劇場公開日 2021年1月16日

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「よくできたお話、けどラストは評価分かれるかなー?」ウォーデン 消えた死刑囚 バリカタさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0よくできたお話、けどラストは評価分かれるかなー?

2021年2月8日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

イラン映画の「静」の素晴らしさを味わいました。

まず、お話がとっても面白いです。
刑務所の移転に伴う移動・移送時に死刑囚が行方不明。
それを幹にしたヒューマンドラマでした。
サスペンス色はそんなに多くはないですし、脱出物を主体とした物語でもありません。
時にコミカルに、とても人間臭い所長が話を回していきます。
この所長のキャラクターがとっても良いです。演者さんも良いですね。
実直な組織人、出世で小躍りする小物感、女性に好かれたいおじさん感・・・どれも見事、絶妙です。
この所長のキャラクターあっての本作ですね。
どこにでもいそうなおじさんが、仕事の責任、出世、人間の尊厳、不安定な司法の結果の狭間で葛藤しながら必死に目の前の出来事に対峙していく様は、それがイランの方々ひいては、人間のある物に対する葛藤を表しているのではないかなぁ?と思いました。
世界各国で議論が絶えない死刑制度やイランの不安定な司法制度へのアンチテーゼではないでしょうか?
しかし作風はどこかのどかな感じがあり、淡々と進んでいくのですね。それが、サスペンス色を弱め、見やすい社会派ドラマに仕上げられているのかな?

オープニングのショット、そして種明かしのラスト。そこには本作のキーとなるものが登場します。
その演出こそが本作の中でのこの「キー」を際立ててますし、賛否分かれる気がしますが、最後の判断にこそ制作サイドの願いのようなものを感じました。

イランという国の内情を僕は知りません。映画で描かれることしか知りません。ですから全くもって勘違いしているのかもしれませんが、本作と併せて「ジャスト6.5」を鑑賞し受けた印象は、イランの司法側の乱暴な部分の多さです。これが事実なら、目も当てられないと思いますし、本作の制作サイドの願いもわかるような気がします。

どの国も人間という生き物がいる限り歪な世界ができるのですね。秀作です。

バリカタ