「PAUL、JOHNとくれば次は・・・」人数の町 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
PAUL、JOHNとくれば次は・・・
斬新なアイデアによって作られた、情報操作社会の極みとも言うべきディストピアムービー。平和と自由は保障されながらもフェンスの外=現実社会に影響を及ぼしていて、セックスや運動、それに快適な睡眠を与えられることにより腑抜けにされてしまったデュードたち。「ハイ、フェロー」と言ったあとで相手を褒めさえすれば、他は何でもありだ。
世の中からはみ出してしまった者たちにとってはある意味で楽園なのだが、バスでフェンス外に出かけるときには決められた候補者の名前を書くという選挙参加や、正体不明の薬の治験を受けたり、わけもわからずSNSに“絶賛”や“disり”を投稿したり、テロやダイイン抗議のフェイクニュースに参加したりと、現実社会に大いに貢献しなければならない。あぁ、こうやって得票数を獲得したり、SNSも操作されているんだな・・・と背筋が凍り付きそうになるほどでした。
欲求不満がなければ、人間は何だって言うことを聞く。誰の投票用紙かも知らずに投票率を上げ、闇の人間による買収によって不正選挙を行っているのだ。デュードたちは戸籍をも奪われ、首に埋め込まれた何かによって外に出ると不快な雑音で制御されている。
日本の年間失踪者数は8万人以上。色んな統計人数がテロップに登場するが、こうした施設があってもおかしくないと思わせてくれる。セックスは自由だけど結婚も妊娠も禁止。そりゃ、次から次へと入居者が増えてくるから、子どもまで面倒見切れないよな・・・と、設定もかなり面白くしてありました。重篤な副作用によって死亡した人も、葬式なんてされずに消されてしまう。老人向けの別の施設も知りたくなってしまいます(セックスの自由はなさそう)。
ストーリーは雑なところもあるけど、結末も皮肉めいていて面白い。管理社会の縮図とも言える社会風刺や、これから訪れるかもしれない民主主義を語った情報操作による政治など、考えさせられるところはいっぱい。社会からはみ出さなくても、マイナンバーを使えば戸籍は抹消できるだろうし、いつの日か選挙投票券が来なくなると考えただけでもゾッとする・・・