劇場公開日 2022年4月8日

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「1962年6月1日~3日のノボチェルカッスク事件(ロシア南西部、ウクライナ国境沿いの州にある町)2019年6月~9月撮影の映画」親愛なる同志たちへ talismanさんの映画レビュー(感想・評価)

4.01962年6月1日~3日のノボチェルカッスク事件(ロシア南西部、ウクライナ国境沿いの州にある町)2019年6月~9月撮影の映画

2022年4月9日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

怖い

難しい

工場労働者によるストライキに市民が加わり5千人規模のデモに発展した。戦車が町に入り多くの死者、負傷者、処刑者、投獄者を出したこの事件は、ソ連崩壊までの約30年間隠蔽されていた。映画ではKGBがまず銃を向けたと主人公に言わせている(監督独自の歴史解釈であろう、とパンフレットにある)。

自分が知らないことは書かなくてもと思ったけれど、この映画監督はタルコフスキーと大学の同級生で何作も共同で脚本を書いた(と、パンフレットにあった)。タルコフスキーはソ連から亡命した。タルコフスキーの映画は難しいけど大好きだ。何よりロシア語の響きが美しい。ああいう映画を作る素晴らしい土台がロシアにはある。今のロシアの若い人達は両親や祖父母の世代と喧嘩し、プーチン=ロシアからとにかくまず出て行っているケースが多いと新聞や雑誌で読んだ。ロシアから出て行っても辛く対応されているかも知れない。ロシアから出たくても出ることができない人も沢山いるだろう。ロシアに踏みとどまって反戦の声をあげ続けている人達も多いと思う。世界中にいる、ロシアを故郷とする人達のことを思う。

モノクロの映像には、美しい自然や子犬達が母犬の乳を飲む場面も映る。一方で、無差別に人々が撃たれて大量に死ぬ様子、死体が積み上げられている様子に言葉を失う。広場の血糊があまりに大量で落とせない、という報告には「その上にまたアスファルトを敷き直せ」という指示。色の濃淡が異なる広場の地面。その広場で何もなかったかのようにあえてダンスパーティーが企画され舞台作りや飾り付けがされる。夜は外出禁止令が出ているが、その晩だけは午前2時まで屋外でパーティーを楽しんでいいとする。もちろん、党の青年部からも参加者が動員される。

人々は賃下げ、物価上昇、品不足に怒った。だからデモをして訴えた。モスクワの高官を交えた緊急会議では「軍による市民への発砲は憲法違反です」と軍司令官が発言するが一蹴される(この箇所が一番ショックだった。日本でも憲法の意味と役割を知らない人々や政治家が沢山いる)。モスクワの厳命と会議の同調圧力の雰囲気は強烈だ。軍部とKGBの関係が必ずしも良くないことも伺えた。旧東独もそうだったようだが、中央(ベルリン/モスクワ)の力がとにかく圧倒的過ぎる。

主人公のリューダは共産党員で市政委員だから顔見知りから食料、菓子、マッチなど優先して入手できるし見返りにストッキングなどを渡して人間関係も怠らない。「キツい女」と恋人から言われるほどしっかりしている彼女は、老いた父親と18歳の娘と暮らすシングルマザーだ。ずっと信じてきた国のあり方に、娘がこの事件に関わったことをきっかけに悩み苦しむ。「しばし」の苦難?「しばし」っていつまで?映画では、高官に「この(ソ連)社会は外には誇ることが出来ない」と言わせている。

talisman