「裏庭の砂漠」ノマドランド Pocarisさんの映画レビュー(感想・評価)
裏庭の砂漠
風景や自然が心情を語る映画。
怒りや悲しみをもっとストレートに表現してもいい題材なのに、あえてそこは抑え、人と交わす言葉と自然とで「ノマド」の生き様を浮かび上がらせようとする。
主人公はノマドをやめて、一箇所で暮らすチャンスもあった。しかし、彼女はそうしなかった。
都市ごと閉鎖された土地にある、かつての自宅の裏庭に広がる砂漠の風景。
おそらく彼女は、この街で亡夫と共に暮らした時間の中に生き続けることを選んでいる。
背後にかつての「ハウス」を感じながら、裏庭の延長のような砂漠の中に居続けることを選んでいる。
そのほかの新たな時間は不要だし、その生活こそが彼女の生きるべき場所なのだ。
「ノマド」として生きることを敢えて選ぶ生があるとさたら……
「街ごと閉鎖」という過酷な現実の先に広がる人生を切々と感じさせてくれる、傑作といっていい作品。
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