「横浜聡子すごいな」いとみち Scottさんの映画レビュー(感想・評価)
横浜聡子すごいな
序盤の入りが絶品なのね。「え? 何?」となるシーンをつないで導入してくの。画も綺麗だし「こりゃ、面白いわ」と期待して入ってくの。
敢えて分からないようにしてる津軽弁もいいね。分からないけど、なんとなく分かるし、言葉が分からなくても大体わかるということが分かる。「けっぱれ」の発音も使い方もおかしいって言うの、海外に行った人が子供に「お母さんの発音おかしい」って言われるみたいで面白かった。
主人公がめちゃ素直なのがいいね。あんまり話さないんだけど、訊かれると思っていることを素直に言うし。津軽三味線が凄腕なんだね。これがアイデンティティに関わる映画なんだなと思って観てくの。
自然な流れでメイドカフェでバイトを始めて、そこの人たちが主人公のことを想って色々とやってくれるんだよね。みんなで旅行にも行って、仲間の色んな事情を知って、そこで母親代わりと思える人に大事な一言をもらって「これで主人公が変わっていくんだ!」ってなるの。
ここでお約束の危機がやってきてね。「さあ、立ち上がれ!」と三味線の出番だよね。
ここまで主人公を丁寧に描いてきて、設定として楽曲演奏で盛り上がる音楽映画にもなってるから「こりゃクライマックスは来るぞ」と期待してみてたんだけど、そこは案外すんなり流したの。
友達の好きな曲に三味線で伴奏付けたりしてたから、伝統曲を演奏した後で、現代楽曲の弾き語りでいけば大盛りあがりだ!と思ったけど、それをしないストイックさ。
そして過去の自分に「さようなら」をして前に進む分かりやすいラスト。
細かな脚本の技も面白いんだよね。ばっちゃが「これ持ってけ」って手作りお菓子みたいのを渡そうとするんだけど「いらね」と断って、でも次のシーンでは手にして出てきたり。それがちょっとした笑いのシーンかなと思ってると、お父さんと喧嘩するシーンで「持ってけ!」ってもう一回ばっちゃがやって面白いところとか。
画も一つ一つ綺麗だね。演出も面白くて良い。これがあるから「このシーン、いらないんじゃ?」っていうシーンも面白く観られるの。
ラストシーンもね、ヌルい気はするんだよね。ストイックさを捨ててライブでガーッと盛り上げて「どうだ!」って終わらせた方がカタルシスはある気がすんの。
でも画がきれいだし、「ちっちぇな」っていう一言や、そこのやり取りの演出、画の綺麗さで「まあ、いいかな」って気になるの。
ラストのカタルシス不足はあるけど、映画の力を存分に活かした作品だと思ったよ。
横浜聡子すごそうだから、他のも観てみよ。
干し餅でしたか。それっぽいと思ったんですが、青森にあるのか分からなかったので特定しませんでした。
僕の地元では氷餅と呼ばれてました。あれ、子供はそんなにおいしいと思って食べないですよね。