「猫の女神 ビュバスティスに幸あれ!」夏への扉 キミのいる未来へ pipiさんの映画レビュー(感想・評価)
猫の女神 ビュバスティスに幸あれ!
イオンシネマワンデーフリーパスポートにて、本日のコースは
前菜・・・ウサギ農園のサラダ
スープ・・美魔女のエキス
魚料理・・時を駆ける俎上のコイ
肉料理・・伝説の筋肉(猫舌仕様)
デザート・大和魂のフラッペ
肉料理に期待していたが、予想に反して本日1番美味しかったのは魚料理だった♪
物語は、現代史のおさらいから始まる。本作の主人公 高倉宗一郎が生まれた1968年の時事問題、3億円事件犯人逮捕から。
そう!ここで気付く人は気付く。
この映画は我々の暮らす世界の話ではなく、また、R.A.ハインラインの名作「夏への扉」の世界でもない、
「多元宇宙(パラレルワールド)」の物語なのだと・・・!(逮捕されていない迷宮入り事件だからね、実際は)
もう、こういう仕掛け、最高に好物だ!「逮捕」という、コンマ3秒にも満たない尺の台詞ひとつで、これだけの情報を観客に伝えてしまうのだから。
こんな先制を貰ってしまっては、原作ファンとしても、この後どれだけ改変されていようが「なんでも、どーんとこーい!」って気持ちになるというものだ。
SFファンにとって「仮想(バーチャル)」と「多元宇宙」はまったく別物。「仮想」が「空想、想像、夢想」の「実在しないもの」であるのに対し、「多元宇宙」は「我々と同じ時空間ではない」というだけで、確実に存在する現実」なのだ。
だから、どーんな「なんでもあり」でもリアリズムを失わないまま好意的に許容出来る。
「原作付き作品」にとっては最高の仕掛けだ。
なるほど、パラレルの世界観がマッチする時空間モノSFは原作改変しやすい題材なのだな、とコロンブスの卵であった。
((注)パラレルだからと言って「荒唐無稽なんでもOKというわけではありません。
パラレルワールド・平行世界・多元宇宙とは「お隣の世界」は私達の時空間とほとんど変わらないのです。着ている服の色の濃淡が少し違う程度です。
しかし、そのお隣、またそのお隣、またまたそのお隣・・・と距離が離れていくうちに、凄まじく遠くなるとかなり違う世界になる。
地球の地理で言えば、アジア民族は国境違ってもモンゴロイドで似てるけど、土地を遠くへ行けば行くほど、人種的違いは大きく離れていく、みたいな感じです。
だから、世界観がパラレルワールドならば、空想よりもリアリズムが強いのです。)
その後「おさらい」ではなく「この世界での昭和&平成史」を学んでから本編がスタートする。
336頁の長編小説を破綻させず2時間に収めた仕掛けは原作には無い2名の登場人物。
1人目は、浜野謙太演じる坪井強太。
彼を設定した事で、主人公が未来にて自由に動けるようになる為のエピソード全てをスムーズに省いてしまう事に成功している。130頁分くらい?
地味な役どころだけれど、脚本に与えたkoka(効果)は凄まじい!
手にしたkoka(←この略称でわかる人はお友達w)も嬉しい。息子の小学生時代には買い与えていた。
2人目は、護民官ピート(藤木直人)。
原作では、冒頭の現代で宗ちゃんが作っていた「万能(フレキシブル)フランク」の改良型である「勤勉ビーバー17A型」というヒューマノイドに過ぎないのだが、そこに「プログラム外の反応を生じる欠陥品」として感情や自由意志を持たせてキャラ立てしている。(火の鳥・復活編のロビタやチヒロを思い出させますね♪)
ピートのおかげで、宗ちゃんは未来の常識をいち早く獲得出来る。
またミッション敢行時には、ピンチや障害の数々を乗り越える頼もしい相棒だ。
(藤木さん、一度もまばたきしなかったと思う。北島マヤか!役者魂、お見事。「面倒くせぇ」とか呟くのも笑ったw)
小さな原作改変箇所は、これまた2箇所。
「ヒロイン」の年齢設定。
原作は11歳だから、そのまんまではロリータものにw(ってのは冗談。原作の現代パートでは「家族愛&強固な信頼」のみですから。ダン(原作主人公)は断じてロリコンではありませんw)
甘酸っぱい青春ロマンス映画に仕立てるには、清原果耶ちゃんくらいのお年頃でないとね。
「プラズマ蓄電池」
黒幕の正体を推理する為の重要アイテムだが、原作では「製図機ダン」というキーボード&音声入力可能な3DCADのようなもの。プラズマ蓄電池に変更した事により、ピートに埋め込む事も可能となり、佐藤(原田泰造)の説得もスムーズに。(宗ちゃんはトニー・スタークか!)
これがなかったら、佐藤を納得させる為に、これまた長〜いストーリーが必要になって間延びするものね。さすがに製図機は未来から持って来られないし1995年に3DCAD見せても衝撃与える程じゃないしね。1957年の発想だから凄かったわけでw
改変して正解だと思います。
展開もキビキビしていて心地よい。
冒頭の忌々しい2人組も、比較的序盤のうちに破滅してしまうので、復讐心を引きずらずに済む。(原作では肥え太った白井に会うのは後半以降)
主人公&観客は「バック・トゥ・ザ・フューチャー」同様に「望まぬ未来」を防ぎ「正しい歴史を紡ぐ」ミッションにのみ専念すればいいのだ。
璃子とピート(猫の)を守るために!
BTTFを彷彿とさせるのは当然の事。
なぜならば、バック・トゥ・ザ・フューチャーが生まれる「大元」となったモチーフ作品こそが、この「夏への扉」なのだから・・・。
(まぁ、遠井教授は完全にドク 入ってましたねw
他にもデロリアンを思わせるシーン、ぽろぽろ入ってます。この辺は、三木監督や小川プロデューサーの、BTTFへのリスペクト&オマージュネタですから笑って楽しむべし。
猫のピートが、ハヤカワ表紙の猫そっくりなのも胸熱ポイントだなぁ。後ろ姿だからイメージだけど)
お好みの合う、合わないはあると思いますが「タイムトラベルSF映画」という前提で、ご鑑賞下さい。
(星はSFマニア、原作ファンとしての評です。)
※エンドロールにて「〜図書館」という文字を必死で探してしまったw
高崎市立中央図書館だったのですね。
デッキやテラス、吹き抜けなど魅力的な良い図書館だなぁ感じました。
大変詳しく解説していただきありがとうございますm(__)m まだ 納得出来ない点もあるのですが、もう一度観て確かめたいと思います。私もSFは大好きです。手塚治虫も「火の鳥」も大好きです。
コメントありがとうございます!
原作ファンの方から見てもいい映画だったのですね!
原作通りに映画化するのではなく、原作をベースとした新たな物語として再構築している。かなり思い切った戦略だけど、話の展開や結末が知られている上ではナイスな考えですよね〜。
pipiさんのレビューを見ていると私のレビューに中身が無く恥ずかしくなってきました笑 素晴らしいレビューありがとうございます♪
pipiさん。丁寧な解説ありがとうございます。夏の扉があるんですね。
幸せを追い求めて諦めない気持ちと強い心持つことが。そう考えると何となくstoryが解りやすくなりました。
ありがとうございました。🙇😊🐾
pipiさんへ。
たしか、トモロヲ博士は「ループ」という言葉を使っていたんじゃ?
しかも1回きりの・・・と。実験室にはループするジェットコースターのような模型もあったし、このあたりは原作とは違うんじゃないでしょうか?
パームスプリングスとかコンティニューとかはループものとしてタイムトラベルの別枠なので、俺の意見はこれらの影響じゃありませんです。
コメントいただきありがとうございます。「月は無慈悲な夜の女王」が映画化されるんですね!確かに出来が心配です…が、ブライアン・シンガーなら大丈夫だと信じて待ちましょう(*´ω`)
藤木ピートさん、確かに瞬きは一度もしなかったはずです。役者魂!
失礼しました。
合体という表現が良くなかったのですね。
時間のループにはクロスする点が必ずあるはずなので、そこから時間軸が分岐したのかと…主人公が2人存在するとパラドックスが起きるので合体もしくは入れ替わりがないと2人とも別行動しちゃいます。
まぁそのクロスポイントが一瞬なのか1週間なのかはわかりませんけど…SF作品の多くはもう一人の自分を登場させちゃってますよね〜
pipiさん、コメントありがとうございます!
うん、やっぱりトニー・スタークw
ロボットでも寝なきゃだめなんですね。
だったらヴィジョンはどうやって動くんだ?などと思い、調べてみると、額にあるソーラージュエルで太陽エネルギーを蓄えるとのこと。
同じ時間帯にもう一人の自分が存在してしまうという矛盾は、結局のところパラレルワールドとして捉えるしかないのでしょうね。多分、1回転ループ(2月末から3月8日)の間に過去の自分と合体したような・・・絶妙なプロットでした。原作が素晴らしいんでしょうけど。
「子供の科学」・・・私は理系が苦手なので縁が無かった分野ですが、何年か前に、テルミンが付いてるのを買いました。大人ですけど。
原作はもちろん再開します。集中力が低下しているから時間がかかりそうです(汗)
コメントありがとうございます😊😭😭。原作にも精通されている方は違いますね。勉強になります。当方も安直に「有料パンフレット」精読はしたのですが。奥が深いのですねぇ。ありがとうございました😊😭
おはようございます。
美魔女は吉永さんでしたか!悔しいなあ・・。(凄い、負けず嫌い。)
昨日鑑賞した映画で、前半はあまり面白くなく、中盤からとても面白く感じた作品がありましたが、多くの方が逆の感想を持たれたようで。
”映画って、ホント観る人によって、感想が変わるなあ(除く、絶対的名作)”と言う、当たり前の事を再認識しました。では、又。
今日、昼から会議(涙)。けれど、企みあり・・。
今晩は。
違います、違います。以下私のレビューです。
【面白くなったのは、後半ピートと名乗る”お茶目な”ヒューマノイド(藤木直人)が、宗一郎に絡んでくる辺りから。
ー ヒューマノイドは、原作には現れないからね。優れた作品を、映画化するのであれば、独自性を出して欲しいのですよ。”原作が忠実に再現されていない!”と苦言を呈するレビューを散見するが、”じゃあ、映画観なければ良いじゃない!映画化された際の監督及び制作陣の想いを込めた改編性を楽しもうよ!”と言いたいのである、私は。ー】
私は、原作通り作る映画は、余り好きではありません。原作と映画とは似て非なるモノと思っていますので。そこに映画制作陣の想いがどのように反映されるかを楽しみにしていますから・・。
ー閑話休題ー
前菜・・・ウサギ農園のサラダ⇒"PR"
スープ・・美魔女のエキス⇒”クルエラ?”
魚料理・・時を駆ける俎上のコイ⇒“今作”
肉料理・・伝説の筋肉(猫舌仕様)⇒”ファブル”
デザート・大和魂のフラッペ⇒”ウルトラソウルじゃなかった、ヒノマルソウル”
で、正解でしょうか???
映画の作り手に、原作や過去作へのリスペクトの気持ちがあるから、その誠実さも伝わってくる気持ちの良い作品になっているのだと思います。
この素晴らしいレビューにも同じことを感じました。