劇場公開日 2021年7月22日

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「犬猫愛好家はすべからく鑑賞すべし!」犬部! おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0犬猫愛好家はすべからく鑑賞すべし!

2021年7月24日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

幸せ

タイトルから気になっていた本作。あまり予告も流れず、事前情報もないまま鑑賞してきましたが、いやーよかったです。いろいろ考えさせられる2時間でした。

犬バカ(犬好きの敬称)の花井颯太が、獣医学部で手術実習に使われる犬を助けたことから、すべての犬や猫の命を救おうと立ち上げたサークル犬部。卒業後、獣医になってもその思いは変わらず、かつての犬部の仲間とともに、それぞれの今の立場で、動物たちの命を守ろうとする姿を描きます。

本作では、大学での研究のための解剖、ペット飼い主の姿勢、捨て犬や捨て猫、去勢や不妊手術、保健所での殺処分、動物病院の現状と限界、ペットショップやブリーダー等、さまざまな角度からペットにまつわる問題を描いています。普段は見過ごしがちな問題をきちんと描いているところに好感が持てます。特に保健所で殺処分を待つ犬のシーンには、胸が締め付けられるようでした。ただ、決して見たくはないのですが、殺処分にしても動物病院の現状にしても、もう一歩踏み込んだシビアなシーンを入れれば、さらに強いメッセージになったのではないかと思います。

構成としては、獣医師となった現在と、大学時代の犬部での活動を行ったり来たりして、ややわかりにくい部分もありましたが、現在と過去をうまく関連させた脚本はなかなかおもしろかったです。

主演の林遣都くん演じる花井の一途な思いと、中川大志くん演じる柴崎の思いが、どちらもしっかり伝わってきました。二人の性格とアプローチは違えど、目指すところは同じという対比が、とても効果的で作品に奥行きを与えていたと思います。特に、中川くん演じる柴崎が、終わりなき殺処分の日々に心が押し潰されるシーンは、涙無くして見られませんでした。

脇を固める俳優陣もなかなかの好演で、中でも今回のイチオシは田辺桃子さん!「ゆるキャン」からのファンですが、本作では大垣千明からガラリと変わり、物語を大きく動かすキーパーソンを見事に演じています。今後の活躍がますます楽しみな女優さんです。

それにしても、これが実話ベースとは本当に驚きです。こんな草の根の活動を取り上げ、広く知らしめた本作の意義は大きいと思います。犬部の目指す世界の実現はまだまだ先ですが、その思いは本作からひしひしと伝わってきました。犬猫愛好家はすべからく鑑賞すべし!

おじゃる