劇場公開日 2021年7月22日

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「見事なバランス感覚と清々しさで観る者全てを味方にしてしまう映画」犬部! 初心者さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5見事なバランス感覚と清々しさで観る者全てを味方にしてしまう映画

2021年8月7日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

楽しい

幸せ

重くなりがちなテーマを、真摯さは保ったまま爽やかに描いていており、全然説教臭くなく、一方的な正義と悪の対立構造でもなく、ニュートラルな視点で描かれていて素晴らしい。社会派(要素を含む)映画だからといって左翼的な思想に傾くこともなく、本当に優れたバランス感覚の映画だ。
観る前は、特別な動物好きでない自分が物語を楽しめるか、共感できるか不安があったが、青春モノあるいはヒューマンドラマとして普通に楽しめた。むしろ、今までに観た所謂"青春映画"の中で一番面白かったかも。

そしてそれは多分、脚本の素晴らしさと、キャストの演技力の素晴らしさが大きいと思う。

まず脚本。この重いテーマを扱いながらよくぞこんなに清々しい物語にしたなと。天才か。
観る前は主人公の熱血ぶりについていけるか心配だったが杞憂に終わった。他のレビューで「週刊少年ジャンプの主人公みたい」とあったようだが、まさに!ジャンプの漫画読んだ後みたいな清々しさ!終わってすぐ、もう一度観たい!と思った。

そしてキャストの演技力。一般的には青春モノって、キャストが若い分(申し訳ないが)演技力が今一つに感じることもしばしばあり、作品世界に没頭できないことが自分は今まで多かったが、この映画犬部!はキャストが全員上手い!
主演林遣都さんはもちろん中川大志・大原櫻子・浅香航大さんの演技も全員上手くてファンになりそう。多頭飼育崩壊に陥った男を演じる螢雪次朗さんも、本当にくたびれた親父にしか見えず、最高。リアルにそういう人を連れてきたのかな?って思っちゃうぐらい。

政治の世界では、自分の主張を通す為に過激な行為をしてしまい、理解してもらうどころか逆に溝が深まるというBADコミュニケーションをよく見かけるが、この映画犬部!は、先に述べたように、一方的な主張や価値観に傾くことなく、ニュートラルな視点で描くことで、余計な反感を買うこともなく全ての人を味方にすることに成功しているように思う。
動物問題に限らず、何らかの分野で世の中を変えたいと思っている人にとっても必見の、人身掌握に長けた映画だ。

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初心者