「嘘じゃない。」私をくいとめて とぽとぽさんの映画レビュー(感想・評価)
嘘じゃない。
AはAnswerのA --- 現代人にささる。最初の方はなんのことだか分からない・見えないことが多すぎるのとクセが強すぎて、置いてきぼりをくらいそうになっていた。けど結果それすらも最初から意図的な掴みだったと感じさせる力強いストーリーテリング。主人公の内世界を表象するように高カロリーなプレゼン方法には好き嫌いこそあれど、ここに嘘偽りはないと思わせてくれる。戸惑うし順応するのに時間がかかるけどそれが自分。現代社会の生きにくさ、とりわけハラスメントなど女性性におけるそれ。
おひとりさま --- なんなんだろう、あの人間じゃない生き物みたいなかわいさ。だから、そんなのんがこんな現代人っぽい拗らせて色々と抱え悩む役という点で、正直違和感を覚えないでもなかった。けどそんなものは見ていく内に掻き消されていく。いや、むしろそれすらも武器・魅力にしちゃうみたい。僕自身がそうだから身につまされるように感情移入してしまったが、一見"陽"でもあれこれと考え込んでしまう一喜一憂を体現する。只者じゃないし表現に愛されている。
『勝手にふるえてろ』の大九監督(×錦矢りさ原作)が手掛けた監督ワールド全開炸裂な精神的姉妹分のような作品で、『この世界の片隅に』に続くのん主演の傑作(を運命づけられた本作)。…というテアトル系列メインだった気がする両作品あったことを思うと納得させられるヒューマントラストシネマ渋谷の登場。なんだこの勢いと異物感、引き込まれてしまう。キャッチーじゃないけどパワフル。のんは天然色、のんをくいとめて……!こんな作品がもっとあっていい、けど恐らく他に続くことはできないだろうな。そんな唯一無二さとリアルすぎてたまに目を背けたくなるような個性。よろしく頼みます。