「映画館で見るべきアクションエンタメ、ストーリーも◎」ザ・ファブル 殺さない殺し屋 美茶さんの映画レビュー(感想・評価)
映画館で見るべきアクションエンタメ、ストーリーも◎
原作の宇津帆編は未読、映画前作はアマプラにて鑑賞済み
6秒以内に仕留める凄腕殺し屋なのに殺しを禁止されるという変化球設定と柳楽優弥の芝居くらいしか前作は印象に残らなかったため今作はスルーか否か迷ったが、新キャラクター3名を演じる役者陣に興味があったことと評判が良さそうだったため鑑賞
結果、個人的には大当たりで前作よりはるかに面白く断然こちらの方が好み
アクションの迫力とスリル、役者陣の芝居と絵ヂカラは大きなスクリーンで観る価値あり
圧倒的で刺激的なアクションパート、心を動かされ没入できる人間ドラマパート、全身の力を抜いてホッとできる一服要素のあるコメディパートという3つの異なるパートがバランス良く構成されていることで緩急が程よく心地よく絶妙、2時間超えの長尺だが最後まで見入ってしまった
前作では暗く見づらくごちゃごちゃしていた印象のウェーブ戦じみた戦闘とアクションだったが、今作では明るい屋外で展開されることや車と団地が舞台ということもあり分かりやすく見やすくなっており、加えて岡田准一の身体能力も魅せ方もパワーアップ、ファブルが激強なのは分かっていてもハラハラドキドキさせられる仕掛けの数々に手に汗握った
邦画でこのような展開のアクションは今までなかったように思うのでこれだけでお値段以上
また、前作ではあまり見せ場のなかったヨウコのアクションシーンは必見
ヨウコvs鈴木の戦闘シーンは個人的今作ベストシーンのひとつで、ヨウコの強さと色っぽさと格好良さに痺れまくり、ファブルとのバディ感が増している点も良い
人間ドラマも強化されており、堤真一、平手友梨奈、安藤政信の芝居が大変素晴らしく見応えあり
・宇津帆(堤真一)
"善良な仮面を被った悪人"と書くとありがちな人物設定のようにも思えるが、表の顔も裏の顔もとても自然でどちらも本性のように映るため、最後まで宇津帆という人物の本心を掴み切れず不気味な感覚を覚えたのが新鮮で趣深かった
どちらの顔にも説得力を与えることができる堤真一という役者の妙
鈴木にファブルへの憎悪をプレゼンするシーンや森で開き直って真実を話し煽るシーン、見ているだけで腹が立つゲス笑いなど、狂気を孕みながらも計算高い人物描写が至極上手い
ファブルへの復讐心と嫉妬心、ヒナコへの征服欲と執着心のようなものを観客にうっすらと感じさせる繊細な表現もお見事
・ヒナコ(平手友梨奈)
素人目ではあるが、上半身に頼った身体の動かし方や筋肉が削げ落ちた足(CG?)、車椅子操作も含め、足が不自由な少女としてのリアリティがあり違和を全く感じなかったことに驚く
心を閉ざし復讐を胸にリハビリを頑張るヒナコと平手友梨奈との親和性が凄まじい
(一か所悲鳴をあげる場面はあるが)感情を押し殺したような静かな芝居でヒナコを見せていたからこそ、クライマックスでの慟哭と発憤、感情の発露にとてつもなく心が震えた
全編を通し目の表情が大変素晴らしく、辛い過去を持つ人物特有の深読みさせる瞳、夢も望みも当たり前の感情も失った闇のある眼、佐藤への警戒と猜疑心溢れる鋭い眼差しから希望と好意を感じ始めた光を含む眼差しへの変化など、終始目の演技に惹き込まれた
・鈴木(安藤政信)
端正な顔立ちと長髪、スラっとした体躯がキャラ立ちしており絵になるためスタイリッシュでスマートな殺し屋かと思いきや、人間臭く情のある憎み切れないキャラで好感
ヨウコにプライドをずたずたにされた際の屈辱と葛藤の表現や、ファブルに殺されると思い込んだ際の格好悪く命乞いはしないものの死への恐怖で力が入る場面の演技に感情移入した
鈴木の普通さが宇津帆の不気味さを際立たせており、比較的常識がありヒナコに非情なことをしそうにない鈴木の存在が後半の安心要素になっていたのが面白い
ヒナコへの感情はただの同情か兄のような感情かはたまた恋愛感情なのか・・・鑑賞後の余韻の中に想像の余地があって楽しい
宇津帆ヒナコ鈴木の過去とそれぞれの関係性、ヒナコ鈴木のこれから先の人生をスピンオフで見たくなるほど興味深くキャラが立った魅力的な3人だった
上映時間が長めであること、殺さない殺し屋という説明じみたダサい副題、カットされた前作を金曜ロードショーで放送したことあたりが少々ネックか
個人的に難をあげるとすれば、団地パニックでのファブルの動きに無重力的なフワっとしたものを感じ、消されているワイヤーが薄っすら見えてしまった気がしたのでマイナス0.5
とはいえ岡田准一は半端ない域に達している
ファブル3があるならチェックしたいし他のアクション映画でも観たいと思える俳優
是非もう一度映画館で観たいのでロングラン上映してほしいところ