いとみちのレビュー・感想・評価
全80件中、41~60件目を表示
いいものを見た。駒井蓮、素晴らしい
なんて清々しい映画だろう。真正面からの青春映画。どこから見つけてきたかっていう女子高生役ふたり、駒井蓮とりんご娘ジョナゴールド。今時こんなツーショットやカットバック(電車内)が見れるなんて。でもきっとこのキャスティングがすべてかもしれない。青森出身監督と青森出身女優であることの、おそらく「恥ずかしくない」ドラマを作ったのだと思う。セリフわかんないし(笑、でも途中からまったく気にならなくなる不思議。まあストーリーはわかるし)、家屋も家の服もダサいし、でもこのキャスティングがピタッといって、もう駒井蓮を目が追っかけてるという。設定は定型っていやぁ定型なので見せどころはそこでしかない。うん。まったくダレず、いいものを見た。
アップルパイとチョモランマ
横浜監督の映画を初めて観たのは『ジャーマン+雨』(2006)だった。当時から凄い才能だと言われていたけど、50万円という低予算のせいか音楽がまったくダメだったことを思い出します。しかし、今作では三味線もど素人だった駒井蓮が師匠(祖母役の西川洋子)にも恵まれ、猛特訓の末に「津軽あいや節」を披露してくれた。しかも音響が素晴らしい音楽映画♪
7.1ch
コロナ禍で映画製作も懸念される中、感染者数の少ない青森県での撮影敢行。ご当地映画という枠に捉われない、全国民が楽しめる作品だったと思います。強い津軽弁と人見知りの主人公いと。彼女の成長物語でもあるけど、父親(豊川)や祖母との強い絆もプラスされ、メイドカフェ仲間や常連客の成長物語でもあったのです。
同じく友達のいない早苗(ジョナゴールド)との意思疎通、さらにメイドカフェという偏見をなくす展開、戦時中の青森空襲の話題など、盛りだくさんのエピソード。さらに方言を中心とした笑えるところが多かった。
何といっても三味線の道を目指す物語は音楽好きにとっては大きな収穫。大股になるのが恥ずかしいと言ってたいとだったけど、ノッてきて演奏に陶酔すると開いちゃうんですよね。恥ずかしくなんかないよ!しびれるほどカッコいい!もう最高!特にばあちゃんとの競演は音がきれいでした♪
津軽弁についての知識もなく、鑑賞前に方言のサイトでチェックしていきました。「けっぱれ」という言葉にはもちろん感動するのですが、「わ」「な」「け」など、一文字で意味が通じる東北弁の特徴を活かした脚本になってました。特に祖母が乾し餅(?)を渡すときに言う「か、け」は印象的。「はいどうぞ、お食べなさい」という意味だ。
パンフ購入。最終台本が載っていて、これで津軽弁やわからなかった部分を復習できそうです。では、へばね。
芯のある、素晴らしい映画!!!
三味線友人に誘われて何となく観たのですが、本当に感激しました‼️
登場人物のさりげない一言の中に、深み重みがありました。
郷土風土の息づかいもしっかりと感じられました。
撮ってくださって、有難うと思うばかりです。
巡り会えて良かったです。
風景とメイドに癒される作品
「俳優 亀岡拓次」(16)の横浜聡子監督作品。青森の津軽方面が舞台の口下手女子高生の成長物語と言えばそれまでですが、
ある意味奇跡のようなご当地作品でした。派手さはないですが隅から隅までドキュメンタリー調で芝居らしい感じがない演技が素晴らしかったです。
メイドカフェでアルバイトを始めて三味線コンサートまでの後半の展開は笑い多めで楽しく見れました。
父親の豊川悦司と祖母との三人家族がほのぼのとして微笑ましく見終わった後の爽快感がありました。
気持ちを穏やかにしたい時にぜひご覧ください。自然風景と三味線の音に癒されます。
ご当地映画の匂いをいい意味でかき消す良作
確かに噂通りのいい映画だった。どうせご当地映画の良くあるパターンでしょ、なんて公開前は思ってた。でもこの評判ぶりは只者じゃなかったので観てきた。確かに、別格のご当地映画だった。
ご当地映画みたいな匂いしてるのに、まるで違う。個々のピントの当て方がどこも上手くて優しい。そして何より、 皆がどことなく抱えている「人生がうまく行けばいいのに」という感情を乗せた雰囲気も心地よい。だから暑苦しくなく、寧ろホワッとした余韻をもたらしてくれる。
過去1聞き取りにくい主人公だったかも。笑 それはもちろん褒めている。津軽弁の強い訛を使いこなす駒井蓮さんにハマる人が多いのも分かる。あのヒロイン感で、メイドも可愛く、三味線も達者。朝ドラを観てるような安心感と暖かさ、そして、好きな時間がずっと流れていた。他にも黒川芽以さんとか横田真悠さん、中島歩さんとかのスパイスもきっちりかかっている。それぞれ抱えた境遇を自然に落とし込んでいるのも凄い。シスターフッドであり、青春であり、人間讃歌。その一方で、平たく落としこんだことを拾いきれなかったので、傑作とまでは写らなかった。でも、定期的に観たくなるような映画だと思う。
また、1番感心した、と言うと語弊があるが、ご当地映画としての機能が抜群の効用をしている。くすくす笑えるような会話も多かったし、戦争や景色といった、舞台にマッチした展開もグッとくる。
要素が詰まっているように見えて、整然としているから凄い。自分も思わず「けっぱれ」と思って見ていた。いとから良いところ見習わなきゃ…。笑
音が彩る映画
冒頭の授業シーンでの、「クラシック音楽のような」訛りの強い朗読。
ローカル線の気動車の排気音と振動。わらべ歌。
その流れでタイトルが出るのか!という驚きと山を望む美しい風景。
津軽弁を記録するフィールドワーク。
ちなみに日常会話のシーンでも、東北に縁のない私には内容が3割から8割程度くらいしか分かりませんが話の理解に支障なく、分からなさが却って耳に心地よい。
海の波音と焚き火。
心象を表す自転車のラチェット音。
人間椅子。
そして津軽三味線。
三味線の映画だと思って観ていると意外になかなか出てきません。三味線シーンを絞り込むことで一本の映画にうまくまとめられています。
とにかく音が気持ちの良い映画でした。
泣けない主人公がやっと…(泣)。
クライマックス直前、髪を梳いてもらうシーン。最後の方で、彼女の目に涙が溢れそうに?!思わず身を乗り出して見入ってしまった。
三味線の演奏も、素人目には堂々として見えたし、津軽弁も達者で、ヒロインを演じた女優さんにまず感心。
全編青森でロケをしたという風景も見ているだけで楽しい。訪れてみたくなる。
もの凄く個人的にやられたのは、祖母の台詞、「ままけ!」。
普段は方言などしゃべらないけど、田舎の知り合いなどと話した後、思わず出てしまう津軽ではない東北出身の亡き母が口にしていた台詞。母を思い出して涙が止まらなかった。
この映画、凄く好き、
人間椅子って
アノ横浜監督の新作と言うことで期待値マックスで観たら、割りと普通の青春モノでした。津軽弁が解りづらいなんて小さな問題。トンデモないオチが待ってるのかと期待したら、特に何事も起きず。原作ありきだから仕方がないか。地味すぎてヒットするのか勝手に心配。
映画を観たあと、関連動画(宣伝番組等々)をYouTubeで観て、さらに楽しめました
いい映画。
少女の成長物語。
成長物語でなくとも、女子の少女時代を切り取った映画は輝いてて、夢のようで 大好きですが、特に、この『いとみち』。
観れてよかった。
この映画に巡りあえて、幸せだなあと思った。
シングルマザー役の黒川芽以さんが、いとの髪をとかすシーンが好き。あと、岩木山の山頂のシーンも大好き (思い返すと、どのシーンも全部好きだけど……)。
映画を観たあと、YouTubeで青森放送の映画宣伝番組を観ました。
そのなかで、祖母役の西川洋子さんが、『映画で ででくるアップルパイ。リンゴ(=いと)を、ふんわりと、でも、しっかりと包んでいるパイ生地のように、周囲の人達(父親の豊川悦司さんや、祖母の西川さんや、メイド喫茶の人達)が、不器用ないとを優しく包んでいる……、そんな映画ですよ』とおっしゃってました。
祖母役の西川洋子さんは、高橋竹山さんの最初のお弟子さんなんですね。
たたずんでいるだけでも、雄弁で存在感があり、優しくて…… ほんもの でした。
そして、津軽三味線。
『ナビィの恋』を思い出した。津軽三味線も沖縄の三線も、土地にずっとねずいてきた音は、そして、それを奏で続けてきた人達は、圧倒的に、そして、普通ですごい。
主人公、いと役の駒井 蓮さんも、この映画で初めて知りました。自分の殻に閉じ籠ってる役だけど、顔も表情も豊か(何度も笑った)。津軽三味線も全く違和感なくて。
岩木山が見えてる日常。
去年、岩木山に登ったので、山頂も見たことのある景色でした。
本当にいい映画だった。
三味線をもっと聴きたかったなー
原作が大好きで、映画化の知らせに狂喜乱舞してクラウドファンディングまでした(笑)
実際、原作モノはハズレが多いし、好きな原作ほどハードルが高くなりがちなので、ここは津軽の風景と三味線の演奏シーンだけ観れればいいや、くらいの気持ちで映画館に足を運んだのだが…
いやいやどうして、期待値を遙かに上回る素敵な映画だった。
丁寧に創り込まれた脚本、丁寧な演出に丁寧なカメラワーク、そしてそれに応えるキャストの抑制が利いた上質な演技が画面から目を離せない幸せな2時間を与えてくれた。
まず主演の駒井蓮がとても魅力的。
序盤のおどおどした表情は"ブス"にさえ見えてしまうのに、徐々に少しずつ表情が軟らかくなり、クライマックスの三味線の演奏シーンでの柔らかい表情は本当に美しく魅力的。
でも実は、このシーンの表情は原作とは違うんだよね。
原作ではいとは相変わらず目を堅く閉じて歯を食いしばる必死の形相をしているのだけど、それは原作の中ではこのシーンでいとがこの表情で三味線を弾くことにちゃんと意味があった。
なので映画のいとの演奏シーンでの表情は本当に魅力的だが、それだけではこのシーンは浮きまくっていたはず。
でも、脚本がちゃんとこのシーンに繋がるように編まれていて、しかもそれが原作のイメージと乖離していないのが凄い脚本だ、と思った。
そしてそれに応える駒井蓮も、良い女優だなぁ。
あの親子喧嘩での怒りの形相には気圧されたもの。
豊川悦司は、やはりこの映画を引き締めている。思春期の娘との、ちょっとぎくしゃくした親子関係という空気感を、仕草ひとつで纏うなんて、いつの間にこんな上手い役者になったのか(^-^*)
いとの祖母のハツエ役が女優ではなく本物の津軽三味線奏者と聞いた時は「制作陣は分かってらっしゃる!」と大喜びしたのだけど、期待以上にちゃんと「女優」していた。素人っぽさはまったく感じなかったもの。
セリフは強烈な津軽弁でほとんど分からんかったけど、ハツエのセリフは原作でも記号で書かれていてさっぱり分からないので、これで良いのだ。いやこれでなくてはならないのだ(笑)
数少ない不満点を挙げるとすれば、映画は焦点をいととその家族に絞ったのは分かるが、智美がちょっとおざなりだったこと。
良いキャラで好きなんだがなぁ。
「おかえりなさいませ、ご主人様」の練習シーンとか、「なにその萌え記号の詰め合わせ、あんた超人か」の名セリフとか、智美関連の好きなシーンやセリフがあらかたカットされてるのは悲しい(笑)
イトテンキョーのエピソードも、原作だと後にいろいろ繋がってくるのだけど、青木の英雄シーンも見たかった気はするけど、まあ尺に収めるには仕方ないのか。
それともう一つの不満点は、三味線の演奏シーンが少ないこと(笑)
特にハツエの演奏シーンが足りない(笑)
ヴァン・ヘイレンはともかく、津軽じょんがら節くらいはたっぷり聴かせてくれるものと期待していたのに(笑)
いとの「エデンの少女」も、ああもうちょっと聴かせてよ!ってなった(笑)
原作ではすごく書き込まれた三味線のセッションのシーンが多いのだけど、いととハツエの競演シーンももうちょっと観たかった。
DVDの特典映像にでも入れてくれないかなぁ。
まあそれもクライマックスのいとの演奏シーンで少しは溜飲を下げたけど(笑)
あのシーンは本当に良かった。1年やそこらの練習であんなに弾けるものなのだろうか。
というわけで、ほぼいちゃもんのような不満を除けば文句なしの良い映画だったのだけど、惜しむらくは宣伝費をもっとかけられたらなぁ。上映館も少ないし、もっと多くの人に観られても良い映画なのになぁ。
M&Aで会社を騙してお金儲けしている人へ!
M&Aで中小企業の株を安く見積もって、高く売るというこすい商売している人にはこの映画の良さは分からないだろうな。発明、イノベーションは心がこもってないと起きない。金儲け目的では、イノベーション、発明は起きない。M&A見たいな、全体を荒廃させる商売は、搾取する商売はエンドレスではない。今のうちに、人を疑い、絶えず騙されていないか、気が気でなく、安心のないお金儲けの不幸な人生を、言い訳して、ごまかし、自分を騙しながら、日本でM&Aが通用しなくなるまで生きてください。私は、その間、自身の心を深め、魅力を育みます。人生はわけわからなくていいんだ。わけわからないまま進んでいいいんだ。生きることを分かって生きている人はいない。わけわからないは最大の魅力だ。何事にも答えがあると思っている人へ。答えなんてないんだ。なんでもいいんだ。あなたはそれでいいのか?私はこれでいい。私が許す!
ご当地映画ではない、普遍的な映画!
母が小さい頃他界し、言葉でコミュニケーションをとるのが苦手な青森の田舎に住む16歳の女の子いとは、弾いている時の格好が変という理由で津軽三味線を辞めていた。ひょんなことから青森駅近くのメイド喫茶でバイトを始めることになり…という話。
ポスターが、若い女の子がメイド服で三味線を持っている写真で、アイドル映画に見えて、豊川悦司さんが出ている良質な映画だとは見えなかったのだけれど、キネマ旬報で3人とも★4つという高評価だったので、拝見した。
青森のご当地映画に見えるかもしれないけれど、メイド喫茶内でメイドの先輩2人にガツンと言われることは、青森とは関係ない普遍的なことで、すごく共感した。
青森空襲記念館のシーンや、三味線の修理のシーンはドキュメンタリー的。私は『風の電話』は、日本の社会問題を詰め込み過ぎだと思ったんだけれど、本作の空襲記念館のシーンは、実際に青森の高校生は学校で見学に行きそうだし、その後のシーンがメインプロットに直結していたから、すごくいい使い方だと思った。
青森出身の主演の駒井蓮ちゃんは、演技をちゃんと拝見したことがなかった。普通の顔と笑顔が全然違って、主人公のいとはほとんど笑わないから、笑った時に観客の感情を揺さぶるインパクトがすごい!
おばあちゃん役を演じた西川洋子さんは、俳優でなく津軽三味線の奏者だそうだけれど、とにかく干した食べ物を持たせるところだとか、温かくて笑えてサイコー!
豊川悦司さん演じるお父さんも、娘をただ見守る表情がよかった。
【わーだば、おもしぇがっだ】
僕は、東北の山間部出身で、津軽弁はある程度理解できるが、本格的なのになると手に負えない。
耕一が、30年津軽に住んでも、津軽弁の全てを理解できないと言っていたが、方言としての成り立ちに他と異なるところがあるのかもしれない。
津軽三味線が奏でる曲は、津軽の厳しい風雪のようでもあり、それに前向きに立ち向かう津軽の人々のようでもある。どこか、タッグを組んで向かって行ってるようにも感じる。
津軽の過去の冷害による飢饉の話など出てくるが、津軽の人達は、団結して困難を乗り切ってきたのだ。
さて、映画は、青森の景気は決して良さそうには見えないし、いとの母親の不在や、内気な性格、メイドカフェの同僚やオーナーのあれやこれや、そして、父親と祖母の見守ってるようで、どうしても口を挟みたくなる揺れ動く中途半端な、いとへの親心などを散りばめて、少し泣けるけど微笑ましい構成になっています。
今は、昔みたいに人々が餓死するような冷害はないだろうし、リンゴみたいな付加価値の高い農作物まであって、まあ、ちょっとは豊かになったんだと思う。
でも、やっぱり、津軽の人達は、助け合って生きているのだなと…。
ユーロスペースの日曜朝一の回に行ったら、観光案内の他に、リンゴジュースをいただきました。
間違いなく加点対象です。
いとも、メイドカフェの面々も、お父さんも、おばあちゃんも、お友達も、みんなえがった。
霊峰・岩木山から眺める風景も雄大で、機会があれば、登山してみたい気がする。
ところで、レビュータイトルは、津軽弁では、「僕は、面白かった」というつもりで書いたのだけれども、合っているだろうか…笑笑。
全体的にポップ
津軽三味線や青森の暗いイメージ(私の勝手なイメージだが)が感じられない、爽やかポップンムービー♪
なにって、お?人間椅子!ってなって聴こえてきたあの曲が、この映画の明るさを表しているように思える。
悪い意味ではなく。
祖母と孫のセッションが良かったなぁ。もうちょっとおばあさんの津軽三味線、聴きたかった。
割と短めの爪にいとみちつけてて、痛くないのかなーって思った。
青森県津軽が舞台
人見知りで内気な津軽弁少女、
メイド喫茶で働くことで徐々変わり行く、
友人や従業員たちとの関わり、
亡き母と家族との蟠り解れる様、
青森の情風景と共に素晴らしく描かれ暖かい終幕、
青森出身主演の駒井連さんの方言は標準語の字幕が必要かも
しっかり練習したという三味線も見事!でした( ^ω^)
面白くて格好良くて優しい
ズーズー弁の恥じらい、滑稽さ、明るさ、熟練さ…あらゆる特徴を存分に楽しむことが出来る。三味線はそれを飾るモチーフです。言葉と言葉、心と言葉、人と人、人と魂…至極ナチュラルなヒューマンドラマを思う存分堪能できました。
音楽、三味線、雰囲気、すべてが優しくて格好良くて、じんわり心に響きました。笑って、そして泣けました。
正直全然注目していなかった作品ですが、興味本位で見たら思いっきり感動。しかも三味線なくてもいけるとまで思えたし─。個人的には、予想外の掘り出し物立ったような気がします。
我慢しなくていいんだよ、いと。
「聞き取れるようになるまで30年かかった。津軽弁全部聞き取るのは、今も無理。」と、東京生まれの父は言う。まさに、容赦なく津軽弁で喋りまくるこの映画のセリフを全部理解するのは無理だった。だけど、だからと言って標準語に寄せた言葉でこの物語を観たならば、けして同じ感想を持たなかっただろう。これは、津軽弁だから良いのだ。ここまで津軽弁を押し通す潔さに、津軽に生きる本人たちだと感じさせてくれる。せっかく、その言葉の持つニュアンスや柔らかさとかあるのだから。東京から来た、もしくは東京で住んでいた者たちだけが、都会と地方の隔てられた壁の存在をあらわすために標準語を使うからこそ、津軽弁が活きる。それは閉鎖的という意味ではなく、地元に根付くアイデンティティの象徴として。たとえ、スマホを使いこなしても、メイド服をまとっても、まごうことなき津軽人なのである。
そこにいるのは、弘前の高校に通い、青森市までバイトに出かける高校生いと。いい名前。亡き母は、さぞ三味線が好きだったのであろう、さぞ娘にその思いを託したのであろう、という熱い思いが伝わってくる。その母が後ろ姿と遺影でしか登場しないがゆえに、幼い娘を残して先立つ無念さというものが伝わっても来る。母の思い出を語らない(深い悲しみのゆえに語れない)父と祖母がその印象を深くする。いとは、今の自分の居場所と将来を迷い悩んでいる。自分なりに前を向き、何かを試し、そして、自分の得意技で勝負する。その過程が若々しくて好感しかない。距離を置いていた家族とも、自分から歩み寄る。時に、自分の技で。時に、相手の土俵で。"雪解け"と"融和"。それは、いと自身が成したことだ。なんていい子なんだろう。こうして、いとは、この先も一つ一つしっかりと成長していくのだろう。
父役の豊川悦司は当然のこと、バイト先のシングルマザー役の黒川芽以が見事。なにより、祖母役の女優は何者なんだ?と刮目した。津軽弁は青森出身ならまだしも、役者にしては三味線が上手すぎる。逆に三味線のプロだとするなら、孫を愛するその演技はとても自然体で特筆ものだった。・・・・と、ここまで書いて、ならググればいいか、と検索してみて驚いた。なんと高橋竹山の最初のお弟子さんだった。やっとここで「津軽のカマリ」にも出てたのをうっすら思い出した。あの竹山のスピリットを受け継いでいるんだもの、上手いわけだよ。ずしんと来るわけだよ。苦労人の竹山を見てたんだもの、演技だって情が通うはずだよ。もう一度、"竹山の弟子"という視線で、この映画を観たくなった。
ちなみにこの映画を新宿で見たが、周りは平日のせいもあり高齢者ばかりで結構な入り。こっちがわからないセリフでも、よく笑う。おそらく青森出身の方々なのだろう。みなさん、あなた方の育った土地の良さは、余所者にもちゃんと届いてますよ、と言ってあげたい。
ご当地映画は千差万別。提灯記事ならぬ提灯映画は数知れず。だけど、これは、当りだ。
全80件中、41~60件目を表示