ボヤンシー 眼差しの向こうにのレビュー・感想・評価
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少年が見た地獄
現在でも20万人のカンボジアやミャンマーの男たち(子どもを含む)が奴隷同然で、 タイの漁業に従事させられているという現実があるという。 発展途上の国からの搾取の連鎖。 不法入国のブローカーは、手数料を払った者には工場勤務を手配し、 払えない者は容赦なく売り飛ばす。 入国してからブローカーには借金扱いにして、これから働いて金を返せばいい、 なんていう甘い考えは通用しない。 一番過酷な漁船に売り飛ばされ、奴隷として働かされるという地獄。 人の命の何て軽いこと… 少年の眼差しが、どんどん変化していく。 残酷に人が殺されるのを目の当たりにし、そしてそれに加担させられる。 いつ殺されても不思議ではない極限な状態の眼差しに変わっていく。 この作品はフィクションではあるものの、似たり寄ったりの現実は確かに存在する。 いつか、こんな地獄のような世界が地上から消えますように。
渡る世間に鬼はなし?
蟹工船でしょう。何で、団結しないのかなぁ?
気がつくの遅すぎ。もっと早く気付けば、もっと楽に解決出来たのに。まぁ、実話に基づく、フィクションだから、仕方ないけど、小林多喜二の蟹工船のほうが遥かに救われる。こう言ったメッセージ性の強い映画は、救われなければならない。ましてや、平和な故郷を捨てた意義が全く見えてこない。あり得ない決断とあり得ない結末。どんな状況であれ、殺人を重ねた事に代わりはない。他にも解決方法があったろうし、切羽詰まった悲壮感がこの演者にはない。演出が悪いのか?演者が悪いのか?まぁ、どっちも悪いのかも。
大乗仏教と小乗仏教の違いか。団結する日本人の方が良いと初めて思った。
家畜の餌以下の命の哀れ
この映画は世界一豊かな食糧大国オーストラリアの制作陣によるもの。東南アジアの漁業は約20万人の奴隷労働者に支えられている事実を発信する目的に制作されたと思われる。 カンボジアの貧農の次男が主人公。長男ばかりが依怙贔屓される毎日に嫌気がさし、自立の方法を模索するなかで、友達からタイへの密入国を手引きする闇ルートがあることを知らされる。家出してタイで一旗あげて、親たちを見返してやろうと、夜明前にブローカーのワンボックスに乗り込む。地獄の沙汰も金次第で、国境で満足な金が払えないと人身売買ルートに廻され、漁船での過酷な奴隷労働を強いられる。主人公とともに銃をもつ船長たちに一度は抵抗した女房子供持ちの男の最後は下半身と上半身ににロープをかけられ、船を走らせるとロープが締まり、胴体を絞められて殺されるというまるで古代中国の処刑のよう。主人公は船長に船のアクセルを握らされ、処刑執行人にさせられる。もし、歯向かったらお前もこうなるんだぞと、脅しでコントロールするのだ。底引き網にかかる魚は白く変色した小魚やシャコみたいなものばかり。それをドラム缶に詰める。冷凍設備もない木造船。家畜のエサの原料にしかならない。たまに、人間が食べられる大物(サバ、タイなど)が混じっていると、船長に持って行ってご機嫌をとる少年の精一杯のサバイバル術が哀れで仕方ない。船長はいう「大人より素直な子供のほうがいいな。」それを見ているベトナムからの奴隷労働者に恨まれる。奴隷どうしのリンチもある。底引き網には人間の骨も引っ掛かる。拳銃を持っているのは船長だけ。船長の仲間は二人。 終始、主役の少年の眼差しがよかった。
この話はフィクションだけど現実なんだろうな。
本作最後のクレジットで伝えられる現実に驚愕し、 この映画で描かれた世界は現実であり、今も多くの 人間が辛い状況なんだろうと思います。 本作で描かれる雇われる側の人間の生活は 想像を絶します。えぐいです。 人間がどんどん壊れていきます・・・。 本当なのか?と・・・しかし、きっと本当。 でも、それで回っている世界があるということが 悲しくて切ない。 せめてもの救いは主人公の人間としての強さ。 彼のこれからの明るい未来を願わずにいられない。 それは同じ境遇の多くの人たちに対しても同じく。
家族と暮らす「青い家」が1番なんだ 一緒にいることが幸せなのだ。 彼の涙がそう語った。
映画の最初からラストに向かって、どんどんと青年が成長し、顔つきが変わっていく演出は見事だ。 撮影期間を必要以上に永くとったのだろうか? いかにも”居そうな船長”の存在感と演技は人間味があり、実にうまい。 それ以外の演者の演技も申し分なく、監督の演出の素晴らしさが光っていた。 バストショットが多い撮影もTVドキュメンタリー感がでており、迫力と臨場感があった。 ただ、タイ外洋の設定に沿った”抜けるような海原”のカットが幾つか欲しかった。 これはカメラマンが気を利かせて、保険的に撮っておくべきだろう。 また、ストーリー的にもリアルさの意味でも、 船長たちが少年に、もう少し操舵を教えた方が良かったと思う。 女の子は売春婦へ、男の子は奴隷となって、ブローカー達に転売され続け、命の重みはない。 半世紀以上前なら判るが、2000年を過ぎた今日ても、 このような極悪環境で生きている人が、いる事がとてもショックだ。 東南アジア全域にわたる貧富の差という「社会構造」が悪いのだが、 1番悪いのは教育を受けたいない貧困層は自分の手で、貧困さを解決しようとせず 産まれた環境に流されることを”良し”としている事なのだろう。 こんな事を何代繰り返していても、何も変わらない。 しかしそれを自力だけで打破しようとした主人公の行動は建設的で素晴らしい。 また働かされる場所でも、 適応能力があり、辛抱強く、意志の強さも備え”生きる力”は十分だ。 少年が家に帰った後をもう少し、観たい気もするが、 「あと、もうちょっと」のところで終える脚本はすばらしく 最後に少年の流した涙は”何が正解”か、僕たちに答えを教えてくれたような気がした。 現代版「青い鳥」が僕らに教えてくれた事は 運命に逆らわず、不満をもたず、1日1日を精いっぱい生きることが本当の幸せなのだと そして明日 少年はまた殺虫剤を撒くだろう。 この映画を観たら、昔の映画だが、 本映画とは違った「太陽がいっぱい」を観て、主人公を比べたくなった。
シンプルかつ美しく描かれている
悪徳ブローカーによって、闇漁船で強制労働させられる少年の話。 社会派作品だが、凄くシンプルだし、 ラストの少年の表情はとても美しい。 少年が生き残るにはああするしかなかったのだが、 もはやあの現実ではそれを咎める事はできない。 いや、むしろ結構すっきりだった。 この映画の最大の良さは少年視点のカメラワークだと思う。 海上での風景や少年の表情の映し方などが秀逸。 良作であった。
いくつもの眼差し
貧困家庭に生まれ、学校にも行けず父親から働かされている14歳の少年チャクラが、自分で稼ぐため家を出ていくことから巻き起こる物語。 聞いていた話とは違い、漁船に乗せられたチャクラ達。そこで、暴力的な船長達から奴隷として扱われ、歯向かうものはそれこそ魚のエサのように海に捨てられる。 当然給与などもらえるわけもなく、来る日も来る日も狭い船上で重労働を強いられるチャクラ達。。 目覆いたくなるような描写の連続だが、その中で逞しく生きるチャクラの姿。 彼の決意が行動となって表れた時の眼差しは、とても14歳には思えない。 映画としては、粗ずっと狭い漁船の中での出来事を延々と観ているのにも関わらず、全く飽きることがないし、悪役の役者さん、何より主人公のひとつひとつの表情づくりがとても素晴らしかった。 船上とは違い、荷台のシーンで人の優しさに触れた時のチャクラは、まごうことなき14歳の男の子の顔をしていた。 ラストシーンも特筆モノ。 実際に、このような環境下にいる人が世界には大勢いるということに改めて気づかされるとともに、平和な境遇にいられることに感謝する作品だった。 もっとたくさんの劇場で公開されてほしい。 そして関係ないけど、主人公の役者さん、誰かに似ているなと思ったら、元K-1並びにS‐cup王者のブアカーオによく似ていると思った。
現代版蟹工船
漁業での奴隷労働、まさに蟹工船の世界。
主人公の14歳の少年は学校にも行けず過酷な労働に耐えかね、バンコクの工場で稼ぐことを夢見てブローカーを頼りに家を出る。しかしブローカーに払える金がないため、工場の筈が漁船に乗せられる。サディスティックな船長に目を付けられて周囲の大人が1人また1人と死に追いやられ、どこまでいっても海以外何も見えず逃げ場もない中、同じ年齢から漁業で生きてきた船長に目をかけてもらえる主人公。お前の家は死ぬまでこの船だと言われて絶望しか感じない。
この中では搾取しているのは成り上がりの船長達だが、少年の目から見ても憧れではない。それは船長達の人間性の問題だけでなく、彼らもまた先が見えない暮らしだからでもある。
こういった非人間的な労働によって成り立つ経済というのが我々の生活にあるということを忘れてはいけない。これは漁業だが、例えば某ファストファッションTシャツ定価590円とは一体どうなってるのか?ということではないか。
主演の少年の瞳の力が素晴らしいのと、船長の何とも言えない怖い顔!どこで見つけてきた⁈って感じ。主人公が親しくなる妻子持ちの出稼ぎ労働者がラグビーの稲垣選手に似てる(笑)
【"今日からこの船がお前の家だ、死ぬまでな " 苛烈な状況下、14歳の少年が"経験"した事を描く強烈な作品。】
-東南アジアの農村の貧困化は今に始まった事ではない。長男以外は都会に出て働く事は当たり前という事は知っていた積りだが、ここまで就業状況が悪化しているとは・・。ー
■印象的なシーン
1.14歳のカンボジアの農村で暮らすチャクラ(この映画で、彼の名前が呼ばれるのは序盤のみ・・)、は次男坊であるが故の、長男との”格差”に納得がいかないシーン。
ー日本の、江戸時代以前のようである。今もか・・。-
2.彼が、新しい土地を求めて村を後にした後の複数ブローカーの手を経て到着したところ。又、その過程。
ー中間マージン搾取が凄いな・・-
3.船上での、チャクラの目付きの変化 怯えた目から、イロイロな出来事を見て、ドンドン目が据わって来る・・。
・年上の家族持ちでチャクラが唯一心を許せた男が”船長”たちから受けた仕打ち。
-船長じゃないな・・。ギャングか・・-
・体力の無い男、”船”から逃げ出そうとした男の末路。
・奴隷のような数々の扱い。寝床の悲惨さ。
・チャクラのしたたかさも増していき・・。
-生き残るには、必要か・・。組織と同じだな・・。-
・奴隷同士でも、反発、いじめが起きる・・。弱者の中のヒエラルキーか・・。
4.ある日、網に人の大腿骨が掛かり、チャクラは・・
-海にモノのように投げ捨てられた男たちの姿がよぎるな・・。-
<何度も何度も、”船長たち”に振り下ろされる大腿骨。そして、"弱者の中のヒエラルキー"の頂点に立った少年が船を向けた場所。
漸く地元に戻り、農作業をする父の後ろ姿を見て、彼が流した涙の意味は、イロイロと考えられるだろう・・。
”大金”を持って、少年は家に戻るのだろうか・・。それとも・・。
鑑賞後、重い気持ちになるが、心に残る作品であった。>
眼差しの向こうに希望は見えるのか?
最後のエンドロール前に流れるテロップに衝撃を受けた。 経済を回す為の必要悪のつもりで国は傍観しているだけなのだろうか? 全体が豊かになるために切り捨てていい部分に本件はあたるのだろうか? どこの国にも日の当たる部分と日の当たらない恥部はあるのだが、家族の顔をまともに見ることも叶わないような諸行に駆り立てられた主人公の気持ちをおもんばかると 何ともやりきれない。
理解から実践へ
世の中には劣悪な環境の中生きているものはごまんといる。社会的問題になっている東南アジアの奴隷労働者たちももちろんその一部である。そんな東南アジアの奴隷労働者として働かされている14歳の少年の作品である。
貧しい家庭に生まれ育ち、家庭内で働くことも当たり前となっていた日常。そんな環境から逃げ出す事を決めた主人公の少年チャクラ。
当初は金銭が貰えて労働できると考えていたが、実際は金銭も貰えず十分な食料や睡眠も与えられず、地獄のような環境で奴隷労働させられる毎日を送ることになった。
逃げたものは目の前で無残に殺され、また主に海上にいる為逃げるという選択肢すら与えられない環境である。
そんな毎日を過ごしていくうちに周囲は精神的にそして肉体的に壊れ殺されている中でチャクラは強く逞しく育っていく。
ひどい仕打ちをした奴隷仲間を殺した事をきっかけに、奴隷として扱う3人の雇用主達を殺し自由を得て作品は終える。
犯罪者達を殺す事の可否はともかく、本来は経験しなくて済む事をしてまで自由を得るためにあらゆる事を経験して生きるチャクラの姿に強く心を打たれた。
セリフも少なくまさにノンフィクションに近いドキュメンタリーのような作品。その為早い段階で見入ってしまう。
この作品に没入すればするほど自分が幸せな環境で過ごしてきた事への感謝の気持ちと同時にこのような社会問題になにもできない無力さを感じ心が揺れ動かされる。
この問題は決してカンボジアをはじめとした東南アジアだけの問題ではない。法が整備された日本ですら外国人雇用を増やし、低賃金や長時間労働などをはじめとした違法労働などをさせて罰せられた企業もいくらか報道された事もある。発覚したのは一部でありどこまでそういういった状況が社会的に蔓延しているのかは未知数である。
もちろん違法労働、奴隷労働だけではない。弱者に対してその弱い立場を利用し更に追い詰めるような事案はいくらでもある。
こういう作品を観ていると弱者の気持ち、環境の一部を少しでも理解することに繋がる事ができる。
その理解から次は身近にいる弱い、弱っているものへの立場を時には助け、時には優しく接する事ができるきっかけに繋がるのではないか。
この作品を観て感じた事を大切にし、決して忘れる事なく優しい人間でありたいと強く思う。
不法な労働環境から脱するために
東南アジアやアフリカでの不法な強制労働とそれに伴う悲劇がいまだに後を絶たない。 2013年4月にバングラデシュの首都ダッカ近郊で発生した「ラナ・プラザ崩落事故」は、著名な大手アパレルの下請けの過酷な実態が明らかになった有名な事件だ。 全世界で約1億7千万人の子どもたちが働かざるをえない状況にあり、今でも人身売買が当たり前の国もある。 私たちが日頃手にする商品は、新興国の過酷な労働環境下で生産・加工されているものも多い。前述の衣料だけでなく、水産加工物やコーヒー豆、カカオなど普段口にする食品も多い。 日本を含めた先進国が恩恵を受ける低価格の構造は、裏を返すと生産プロセスの歪みに直結し、この映画の悲劇は私たちと関係のない話ではない。 以前は「途上国」だった日本でも同じような問題は存在した。小林多喜二著の「蟹工船」は著名な作品。増山実著の「波の上のキネマ」においても戦前の西表炭鉱での島抜けできない過酷な労働環境の実態が描かれている(※映画愛に溢れた小説。映画好きの方は是非ご一読を)。 唯一絶対の解はないかもしれないが、ただ私たちは傍観者でいることはできない。よその国の話だと目を背けることなく、間接的な「加害者」であることを忘れない。フェアートレード認証の商品を購入にしたりと、少しでも個人でできることからはじめていく。そう思い行動に移すだけでも、この映画のメッセージの価値はある。
独り立ち
カンボジアの貧しい田舎で家族と暮らす14歳の少年が家を出て揉まれる話。 学校にも行けず親の言いなりで働かされ続けていることに不満を抱き、知人の紹介でタイに密入国をして働こうと決意して巻き起こっていくストーリー。 家族の関係が深くは描かれてはいないけれど、自身のことだけを考えたら、自活した方が確かに生活は良くなりそうだし、昔の日本もそうだけど、未だに長男は偉いという風潮があるのも決意した一因かも。 裏の世界は勿論、世間という程のものも知らない14歳が漁船に売られて奴隷労働させられて、働かないヤツや逃げ出そうとしたヤツは見せしめの様にあっさり始末されという状況を目の当たりにしていく。 抜け出す索を探すのか、這い上がるのか諦めるのかがなかなか見えてこず、嫌~な空気が漂う中でみせる主人公の目つきが期待を膨らませるし、そこからの主人公の行動はしっくりくるし、最後の選択も力強くて自分の好みだった。
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