ボヤンシー 眼差しの向こうにのレビュー・感想・評価
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渡る世間に鬼はなし?
蟹工船でしょう。何で、団結しないのかなぁ?
気がつくの遅すぎ。もっと早く気付けば、もっと楽に解決出来たのに。まぁ、実話に基づく、フィクションだから、仕方ないけど、小林多喜二の蟹工船のほうが遥かに救われる。こう言ったメッセージ性の強い映画は、救われなければならない。ましてや、平和な故郷を捨てた意義が全く見えてこない。あり得ない決断とあり得ない結末。どんな状況であれ、殺人を重ねた事に代わりはない。他にも解決方法があったろうし、切羽詰まった悲壮感がこの演者にはない。演出が悪いのか?演者が悪いのか?まぁ、どっちも悪いのかも。
大乗仏教と小乗仏教の違いか。団結する日本人の方が良いと初めて思った。
現代版蟹工船
漁業での奴隷労働、まさに蟹工船の世界。
主人公の14歳の少年は学校にも行けず過酷な労働に耐えかね、バンコクの工場で稼ぐことを夢見てブローカーを頼りに家を出る。しかしブローカーに払える金がないため、工場の筈が漁船に乗せられる。サディスティックな船長に目を付けられて周囲の大人が1人また1人と死に追いやられ、どこまでいっても海以外何も見えず逃げ場もない中、同じ年齢から漁業で生きてきた船長に目をかけてもらえる主人公。お前の家は死ぬまでこの船だと言われて絶望しか感じない。
この中では搾取しているのは成り上がりの船長達だが、少年の目から見ても憧れではない。それは船長達の人間性の問題だけでなく、彼らもまた先が見えない暮らしだからでもある。
こういった非人間的な労働によって成り立つ経済というのが我々の生活にあるということを忘れてはいけない。これは漁業だが、例えば某ファストファッションTシャツ定価590円とは一体どうなってるのか?ということではないか。
主演の少年の瞳の力が素晴らしいのと、船長の何とも言えない怖い顔!どこで見つけてきた⁈って感じ。主人公が親しくなる妻子持ちの出稼ぎ労働者がラグビーの稲垣選手に似てる(笑)
【"今日からこの船がお前の家だ、死ぬまでな " 苛烈な状況下、14歳の少年が"経験"した事を描く強烈な作品。】
-東南アジアの農村の貧困化は今に始まった事ではない。長男以外は都会に出て働く事は当たり前という事は知っていた積りだが、ここまで就業状況が悪化しているとは・・。ー
■印象的なシーン
1.14歳のカンボジアの農村で暮らすチャクラ(この映画で、彼の名前が呼ばれるのは序盤のみ・・)、は次男坊であるが故の、長男との”格差”に納得がいかないシーン。
ー日本の、江戸時代以前のようである。今もか・・。-
2.彼が、新しい土地を求めて村を後にした後の複数ブローカーの手を経て到着したところ。又、その過程。
ー中間マージン搾取が凄いな・・-
3.船上での、チャクラの目付きの変化 怯えた目から、イロイロな出来事を見て、ドンドン目が据わって来る・・。
・年上の家族持ちでチャクラが唯一心を許せた男が”船長”たちから受けた仕打ち。
-船長じゃないな・・。ギャングか・・-
・体力の無い男、”船”から逃げ出そうとした男の末路。
・奴隷のような数々の扱い。寝床の悲惨さ。
・チャクラのしたたかさも増していき・・。
-生き残るには、必要か・・。組織と同じだな・・。-
・奴隷同士でも、反発、いじめが起きる・・。弱者の中のヒエラルキーか・・。
4.ある日、網に人の大腿骨が掛かり、チャクラは・・
-海にモノのように投げ捨てられた男たちの姿がよぎるな・・。-
<何度も何度も、”船長たち”に振り下ろされる大腿骨。そして、"弱者の中のヒエラルキー"の頂点に立った少年が船を向けた場所。
漸く地元に戻り、農作業をする父の後ろ姿を見て、彼が流した涙の意味は、イロイロと考えられるだろう・・。
”大金”を持って、少年は家に戻るのだろうか・・。それとも・・。
鑑賞後、重い気持ちになるが、心に残る作品であった。>
理解から実践へ
世の中には劣悪な環境の中生きているものはごまんといる。社会的問題になっている東南アジアの奴隷労働者たちももちろんその一部である。そんな東南アジアの奴隷労働者として働かされている14歳の少年の作品である。
貧しい家庭に生まれ育ち、家庭内で働くことも当たり前となっていた日常。そんな環境から逃げ出す事を決めた主人公の少年チャクラ。
当初は金銭が貰えて労働できると考えていたが、実際は金銭も貰えず十分な食料や睡眠も与えられず、地獄のような環境で奴隷労働させられる毎日を送ることになった。
逃げたものは目の前で無残に殺され、また主に海上にいる為逃げるという選択肢すら与えられない環境である。
そんな毎日を過ごしていくうちに周囲は精神的にそして肉体的に壊れ殺されている中でチャクラは強く逞しく育っていく。
ひどい仕打ちをした奴隷仲間を殺した事をきっかけに、奴隷として扱う3人の雇用主達を殺し自由を得て作品は終える。
犯罪者達を殺す事の可否はともかく、本来は経験しなくて済む事をしてまで自由を得るためにあらゆる事を経験して生きるチャクラの姿に強く心を打たれた。
セリフも少なくまさにノンフィクションに近いドキュメンタリーのような作品。その為早い段階で見入ってしまう。
この作品に没入すればするほど自分が幸せな環境で過ごしてきた事への感謝の気持ちと同時にこのような社会問題になにもできない無力さを感じ心が揺れ動かされる。
この問題は決してカンボジアをはじめとした東南アジアだけの問題ではない。法が整備された日本ですら外国人雇用を増やし、低賃金や長時間労働などをはじめとした違法労働などをさせて罰せられた企業もいくらか報道された事もある。発覚したのは一部でありどこまでそういういった状況が社会的に蔓延しているのかは未知数である。
もちろん違法労働、奴隷労働だけではない。弱者に対してその弱い立場を利用し更に追い詰めるような事案はいくらでもある。
こういう作品を観ていると弱者の気持ち、環境の一部を少しでも理解することに繋がる事ができる。
その理解から次は身近にいる弱い、弱っているものへの立場を時には助け、時には優しく接する事ができるきっかけに繋がるのではないか。
この作品を観て感じた事を大切にし、決して忘れる事なく優しい人間でありたいと強く思う。
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