劇場公開日 2021年3月26日

「タイトルなし」ノマドランド 柴左近さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0タイトルなし

2021年4月7日
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鑑賞方法:映画館

コーエン兄弟作品でお馴染みで、近年では「スリー・ビルボード」で強烈な存在感を見せつけた名女優フランシス・マクドーマンドが原作本に惚れ込み、映画化が実現した本作。
マクドーマンドは主演も勤めているのだが、全編通してすっぴんで、ノマドの役に説得力を出すために実際に車上生活をしたり、日雇いの仕事にも従事したというのだから、その本気度が窺える。
マクドーマンド以外の殆どの出演者は実際に車上生活を送る人々で、役名も本名である。

始終静かに淡々と進んでいく展開だが、そこには家を持たない者たちの様々な思いが溢れていて、退屈することなく見いってしまう。
ノマドの人たちをただ社会的弱者と決めつけるのではなく、自らが選択し社会のシステムに組み込まれないで生きる人として描いているのが良かった。不幸な目に遭って放浪をしている人もいるだろうが、自分の意思で生きている人たち。マクドーマンド演じるファーンも含め、彼女たちの前には日々困難が立ちはだかり、悩んだり葛藤するが、自然を側で感じ、仲間との交流を大切にする。それが本来生きるということである。それを知っている人たち。
ノマドたちの世界では、さよならがない。一ヶ月後か一年後か、いつになるかはわからないがいつかどこかで再開できる。大切な何か、誰かを密かに夢見て彼らは今日も車を荒野に走らせる。

傑作だと思うが、オスカー取るぞ!という勢いを凄く感じてしまったので、4.5

柴左近