劇場公開日 2021年3月26日

「映像美と美しい音楽に隠れた社会問題」ノマドランド あささんの映画レビュー(感想・評価)

4.0映像美と美しい音楽に隠れた社会問題

2021年3月26日
iPhoneアプリから投稿

ノマド生活をする人の多くが高齢者でそれぞれ深い悲しみや喪失感を抱えて生きている。「いつかどこかでまた会える」最後のサヨナラを言わないノマド生活はそんな彼らにとって居心地が良いけど、現実的にはめちゃくちゃ過酷。ましてや高齢者。
夫を病気で亡くし、リーマンショックの余波で家も住所さえも失ってしまった主人公がノマド生活を通して出会う人々との描写ーー。彼女達のようにこうするしか無かった人たちもいる一方で、その生活を楽しんでいる人もいるわけで、、、

もうこれはその人の価値観でしかないから、私たちがとやかく言っても無駄である。

劇中のポエムが印象的で、リアルノマドが出演することによってより説得力がある。

静謐な作品で、飲み込まれそうになるほどの広大な大自然が美しく、音楽も秀逸。これは劇場で見るべきだと。

あえてマイナス点を挙げるならば、時間がもう少し短くても良かったのではないかな、と。長尺はわかりやすい脚本とスピード感がある程度ないと退屈に感じる人が多くなっている気がする。

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数年前から日本ではアドレスホッパーやバンライフという言葉を耳にするようになり、コロナ禍によって、特集が組まれたりより注目を浴びるようになった。

土地や道の狭い日本ではバンライフを送るには簡単ではなさそうだけど、広大な土地を持つアメリカではバンライフは珍しくもないとのこと。そしてノマドはアメリカの昔の開拓者、アメリカの伝統的なライフスタイルでもあるらしい。

withコロナによってこれまでの生き方や価値観、生活スタイルが大きく揺れ動いた私たちにとって、本作は、今こそ観るべき作品なのかもしれない。

あさ