劇場公開日 2020年12月18日

「ねえねえ忘れないで。私はここにいるよ。」私をくいとめて 野川新栄さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ねえねえ忘れないで。私はここにいるよ。

2021年1月4日
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鑑賞方法:映画館

笑える

楽しい

萌える

関東地区のテレビでは観ることができなくなったのんちゃんだけど映画館に行けば彼女が観れる
ぜひ劇場に足を運び『私をくいとめて』を観てのんちゃんを味わってほしい

2021年映画館鑑賞3作品目
1月4日チネ・ラヴィータ
原作既読
自分は綿谷りさファン
だいたいこんな感じの小説である
冒頭にある河童橋での天ぷらのサンプル作りもしっかりと再現している

村上春樹同様に美味しそうな情報が多い
女子力が高いだけあって村上春樹より華やかだ

彼氏いない歴が長い32歳の独身女性が主人公
脳内の自分でありアドバイザー的存在「A」と会話をする特技がある
彼女を演じたのがのんちゃん27歳
30代前半の同じ年くらい女優さんはたくさんいただろうが少し若い彼女が演じている
浜辺美波のように20歳で15歳の役を演じることを思えばどうってことがない
これが助っ人外国人選手だとネットの野球オタクは27歳だと「まだ若い。期待できる」と評価し32歳だと「ロートル。期待できない」となってしまう
それはともかく主人公黒田みつ子というキャラにのんちゃんを抜擢したのは大正解

原作では「A」との会話は一人のときだけなのだが映画は周りに人がいてもやっているのでそれでは普通に変な人だ
でも映像化するときには必要な改変かもしれない

のんちゃんのほか多田くんには林遣都でノゾミさん役には臼田あさ美と理想的なキャスティング
カーター役は自分が知らない若手俳優でどうやら映画初出演のようだ
悪くはないが強いてあげるなら他の3人と同様に実績がある人を起用してほしかった

原作にいたかどうか記憶になくオリジナルキャラかもしれないがキャリアウーマンの上司澤田役に片桐はいり
役作りがお見事だった
さすがベテラン
小指と薬指に指輪をはめ牛の鼻輪のようなイヤリングが仕事がバリバリできる優秀な女を演出している

なによりも嬉しかったのはローマに住む旧友役に橋本愛を抜擢したこと
『あまちゃん』の頃からの能年玲奈ファンにはたまらない粋な計らい
能年玲奈橋本愛のツーショットを観ていたら聖地巡礼するオタクが感じるであろう萌えと同じような感情になる
原作ではベリーショートだが映画の彼女は真っ逆さまに落ちて中森明菜のような髪型だ
ベリーショートなんてなんらかの理由で坊主頭になった女が元に戻す段階の初期の形だ
男なら卒業間近の高三元球児のような髪型
ベリーショートの橋本愛なんて見たくない

温泉旅行の帰りに電車の車内で女子中学生にセクハラするグルメリポーター藤堂に黒田が注意したくてもできなかったのは原作
それが映画では温泉地のイベントとして開催された若手お笑い芸人ライブに場所を移し女芸人吉住が男性ファン数人に抱きつかれるかたちに改変されている
この変更はむしろ良かったと思うが吉住は全くつまらなかった
事務所の先輩アンジャッシュのコントが本当の芸であり新作が観れないのは残念である

原作もそうだがイタリアに行く際に飛行機が苦手とはいえパニックになるエピソードはカットしてもいい気がする
映画はなぜかドラえもんの『コエカタマリン』のようにメルヘンチックになったが原作は詳細で妙にリアル
綿谷りさの実体験だろうか
揺れにビクビクして慌てる綿谷りさを想像するだけで笑ってしまう
村上春樹なら飛行機なんて慣れたものでビートルズの『ノルウェイの森』を聴いていたら悲しくなりCAに声をかけられる程度だろうに

ダブルデートは原作では東京ディズニーランドだが新型コロナの影響なのか東京タワーの階段を歩くという物好きなイベントになってしまった
ノゾミは男につくすタイプでカーターはナルシスト
B'zの稲葉さんはある曲で愛する役と愛される役は決まっていると言っているがまあそういうことだろう

黒田みつ子と多田くんは付き合い始めるが主人公は超奥手
のんちゃん自身もキスシーンNG女優
抱き合うシーンはあるがそれ以上はなく手を握りあうだけというプラトニックラブ
これから心中でもするのかというシチュエーション
がきデカの阿部先生と同じように黒田みつ子も能年玲奈もハードルが高い
二人は彼女ほどエキセントリックではないが
とはいえアラサーでも付き合い始めは照れもあってこんなものだろう
積極的に脱ぎ出してさっさとベッドに大の字になって膝を立てるのもプロみたいで興醒めだし

Aの声は中村倫也で姿は前野朋哉
お相撲さんのような胸はたしかにナイスキャスティング

僕もAのような存在が欲しい
自分が書く映画comのレビューを評価し削除されないように注意してくれる有難い相棒がいれば二度手間を避けることができるのに

野川新栄