「職人気質なのんと起伏の激しさの先にある未来、火傷注意のおひとりさまロマンス」私をくいとめて かわちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
職人気質なのんと起伏の激しさの先にある未来、火傷注意のおひとりさまロマンス
のんは確かに「職人」。『勝手にふるえてろ』から3年経ち、再び同じ綿矢りさ原作を手掛けたが、やはり、文学的で複雑に展開する感じに飲まれてしまう。
この作品の主役はもちろん光子だが、主観で客観を語る。それは、Aが存在するから。大きな肝だが、観ていてうるさくは感じない。むしろ、軽快なやりとりに心地よさを覚える。しかし、光子がおひとりさまを好むきっかけに触れる闇に突入すると、作品の温度はガラッと変わる。コメディのような掛け合いがまるでなくなり、大九監督の作品にある、恐怖を突きつけられる。多田さんの存在すらもネガにしてしまい、救いがなくなるような息苦しさ。外側から映し出すことで、社会に潜むフェミニズムの悪と、心の闇を浮かばせる。その先にある「小さな幸せ」をユーモラスに描くので、救いは感じる。ただ、複雑で文学的。少々怖い。それでも、人と接することは努力が必要なことを突きつけられる。わかりみが深いが、傷をえぐるような猟奇ぶりの一面も伺える。
キャラが一段と立っているので、濃密な人間ドラマとコメディ気質なやり取りが軽快。おひとりさまこそ、火傷に注意。
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