「60年前の惨劇が今まさに行われている侵略と併せ鏡になっている壮絶な皮肉に絶句するずっしりと重いドラマ」親愛なる同志たちへ よねさんの映画レビュー(感想・評価)
60年前の惨劇が今まさに行われている侵略と併せ鏡になっている壮絶な皮肉に絶句するずっしりと重いドラマ
激しい物価高騰と物資不足、そこにかぶさる給与カット、今まさに我々に襲いかかってきていることに耐え切れなくなった労働者達が意を決して起こしたデモ。民衆に紛れて首謀者達の情報収集に奔走するKGB。あくまで銃を所持せず沈静化を図ろうとするソ連軍。そして突如鳴り響く銃声と阿鼻叫喚。錯綜する現況の中で共産党員としてデモの首謀者を逮捕すべきと軍部に進言した共産党員リューダは一人娘スヴェッカがデモに参加した後行方不明になったことを知り、広場にも検死所の廊下にも横たわっている無数の亡骸に毅然と向き合っていく。リューダの苦悩を扇情的に描写していないので、時折リューダが見せる焦燥や狼狽が際立ちます。事態を収拾しなければいけない共産党員としての立場と、激しく対立していても愛してやまない娘の身を案じる母親としての立場に引き裂かれそうになるリューダの決意が示される終盤までに散々見せつけられる地獄絵図が今テレビやネットを通じて見せつけられているものと重なる既視感にも胸が痛くなります。過去の惨事を糾弾すべく製作されたであろう映画が現政権が今まさに行っている侵略の併せ鏡となっている壮絶な皮肉に絶句しました。静かで地味ですが重い使命を帯びた作品です。
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