象徴する、水滴のような、というか卵形を基調にしたデザインは、"渦巻く勾玉" とでも言ったらいいのだろうか、重なり合い回転しあう動きと相まって、独特で心地よい印象を与えてくれる。対立する者たちとしての "街" は、三角定規をベースに置いたような直線的デザインで構成されていて、この拮抗はわかりやすい。
ストーリーは、あえて言えば単純。ジブリアニメ 「もののけ姫」 は、同様の拮抗を描くが、レビューにも書いたように、"森(自然)" と "街(人間)" のどちらが正しくてどちらが悪いと言い切れるものではない。それを考えることに、映画の本質的な意味がある。一方、本作は ”神話”。神話は複雑ではいけない。だから、美術や音楽を楽しむように、心を開いて、神話の世界を体験しましょう。
イギリスに滅ぼされた先住民族であるケルトの神話がベースなのだろう。
神話なので、ストーリーは単純で、太古に想いを馳せながら、あれこれ考えずに観る、委ねるスタイルでの鑑賞をお薦めします。
「もののけ姫」のような、う〜む、どちらの立場もわかるなあ、みたいなものを期待してはいけません。あくまで、侵略するものとされるものという対立構造です。
狼。お話の世界ではとても身近な動物なのですが…。これはアイルランドに伝わるお話。
アイルランドに伝わる伝説。
狼と少女というモチーフ。
それだけで凄く興味が湧いてきました。
予告編で観た通り、綺麗な映像。
水彩絵の具で描いたような美しい世界は
いつまでも眺めていられそう。
主人公は二人の少女。
ロピンは人間。 ハンターの娘で見習い中。
メーブがウルフウォーカー。
ロビンに対し、最初は素っ気なくするメーヴ。
それが、次第にロビンを認め
心を開いていく過程が観ていて心地よいです。 うん。
◇
話のテーマはやや重め。
「人間 vs 狼」
森を切り拓き、町を広げる人間。
次第に住処を失っていく狼。
この作品の描かれる時代 =1650年頃のアイルランドは
狼が住処を徐々に失いながらも
まだ共に生きていられる時代だったようです。
※アイルランドでは、狼の絶滅は18世紀後半らしいですね。
このお話より100年以上は先のこと。
そのような時代背景を理解してこの作品を観ると
一層楽しめるのかな、と思いました。
◇
映画観た後に、いろいろな事が気になって少し調べてみました。
・アイルランドとイングランドの関係
古くから、民族的な対立問題があったようです
ケルト人とサクソン人
・宗教的違い
アイルランドはカトリック、英国はプロテスタント って
違いがほとんど分かってないのですが…
・清教徒革命(ピューリタン革命)
むかし高校世界史で出た記憶が…(遠い目)
・「護国卿」って何ですか?
イギリス国王に等しい権力を持って送り込まれる
統治者らしいです
掘り下げていくとどれも奥が深そうで、
歴史の暗部に行ってしまいそうなヤな予感もするなぁ うーん
やはりこの作品は、そういうことを余り考えずに
単純に観たほうがいいのかもしれません。
(↑って、上で書いた事と違うし …汗)
◇
公式サイトを見ていたら
「ケルト三部作の最終作」 と書いてありました。
前の2作品、タイトルに覚えはあったのですが、未見です。
これは観てみたくなりました。
字幕版で鑑賞したのですが
吹替版だと、ロビンの声が「新津ちせ」ちゃん
そっちも観てみたかった。
◇
素朴な疑問
ウルフウォーカーって
生まれつきウルフウォーカーなのか
素質があれば後天的になれるのか
どうなのでしょうね
全く登場しませんでしたが
ロビンの母 と メーヴの父
この人達のことも気になってます。
☆映画の感想は人さまざまかとは思いますが、このように感じた映画ファンもいるということで。
動く絵本のよう
アミニズムはどこでも迫害と滅亡の歴史だが その教えを絵本や童話として残されているのでは そして、それはどこかで行き続けているのでは‥‥そんな事を考えた
欧州の(影響が強い南米も)アニメは動く絵本という感じで日本ともアメリカとも違う
絵もよかったが音 鳥や狼や風の音がよかった 音楽も声優もほぼでしゃばらない感じで
素晴らしかった
匂いが見える表現も好き
「あんな臭いところに帰ってどうすんだ?」 森を自由に駆け回る楽しさ 狼気分を味わえる
ある者は人間になることを ある者は狼
ある者は鳥や虫や草花になることを選ぶ
そんな事が「常識」とされるのはいつの日だろうか‥‥
子供と観ても楽しめるし 大人が観ても政治社会的観点からも見れる映画
青い夜きれいだった〜
絵の上手な人の隣に座って、つむぎ出される線や色や物語の行く先を眺めているような、温かくくつろいだ時間でした。
こういった欧州のアニメ作品を観ると、美術教育の深さを感じます。以前旅したイタリアで寺院の石段に座って写生している子供たちのノートを覗き見てひっくり返ったことがありました。
一方で、10歳ぐらいの子供部屋からコツコツと絵師を目指す、日本の人材育成(自生?)、その結晶としての日本アニメも絶対真似できないものでしょう。
どちらにも魅了されます。
『ウルフウォーカー』というタイトルとあらすじ、ポスターやイメージ画像を見てもちょっと好きになれるか分からなかったのですが、これはもう映画館で観ることができて良かった!
プロモーション素材では魅力が伝わりにくい作品かもしれませんが、あの色彩と線と音楽の渦にまかれる幸福をぜひ多くの方に…。
ぁうぉぉぉぉーーーぅっ
美しい狼たちの遠吠えとアイルランドミュージックが耳から離れません!
観てきましたよ、伏見ミリオン座で。
「ウルフウォーカー」は人間と狼の合わさった存在で、狼ともお話しできます。
ケルトの石文明が残る、懐かしい森の中に入って来ました。
コロナ禍の現在、世界中で観てほしい映画です。
「ブレンダンとケルズの秘密」で圧倒的な映像美の世界に魅せられたトム・ムーア監督ケルト3部作の3作目、観ないわけにはいきません。
アニメーションと絵の素晴らしさに加え、アイルランドのKiLAのケルトサウンドに、アイルランドの歌姫オーロラが音の世界を包み込む。
映画では匂いも音も可視化するし!
自然との共存、自由の希求
『ブレッドウィナー』以来、カートゥーン・サルーンのケルト三部作が気になっていた。前作はまだ見れていないが、今作は劇場公開の機会に巡り逢えて嬉しい。
題材は世界各地に残る獣人の伝承。肉体ごと変化したり、映画のように霊魂的な存在などパターンは様々だが、異形と恐れられ、或いは自然信仰と結び付いて尊ばれ、キリスト教下では異端とみなされた。敵役の護国卿は、敬虔なキリスト教徒で、狼を駆逐し、森を開発し、人間を栄えさせる事が神の御心だと信じて邁進している。
自然と開発の対立、共存模索のテーマは、昨今の作品で多く見られるが、近代的な消費拡大の方法論に限界を感じ始めた現代人の自問の表れだろうか。
自然の化身とも思わせられる森の女の存在感、中世封建制の窮屈さに苦しみ、心のままに森を駆ける狼の自由さに魅せられる少女ロビンの姿は、ブレッドウィナーにも通じる、抑圧からの女性解放の強い想いを感じさせる。
自然と共に、家族との絆を大切に、自分らしく。それが昨今理想とされる価値観なのだろう。
極度に図案化されたキャラクターや紋様めいた動植物、透視図法を無視した壁画のような背景の描き方など、独特のビジュアルが。アーティスティックでとても美しい。『Gorogoa 』『Sky』『GRIS』など、絵画的な世界が動くゲームが好きで、その為に苦手なアクションにもチャレンジしたりする身なので、この世界に浸れる散策ゲームを開発してくれ!と思う程だった。匂いや音に敏いウルフウォーカーの感覚を可視化した映像が、新鮮で面白い。世界観に寄り添う音楽も心地いい。
自然は人間に優しいだけの存在ではない。人間の都合に合わせるだけでは共存は叶わない。複雑で根の深いテーマを描くには、若干論理が大雑把な側面もあるが、子供が主人公の物語で、余り救いがないのは辛くなっちゃうので、ハッピーエンドに終わって良かった。
世界の何処かに、今この時も、人ならざる者が潜み暮らしているかもしれないというのは、古今東西普遍のロマンなのだから。
色彩の素晴らしさと少女の成長物語を楽しむ
人間とオオカミの両方の体になれるウルフウォーカーの少女と、オオカミを退治するために雇われたハンターを父に持つ少女の交流を描いた物語。
もののけ姫のようでありナウシカのような話だったので既視感はあるが、終始スクリーンに釘付けになってしまった。やはり異質なる者と距離を縮めていくのは少年少女であるという王道な話だが、ロビンが成長していくプロセスがよかった。
さらにアニメーションがよい。立体感のない絵柄だし、ラフスケッチに色を付けたような雑な印象さえあるアニメーションだったが、躍動感があって、そして色彩がとにかく美しかった。あの世界観にたっぷり浸るだけでいい鑑賞体験だった。
アイリッシュもののけ姫に隠されたメッセージ
アイルランドを舞台にした「もののけ姫」のようだ、と感じた。
ただし、宮崎作品のようなボーイ・ミーツ・ガールの要素はなく、つまり、そういう華はない。
むしろ、主人公2人が少女で、LGBTの趣を感じる。片方の名前がロビンという、本来は男性の名前であるのも意図的か。
自然を母系、町(人間)を父系とする対比が鮮やか。
ゆえにウルフウォーカーのメーヴには母親しかおらず、ロビンには父親しかいない(護国卿の妃も描かれていないことに注意)。
そして、自然は自由、城壁に囲われた町は管理の象徴とする対比も分かりやすい。
その壁を越えるのは少女、つまり、子どもであり女性だ。
大人の男は管理する側に回り、柔軟性がなく、不自由だ。ロビンの父親は、初め、そのように描かれ、ロビンに対し「お前のためだ」「お前を守りたいんだ」と繰り返すが、それに対してロビンは「ここは牢獄だ」と叫ぶ。
ラストのロビンの父親とメーヴの母親との結婚は、人間と自然の共生を象徴すると思うのだが、しかし、最後のシークエンスで住む森を離れていくのはどう理解したらいいか。
本作の舞台はアイルランドだが、ロビン親子はロンドンから来たイングランド人という設定だ。つまり、この地に残ったとしても「よそもの」であることには変わりはない。護国卿がいなくなった以上、ロビン親子はここには住み続けられないのだろう。
本作には、人間が自然を侵すことと、イングランドによるアイルランドの征服、という「二重の支配」が描かれている。
町の住民は不安と不満を抱えているように描かれているが、これは狼に関することだけではなく、護国卿の政治に対するものも含まれているはずだ(護国卿の森林開発には、食糧問題の解決のため、という説明がある)。つまり本作は、「護国卿が、政治課題を森林開発で解決しようとして失敗した物語」とも解釈できる(護国卿は森を開発できなければ、自分はこの土地に残れないと悟っていたから、死を選んだのではないか)。
このラストシーンが「自然と人間とは共生できる」というメッセージとともに、「だが、人間同士の対立は克服できなかった」ことを表しているのだとしたら、痛烈である。
アイルランドとイングランドの歴史的対立を思うと、アイルランドの側がイングランド支配を容認できないのは当然とも思える。
独特の作画だが、中世ヨーロッパの味わいが感じられ、何より美しい。
メッセージ性と娯楽性を兼ね備え、子どもも楽しめ、大人の鑑賞にも耐える。
傑作である。
美しい美術に浸る
まず、デフォルメされたキャラクターの動きや、背景に至るまで色彩の豊かさを観るだけでも、アニメーションの根源的な楽しさが味わえました。
また、本編ストーリーでは、今の時代にも通じる「保身のために自ら権力者の作った牢獄に入る」大人たちの愚かな姿を描いていました。
圧倒的な美術と作画に浸れるので、アニメーションという表現を愛する人には超おすすめ。
『ソング・オブ・ザ・シー』ファンならマストですよ!
ただ、その裏には17世期半ば(1650年代)、イングランドがカトリックの思想に則り、神の名の下にアイルランドへ侵攻した、悲しい歴史が敷かれています。
食糧が不足していて、農耕地確保のため森を切り開き、自然を壊し、自然崇拝(アニミズム)していたアイルランドの異教徒を弾圧・虐殺していた時代を描写していました。
そのあたりまで知っていると、奥の深い作品なのです。
磨きかかるケルト三部作の真打ち
中世アイルランドの伝説に基づく、オオカミであり人間でもあるウルフウォーカーと、ハンターを父にもつ少女との友情の物語、
絵画を彷彿する背景美術によく動き表情豊かな人物描写
良いアニメーション作品でした。
【”現代にウルフウォーカーを呼べないかな?生物の中で一番偉いと勝手に思っているニンゲンに”全ての命は平等だ、共存しろ!”と言って貰いたい・・。” ”分断する事の愚かさ”を描いた作品でもある。】
ー森林を開拓し、狼を駆逐しようとする”護国卿”は明らかに、現代の人間をシンボライズした人物だろう・・。彼なりの”行動理由、思想”もきちんと描かれているのだが・・。ー
■印象的なシーン、他
・人間と狼が一つの身体に共存しているウルフウォーカーのメーヴとイギリスから来た女の子、ロビンが徐々に親しくなり、ある日ロビンも(メ―ヴに噛まれたため)ウルフウォーカーになり、行方不明になっているメーヴのお母さんを探すシーン
-二人とも、”あの国”では、異端者なんだよね・・。同じ匂いがしたのかな・・・。
イングランドとアイルランドとの関係性は、今でも良くはなっていない・・。
一時期のアイルランド解放戦線による凄惨なテロは最近起きていないが・・。
狼と護国卿の軍との戦いを見ていたら、ふと、思い出してしまった・・。-
・メーヴが、おぢさんの腕の傷や、ロビンの傷を不思議な金色の光で癒すシーン
-けれど、お母さんの傷を癒すには、みんなの力が必要で・・。-
・メーヴのお母さんの居場所が分かり、ロビンが助け出そうとするシーン
・メ―ヴが母を助けようとする思いと、ロビンが”護国卿”の配下で狼猟師として働く父親を大切に思う気持ちが、複雑に錯綜してしまう部分。
・劇中にしばしば流れるケルト風の音楽の心地よさ。
-昔、聴いていた”ザ・チーフタンズ”の曲を思い出す・・。-
・護国卿の軍団が迫り、絶体絶命の中現れた大柄なオスの狼の本当の姿は・・
-あ、お父さんも噛まれていたね・・。-
<あのラストシーンは、とても良い。
狼と人間が共存している身体を持つ、二組の親子がいつの間にか、家族になっていて・・。幸せな風景である。
様々な緑を基調とした映像の色合いも、とても風合の良い生命讃歌のアニメーション。
今作は、中世アイルランドに伝わるウルフ伝説がベースであるそうだが、
北欧って、夜が長いから様々な妖精たちを主人公にした物語が多いのかな・・、と思った作品でもある。>
あれが聞こえるか?美しい音楽のようだ
中世のアイルランド、キルケニーの町。イングランドに征圧される属国の現状、文明にごり押しされる自然界の行く末。この時代の文明はまだ不完全で未発達で、しかし悪いことに、それでもそれが良き未来だと信じられた。たぶん、当時の人々(支配者側)の心情は、映画に映し出されるどこか人間の心の闇を滲ます暗さなどなく、輝かしい未来を期待する明るいものだったろう。逆に侵略される側はその影として、鬱屈したひがみの感情を潜ませていたことだろう。それは東西を問わず、日本でも古代、中世、そう変りもない歴史をたどっている。
そして、それぞれの地で根付いていた古来よりの自然崇拝は、文明という重機に撫で切りにされていく。この映画のなかの森やオオカミたちも、その歴史のひとしずく。ただ、それだけでこの映画に惹かれたのではなく、その舞台がアイルランドだからだった。司馬遼太郎の紀行文を読んで、W杯のドイツ・アイルランド戦を観戦してからの僕は、ことのほかアイルランド贔屓で、その舞台がそこであるだけで観る理由には成り得た。伝説多いケルトの世界観は、どこか奈良朝あたりの陸奥に似た印象も強く、強者に蹂躙される弱者に肩入れしたくなる気分にもなるからだ。
この映画は、手描きなのがいい。先日、TVで「未来少年コナン」の再放送が流れていた。それに見入ったのは、懐かしさだけでなく、画の柔らかさから滲む温かみなのだろう。そこがデジタルでない創作物の素晴らしいところ。昨今の日本のアニメ映画やディズニーに興味が薄れた訳は、第一にそこなのだ。たいしてこの映画は、とってもとっても温かい。線や彩色、文様、それに安野光雅を思い起こさせる構図から感じるこの映画の画が、とても柔らかいからだろう。
話のスジには当然のように家族愛、友情がある。しかしそれだけでは綺麗ごと。その対比としての喪失や献身(その点では敵役である護国卿もそう)が、いっそうその感情を呼び起こす。護国卿はまるで、レ・ミゼラブルのジャベール。彼は彼の正義を貫き通す。ゆえに、憎らしさよりも悲哀を漂わしていた。それがこの物語も深みにもなっている。おそらく日本人には気付かない、キリスト社会の不文律や象徴や暗喩だって、いくらもあるのだろう。
子供達にはこの手のアニメーションこそどんどん見せてあげるべきだと思う。いや、世ズレたおとなにこそみるべき、か。そりゃそうだ、僕だって久しぶりにパンフレット買ってしまったくらいなのだから。
全51件中、21~40件目を表示