劇場公開日 2022年6月4日

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「「緑」が表すものとは?」ニューオーダー Minaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0「緑」が表すものとは?

2022年9月18日
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SFディストピアはまぁまぁ胸糞悪くなる事もあるが、本作の胸糞度はかなり高めだと思う。子どもが興味を持つ映画では無いが、PG-12で公開された事に違和感を覚える。
上流階級の結婚パーティーにて暴徒化した市民が押し寄せ、地獄絵図と化す展開なのだが、それはこれから始まる悲劇の発端に過ぎず、目を疑うシーンが満載の衝撃展開となっていく。
確かに金持ちの人間には成功と闇がチラつき、庶民からすると例えばその人物が汚職等で財産を失ったりすると「ざま見ろ」と心のどこかで思うだろう。本作では短い本編の中でそんな上流階級の人間、下流階級の人間それぞれの光と闇を映し出している作品となっている。
主人公のマリアンは家がかなりの資産家で、結婚パーティーに数多くの著名人等が訪れる家系だ。そんな中、元使用人の男性が訪れ、妻の手術代を援助して欲しいと申し出てくる。それでも主人公以外は冷たくあしらい、追い返してしまう。このシーンは我々一般市民から見た金持ちのイメージ像だろう。コネや賄賂等金で解決して私利私欲を満たすのに、困っている低所得層には見向きもしない。これが彼らにとっての光と闇の一部である。そこに押し寄せた暴徒化した市民。彼らには上流階級の家々を襲い、金品を略奪して暴行や殺害をする事が支配からの自由を表している。だが、最終的には軍の鎮圧によって大勢が命を落とすという闇が訪れる。冒頭で芸術的な演出に多く「緑」が使われるが、緑は平和の色であり、緑の羽募金等で一般的にも知れ渡っている。ところがその緑を不快感たっぷりに描いており、生理的な嫌悪感をもよおす位だ。その理由が終盤で描かれているという構図なのだろう。終盤で描かれるあの新体制が平和であり自由と考えるのか否かと観客に訴えかける様になっているのだと思う。
本作は明確には描かれないものの、メキシコが舞台(あるいはメキシコを模した架空の国)だが、時代背景も描かれていない為、SF感を感じることは無い。恐らく近い未来のイメージだが、時代は進めど国によっては情勢が不安定だったり、市民が自由に思想、発言が出来ない国や地域がある事は変わりないだろう。我々日本人には現実味が湧かないかも知れないが、この出来事をSFではなく、現実にも近い事が起きている事も忘れてはならない問題だ。本作はあくまでも1つの作品であるが、そんな事を考えさせられる様なテーマとなっている。1人でじっくりとこの現実味を帯びたSF物語を味わうことをお勧めしたい。

Mina