ギレルモ・デル・トロのピノッキオのレビュー・感想・評価
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ムッソリーニをおちょくった処や怪魚の造形などデル・トロらしいが、基本的にはデル・トロ作品には珍しいストレートな人情劇。ラストクレジットに流れる曲・音楽はまるで往年のハリウッドミュージカルの様。
①ラストクレジットで錚々たる面々が声を当てているのにビックリ。ユアン・マクレガーが『ムーラン・ルージュ』以来(私にとっては)朗々たる歌声で歌い上げてくれる。
②2019年の『ほんとうのピノッキオ』では結構説教臭い話だったんだと思わされたが、本作では説教臭さは殆どなく風刺精神は残しつつエンタメ(ミュージカルな味付け)+ファンタジーとなっている。
③時代背景をイタリアがファシズムに席巻された第一次世界大戦と第二次世界大戦との間の時期にし、原作の悪辣な商人によって子供達がヤギに変えられるところをファシストが子供達を戦士にする設定に変えたところも巧い改変。
④ピノッキオはいい子に成ろうとは言うが、(妖怪人間ベム・ベラ・ベロのように)“人間に成りた~い”とは言わない。最後まで人間の子供には成らず、木の人形のままというのも『シェイプ・オブ・ウォーター』を監督し異形好きのデル・トロらしい。
⑤ピノッキオが木の人形なので何度も生き返る(死なない)ところや、死の国、死を司る精霊が登場するところは『パンズ・ラビリンス』に通ずるダーク・ファンタジーの味。
⑥本作のピノッキオは良い子と悪い子との間をあまり言ったり来たりしないし、クリケットもピノッキオのガイド役というよりもコメディリリーフ役に近いが、ピノッキオの胸のところの洞(うろ)が家というところが、『人造人間キカイダー』(ピノッキオの物語がモチーフ)のジェミ二(良心回路)を思い起こされて懐かしい。
⑦嘘をつくと鼻が伸びるピノッキオの有名な弱点を逆手にとったクライマックスの工夫も上手い。
⑧『ナイトメア・アリー』にはガッカリさせられたが、本作は良かった。ややベタなラストにも泣かされたし。
良い映画
スタンダードなストーリと思って観ていたら、オリジナルな物語が大部分を占めていて、ちょっと予想外…というか、度肝を抜かれました。
まぁ、面白かったかどうかは別として…(笑)
この"ピノキオ"は最後、人間にはなりませんでしたね。ありのままの自分を好きになって欲しい、ありのままの自分でいいじゃないか…というメッセージでした。かなり現代的なテーマを含んだ作品でしたね。
それなりのストーリーでしたが、個人的には、今ひとつ琴線には響かなかった…というのが、正直な感想です。
もし子どもが初めて接する"ピノキオ"の物語が、この作品だったら、ピノキオは戦争のお話と思い込むんでしょうね。キャラクターの造形といい、その世界観といい、幼い子どもには何かとトラウマになる作品かもです…(笑)
ロッテントマトを含め、作品の評価は総じて高いようです。
上映館は少ないので、気になる方は、早めに劇場へ行かれることをおすすめします。
おじいさんを悲しみの淵から戻ってこさせたのはピノキオの存在でした。
大人たち、鑑賞してメッセージを汲み取り子どもたちへ伝えてほしい
デルトロといえば私の中ではブルーグレーとでも形容するのが適当なのかわからないが、独特の色合いが印象的で、本作も空の色やコオロギのセバスチャン?がその色合いで、エンドクレジットまでがブルーグレーだった。
ストーリーは、ほんとうのピノッキオとはまた異なるものだったが、共通していたのは子供の純真無垢さは時には残酷な一面も持つことだろうか。
本作はそこに戦争を噛み合わせ、純真だからこそ教えられた戦闘を是とする子供、しかし意味のない争いは不毛だと市長に反抗する姿やムッソリーニを揶揄することで反戦のメッセージを強く押し出したのだと感じた。
そして、何度も生き返ることができるピノッキオが自らの命をなげうってでも手に入れたいと感じた生命の大切さ。
更には仲間を思う気持ちなど、幾重にもメッセージが込められていたのだと思った。
子供には難しい内容もあるだろうから、是非とも大人が先行鑑賞して、それから子供と一緒にもう一度見る、そして話し合いながら噛み砕いて伝えてほしいと思う作品でした。
スクリーンで集中して見てほしいなぁ。
斬新で美しい大人向けの「ピノッキオ」
また「ピノッキオ」かとも思ったが、これまで観たどの「ピノッキオ」にもないオリジナリティーを感じることができた。
まずは、ゼペットの息子のカルロが亡くなる顛末がしっかりと描かれている。時代背景も、第1次世界大戦中のことであると明確に示される。
そこから、ゼペットがピノッキオを作った目的が、「死んだ息子を自ら作る」ことであるということも明らかになるし、ピノッキオにカルロのようになってもらいたいと願うゼペットと、自分は自分らしく生きたいと願うピノッキオとの確執も浮かび上がってくる。
そして、この映画の大きな特徴となっているのが、戦争とファシズムに対する明確な批判だろう。何よりも、ピノッキオが、ムッソリーニの目の前で、本人を揶揄するというシーンが出てきたことには驚いた。
ピノッキオの純粋無垢さが、あまりイライラしない程度であるのはいいし、嘘をつくと鼻が伸びるというギミックが、大魚からの脱出の手段として、ちゃんと活かされているのもいい。
そして、ラストでは、ゼペットがありのままのピノッキオを受け入れるのだが、それまで、同じように、父親(もしくはそれに類する存在)に愛されたいと願いながら、それが叶わなかった市長の息子とカーニバルの団長の猿のエピソードがあったために、この親子の和解は、より感動的である。
さらに、木の人形が本物の人間になるというクライマックスが、視覚的にではなく、「命のはかなさ」という観点から描かれているのも斬新だし、物語に深みを与えているように感じた。
ストップモーションのどこか温かみのある映像とともに、心に染みる「ピノッキオ」の物語だった。
めちゃくちゃ良かったです。
すばらしかった
ピノキオの話は知っているようでよく知らない。おじいさんの身の上が気の毒すぎる。ピノキオがめちゃくちゃかわいい。子どもそのもののようでずっと見ていたい。ストップモーションアニメのような動きもよくて、ストーリーもとても面白い。
関係ないけど、『すずめの戸締り』で椅子に人格が宿っていたのだけど、特に何も感じることがなくて、椅子だからしかたがないのかもしれないけど、木の人形がここまでかわいく思えたことに、自分にそんな気持ちがあって安心した。椅子にも応援したい気持ちになりたいものだ。
人形が良かった
僕はピノッキオ 〜 松の木の少年
ピノッキオの肩に打ち込まれた釘にドキリとさせられたが、少年らしい邪心の無い声( グレゴリー・マン )と、その天真爛漫さに引き込まれていった。
ピノッキオが、友( 心を通わせるシーンがいい )や仲間と出会い、逞しく成長していく。
コオロギのセバスチャン役のユアン・マクレガーがエンドロールで聴かせる✨
我が子に対する愛、他者を思い遣る心、戦争の恐ろしさを、ギレルモ・デル・トロが印象的なアニメーションで描いた作品。
映画館での鑑賞 (字幕版)
怪作!ピノッキオから人生を学ぶ
実はとんでもない不意打ちの傑作なんですけど、ギレルモ監督風味を表現する上で、「怪作!」とさせていただきました。
私、ギレルモ監督作品はパンズラビリンスからのファンで、特に彼の「異形のモノ(=クリーチャー)へのこだわり」、「残酷描写(グロ耐性必須)」など「そこはかとなくエロ(笑)」などなど、嗜好的にツボでございます。
今回なぜだか知りませんが、かつてディズニーがアニメ化したピノキオをリメイクするということで、これは原作寄り(原題はピノッキオらしい)に作り直すのかなと考えてましたが、ミュージカル的な演出もあることから、ディズニーへの敬意もしっかり取り入れている様子でした。精霊もきっちり青くてキモチ悪・・・ネタバレはやめておきます(笑)。
ただ、原作やディズニーとかなり違うのは扱うテーマが多数あり、より大人向けの物を含み、かつ内容が海の底ほど深いのです。無論、「正直であること(良心について)」を筆頭に、「死生観」「かけがえのない友情」「父と子の軋轢、そして相互理解」「戦争の狂気」・・・書ききれないものも含めてトータルすれば、まさに人生なのですわ。これを間違いない、確かな教訓と共にきっちりと答えを出す点は本当に潔く素晴らしいと感じました。
そしてこれらをあくまで純真無垢なピノッキオの視点で素直に表現するから、いい歳のオヤジはそのギャップに感涙必至。
大人こそ、そして人の親なら尚更見ていただきたい傑作だと思います。
では。
結末こんなだったっけ…。
ひとりごと
皆さんおなじみピノッキオの冒険をギレルモ・デル・トロがアニメで描いた作品。
WW1で10歳の息子カルロを亡くしたゼペットが彼の墓に植えた完璧な松ぼっくりから生えた松の木で作った人形に命が吹き込まれ巻き起こっていく。
ピノッキオに詳しい訳でもないし、監督がどうのと言って映画を観る訳ではない自分には、ギレルモ・デル・トロといえばみたいなものはまるで解らず、今作の何が「らしさ」かは知るよしもないけれど、まあ概ね自分が知ってる物語。ゴキブリの家になっているのは知らなかったけどw
歌うシーンがメチャクチャ多い訳ではないものの、時々ミュージカル仕立てで展開して行くので重くはないけれど、ピノッキオ自体が結構エグい物語だし、絵面がキャッチーではないし、子供がこれを愉しめるのかは???
ピノッキオを良く知らない人や、ギレルモ・デル・トロ大好き!って訳でも無ければ、今更これを観る程でもないかなという印象ではあるけれど、これはこれで面白かったし、生前の息子の描写からしっかりあったのは良かったかな。
限りある生命の尊さ
限りある生命の尊さ、戦争の影、目を奪われる美しい映像と音楽、恐ろしささえ感じるビジュアル、ほんとうのピノキオでない新しいピノキオ。
ストップモーションアニメはどれだけ観ていても飽きることがないが、あまりにもクオリティが良すぎて途中からCGかと思ってしまうほどだった。CGが行き着くところまで行ってしまってストップモーション風に作ってるのかと。
「ある男」の柄本明風に言うと、このアニメはCGっぽくないCGですね。ということはCGっぽいと言うことですな。
ちょっと何言ってるかわかんないけど、それくらい映像がきれいで動きが滑らかでした。
ゼペット爺さんがピノキオを作るところなんか怖くてドキドキした。演出であれだけ怖くなるんだ。
夕方一回だけの上映もったいないけど、上映してくれるイオンに感謝。
【ギレルモ監督が、戦争の愚かさと命の儚さと大切さを、オリジナルを尊重しながら丁寧に描いたストップモーション映画。今作はギレルモ監督のオリジナルストーリー部分が秀逸である作品でもある。】
ー 今作は、題名の通りピノッキオが主人公だが、ギレルモ監督が戦争の愚かさや、命の儚さやそれ故に大切にしなければいけないというメッセージが込められている作品である。-
◆感想
・ストップモーション映画は、私が過去観た中で面白くなかった作品は皆無だが、この作品も然りである。
茶色を基調にした、ピノッキオを始めとした人形の質感が素晴しく、動きもショット数が多いからだろうが、滑らかである。
・原作には出て来ない、コオロギや悪徳な人形遣い、人形遣いが飼う猿と言った、キャラクターの立ち方も良い。
・ムッソリーニを信奉する愚かしき市長と、父に認められたい息子の、ピノッキオを巡る葛藤のシーンも、印象的である。
ー 子供たちに、戦争に向けた練習をさせる愚かしさ。-
・性格(温かい、冷酷)が違う、森の精と姉妹が、ピノッキオに命の尊さを教えて行くシーンの設定も斬新である。
<ピノッキオの映画は、「ほんとうのピノッキオ」を観ていたが、今作はギレルモ監督のオリジナルストーリー部分が秀逸である。
当初は、ヤンチャだったピノッキオが、ゼペットを助けるために、冷酷な森の精にお願いした事。そして彼はゼペットを助けるが、命を失う。
だが、温かい心を持つ森の精に命を与えられるシーンは、”命の大切さ”を見る側に伝える幻想的で美しきシーンである。
お近くのイオンシネマでこの作品が掛かっていたら、観賞する事をおススメしたい作品である。>
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