「ファッションは、国境も人種も超える。」ライフ・イズ・カラフル! 未来をデザインする男 ピエール・カルダン 七星 亜李さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5ファッションは、国境も人種も超える。

2020年11月1日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

ココ・シャネルが女性をコルセットから解放したように、ピエール・カルダンは、白人至上主義、富裕層のためのファッションをプレタポルテとして、全ての人が楽しめるものに昇華させた。
彼の作ったスタイルは、服だけではなく、家具、インテリア、ロゴがついているタオルや全てのものが、今でも斬新でファッショナブルでかっこいいと思う。
彼の中では、ファッションは、ビジネスであり、美意識を形にするものなのだと思う。
だから、彼の服は、スタイルが良い人しか似合わないという服ではなく、痩せていても太っていても背が低くても、スタイリッシュにみせてくれる。
社会主義国家として、労働するための服でしかなかったロシア に、文化大革命で押さえつけられ、人民服以外のものを着ることが許されなかった中国に
戦後、洋装店しかなく、ファッションを楽しむことを知らなかった日本に、カルダンの服は、人種も国境も超えて、新しい生き方としてファッションを見せてくれた。
それは、60年代、70年代にいきなり、50年先の未来の世界を魅せてくれるようなワクワクした革新的なものだったと思う。

ファッションは、私たちの生き方を変える。
言い換えるなら、今、女性は、ハイヒールなんか履かないし、男性はネクタイなんか絞めなくてもいい。
逆にそんな格好をしている方が、えっ今日、なんかあるの?って言うぐらい、仕事にマストではなくなった。
彼が魅せてくれたスタイルは、東洋人であることにコンプレックスを感じなくていいということや、こんなカラフルな色を着ていいんだという、私たちを自由にしてくれるメッセージをたくさん含んでいる。

カルダンが、50年後のファッションビジネスがどうなるか予想していたわけではないと思うけど、
彼が推し進めたライセンスビジネスは、結果的にピエール・カルダンというブランドを巨大なコングロマリットに飲み込まれずに生き残る力を与えてくれた。
ロゴを付けているだけと、ある意味揶揄されることもあった、ライセンスビジネスは、
彼が生きていてもいなくなっても、変わらずに残り続ける。

七星 亜李