「ただのキュンで終わらない、胸がぎゅっとなる作品」ライアー×ライアー みみみさんの映画レビュー(感想・評価)
ただのキュンで終わらない、胸がぎゅっとなる作品
W主演を務めている松村北斗のファンとして、この映画を見に行くことは決めていたが、最近少女漫画の原作ものからは足がどうしても遠のいていた。
「こんなにシチュエーションあるはずなくない?」
「イケメン王子様が急に言い寄ってくるあの現象はなんだ!?」
「もうこの登場人物よりも歳上なのか…」
と現実的な事ばかり頭によぎるようになってしまったからだ。宣伝ポスターなどがThe少女漫画原作もの!!といった感じのデザインだったのでメンバーも絶賛してくれていたものの作品として惹かれて見に行くというより「ファンとして見に行く」というスタンスで映画を見始めた。
しかし、実際には少女漫画原作もの特有の現実ではありえないような設定ながらも登場人物一人一人が愛おしいと感じられる、「キュンキュン」よりも胸がぎゅっとなるような映画で、思っていた以上に彼らに感情移入してしまう作品だった。「松村北斗のファンとして」ではなく「作品そのものに惹かれて」もう一度観たい。
確かに、みなに電話をかけ隣の部屋で携帯が鳴っていても全く気付いていない描写があったのに、あとで携帯を鳴らして隣の部屋からの着信音で気付くシーンがあり、「今まで気づいてなかったじゃないか!!」と軽くツッコミをいれそうになったり、他にも「気付くでしょそこは」的なシーンがなかったわけではない。
だが、それ以上に登場人物の描写とキャスト陣の演技がとても良かった。
森七菜さん演じる湊(みな)は湊の時は演技も衣装もいい意味できちんと「地味な女子大生」で、みなの時はギャルっぽく、表情のコミカルな移り変わりもとても可愛らしかった。
松村北斗くん演じる透くんは本当にまっすぐ過ぎて愛おしかった。ああこんなにまっすぐだから主題歌の一節にあるように「君以外はもう見えない状態」で、「みなしか見えない」し「湊しか見えなく」て気づかないわ女癖悪くなるわになってしまったんだなと思わせる演技だった。また、冷たい態度とみなにみせる表情のギャップが半端なく、ただのツンデレに収まらない意外性がとても良かった。彼の持つクールと犬を合わせ持つような多面性が役に丁度合っていた感じがした。
そして主演2人と同時にとても良かったのが小関くんが演じた烏丸くんだ。“日本史研究会感”と爽やか優しいいい人感のバランスがちょうどよく、とても現実味のあるキャラクターで三角関係になるのも納得といった感じであった。
また、佳境となるシーンの演技は思わずぶん殴りたくなるほどでいい意味で騙された。
漫画だから良さが出るような設定のフィクション感は、登場人物達の実際に居そうな現実味(演技やセリフ、服装や髪型などから来るのだろう)がバランスをとっていて、全員が愛らしくなる心動く作品だった。
※ポスターなどの人物切り抜いた感がもったいなく、もう少し何かなかったかなと思ってしまった。