「原作よりも恋愛模様を膨らませているが「のん」の好演によりヒロインの心情がよく理解できて或る意味で原作超え。但しやや長いのが玉に瑕で、もう少し刈り込んで短くしたら日本製ラヴコメの傑作になっただろう。」私をくいとめて もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
原作よりも恋愛模様を膨らませているが「のん」の好演によりヒロインの心情がよく理解できて或る意味で原作超え。但しやや長いのが玉に瑕で、もう少し刈り込んで短くしたら日本製ラヴコメの傑作になっただろう。
(原作既読)①個人的に苦しかった時に『あまちゃん』には大分元気をもらったので冷静な評価が出来ていないかもしれないけれど。でも、みつ子(「のん」元能年玲奈)と皐月(橋本愛)が再会するシーンや絵を描きながら対話するシーンは胸が熱くなって涙が出た。②『あまちゃん』を見ていた時から「のん」は日本のシャーリー・マクレーンになれる女優だと思っている。『海月姫』では上手く使われていたとは言えなかったが、今作では期待に違わぬ好演で、《お一人様》女の強がりと弱味と少しばかりの客観性と克己性(それが”A“として出てくる)とを巧まずに表現していて、ホテルの廊下での「私をくいとめて!」の台詞は原作以上に心に響いた。その点では原作超えしていると思う。③原作より恋愛部分を膨らませた為か、原作でのカフェでの”グッチブラウス女“とその女友達の会話のシーンは大分短くなっているが可笑しさは充分伝わってきた。原作では抱腹絶倒のイタリア行き機上シーンもかなり短くなっているが、このくらいがくどくなくて良かっただろう。『君は天然色』の使い方も宜しい。④概して、演出はスムーズで手堅い。画面の隅々まで細かく気が配られている。⑤カーターはイメージとしては若い頃の阿部寛が現在の惚けた感じで演じれば面白いかな、と思っていた。この映画での若林拓也は私の基準から言えばとてもイケメンとは言えないが独特の存在感で如何にも自己チュー且つ独善的な雰囲気は出ている。⑥『あまちゃん』で”まめぶ“のあんべちゃんで「のん」と競演した片桐はいりがここでは仕事のできるキャリアウーマン。少しも違和感を感じさせないのはこの女優の懐の広さだろう。⑦大人しそうで押すところは押してくる多田くんを林遣都はその嫌みのない個性で好演している。妻夫木聡の次の世代で普通の青年(あくまで映画の世界での、なので普通でもイケメンでなくてはならない)役がはまるのは彼だろう。⑧大変楽しませてもらったが少し長過ぎる。後半の終わりの方は、もっと観ていたいという思いよりもう終わるだろうなと焦れてきたので、☆だけ減点。⑨とは言え、前から買おうと思いつつ買っていなかった大瀧詠一の「LONG VACATION」を帰り道でTOWER RECORDで衝動買いしてしまった。